失業保険を受給するための条件やしくみをまとめて徹底解説

[取材/文責]長谷川よう

勤めている会社を退職すると、失業保険(失業手当)を受け取ることができます。失業保険は退職後、安心して就職活動をすることができるために支給されるものですが、退職理由などにより、失業保険を受給するための条件や受給期間などが異なります。
そこで、ここでは失業保険を受給するための条件やしくみについて、まとめて解説します。

失業保険のしくみと期間

まずは、失業保険(失業手当)の概要やしくみ、受給期間について見ていきましょう。

失業保険を受けるための条件とは

失業保険を受けるための条件には、退職理由に関わらず共通のものと退職理由によって異なるものがあります。それぞれについて見ていきましょう。

 

①退職理由に関わらず共通のもの
退職理由に関わらず、失業保険を受けるには「失業の状態にあること」が条件です。「失業の状態にあること」とは、次の3つすべてに該当する必要があります。

 

  • 現在、職についていない
  • 就職しようとする積極的な意思がある
  • いつでも就職できる能力がある

 

失業保険を受けるための条件には現在、職についていないことだけでなく、就職しようとする積極的な意思がある、いつでも就職できる能力がある必要があります。つまり、失業中であっても、再就職の意思がなかったり、ケガや病気などですぐに就職できなかったりする場合は、失業の状態にあるとはいえず、原則、失業保険を受けるための条件を満たしていません。

 

②退職理由によって異なるもの
失業保険では、失業している人を退職理由によって「一般の離職者の場合」「特定受給資格者」「特定理由離職者」の3つに分けており、失業保険を受けるための条件が異なります。それぞれについて、見ていきましょう。

 

  • 一般の離職者の場合
    自己都合で退職した人は、一般の離職者に該当します。一般の離職者が失業保険を受けるための条件は「離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること」です。
    被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間のことです。賃金支払いの基礎となった日数が11日以上もしくは時間数が80時間以上ある月を1か月と考えます。
  • 特定受給資格者
    特定受給資格者とは、企業の倒産や解雇など、会社都合で退職した人のことです。特定受給資格者の失業保険を受けるための条件は「離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上あること」です。
  • 特定理由離職者
    特定理由離職者とは、一般の離職者のうち、主に次のような理由で退職した人のことです。

    • 有期労働契約の更新を希望したが、受け入れられなかった
    • 出産や育児などの理由から受給期間の延長措置を受けた
    • 親の扶養や介護など家庭の事情が急変した
    • 家族と別居生活ができなくなった
    • 結婚に伴う住所の変更など特別な理由で通勤が困難になった
    • 企業の人員整理など、希望退職者の募集に応じた

 

特定理由離職者の失業保険(失業手当)を受けるための条件は「離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上あること」です。

自己都合と会社都合では失業保険(失業手当)の給付日数が違う

失業保険を受けるための条件を満たすと、失業保険を受け取ることができます。ただし、失業保険を何日受け取れるのかは、自己都合と会社都合で次のようにことなります。

 

・自己都合での退職の場合(一般の離職者、特定理由離職者(一部を除く))

区分 被保険者期間
10年未満 10年以上20年未満 20年以上
全年齢(65歳未満) 90日 120日 150日

 

・会社都合での退職の場合(特定受給資格者など)

区分 被保険者期間
1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上
35歳未満
90日 120日 180日 210日 240日
35歳以上
45歳未満
90日 150日 180日 240日 270日
45歳以上
60歳未満
90日 180日 240日 270日 330日
60歳以上
65歳未満
90日 150日 180日 210日 240日

 

このほか、障害者手帳が発行されている人など、一定の場合は、就職困難者として別の支給期間の規定があります。

 

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失業保険の給付額の計算方法とシミュレーション

ここまでは、失業保険(残業手当)のしくみや期間について見てきました。ここからは、いくら失業保険が受給できるのかについて見ていきましょう。

失業保険の給付額の計算方法

失業保険の受給額は、次の計算式で求めます。

 

失業手当(基本手当)日額 = 賃金日額(退職前6カ月の賃金合計(※)÷180)× 給付率

 

※退職前6カ月の賃金合計には、賞与は含みません。

 

給付率は、賃金の金額や年齢によって異なりますが、おおよそ50~80%程度になります。失業手当(基本手当)日額には、上限と下限があります。上限額は年齢ごとに、次のようになっています。

 

(令和2年8月1日現在)

年齢 失業手当(基本手当)日額の上限額
30歳未満 6,845円
30歳以上45歳未満 7,605円
45歳以上60歳未満 8,370円
60歳以上65歳未満 7,186円

 

失業手当(基本手当)日額の下限額は、全年齢で2,059円です。

実際に失業保険の受給額を計算してみよう

では、実際に失業保険(失業手当)の受給額を計算してみましょう。

 

例)30歳会社員が会社都合で退職、月給39万円で8年間勤務していた場合。給付率は50%、受給日数は180日とする。

 

  • 賃金日額=39万円×6か月÷180=13,000円
  • 失業手当(基本手当)日額 = 賃金日額13,000円× 給付率50%=6,500円
  • 失業手当総額6,500円×180日=1,170,000円

 

失業手当は、総額がまとめて振り込まれるのではなく、認定日からの認定日の間の支給対象期間日数に応じて、毎月支払われます。

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失業保険の受給までの流れと必要書類

ここからは、失業保険(失業手当)の受給までの流れと必要書類を見ていきましょう。

失業保険の受給に必要な書類

失業保険の受給に必要な書類は次のとおりです。

 

  • 雇用保険被保険者離職票-1、2
  • マイナンバーカード
    ※マイナンバーカードがない場合は、個人番号確認書類と身元(実在)確認書類が必要
    個人番号確認書類:通知カード、個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)
    身元(実在)確認書類:
    ①運転免許証、運転経歴証明書、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)などから一種類。
    ②①の書類がない場合は、公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書、年金手帳などから2種(コピー不可)
  • 写真(最近の写真、正面上半身、縦3.0cm×横2.5cm)2枚
  • 印鑑
  • 本人名義の預金通帳又はキャッシュカード(一部指定できない金融機関があり)
    ※離職票‐1の金融機関指定届に金融機関による確認印がある場合、通帳は不要

 

失業保険の手続きの流れ

失業保険の手続きの流れは、次のとおりです。

 

  • ①必要書類の準備
  • ②ハローワークで手続き
    必要書類が揃ったら、ハローワークで求職申し込みや離職票など必要書類の提出、雇用保険説明会の日時決定などの手続きを行います。この際、雇用保険受給資格者のしおりが手渡されます。
  • ③雇用保険受給者初回説明会
    指定された日時になったら、雇用保険受給資格者のしおりや筆記具、印鑑を持参し雇用保険受給者初回説明会に参加します。第一回目の「失業認定日」が知らされ「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」が手渡されます。
  • ④失業の認定
    失業認定日になったらハローワークに行き、失業の認定を受けます。失業認定日は通常4週間に一度あり、その都度ハローワークに行き、失業の認定を受けます。失業の認定には、求職活動の状況を記入した「失業認定申告書」と「雇用保険受給資格者証」の提出が必要です。
  • ⑤失業手当の受給
    失業の認定を受けたら、通常5営業日程度で失業保険が振り込まれます。ただし、自己都合による退職などでは、初回の失業手当を支給されるまでに3か月の給付制限があるため、失業手当の受給は3か月後になります。

まとめ

失業保険(失業手当)は、失業中の生活を心配しないで新しい仕事を探すために必要不可欠なものです。しかし、「一般の離職者の場合」「特定受給資格者」「特定理由離職者」で失業保険を受給するための条件が異なります。また、受給を受けるための手続きも複雑です。

 

要件や手続きをしっかり理解し、正しく失業保険(失業手当)を受給しましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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