シェアリングエコノミーと税金・確定申告の関係とは

[取材/文責]長谷川よう

社会情勢の変化や新型コロナウイルスの影響などで、今までにない働き方や収入を獲得する手段が出現しています。そのひとつに、シェアリングエコノミーがあります。シェアリングエコノミーの範囲は広く、多くの人が活用しています。
ここでは、シェアリングエコノミーの概要から税金、確定申告の関係まで詳しく解説します。

シェアリングエコノミーとは

はじめに、シェアリングエコノミーとはどのようなものかを見ていきましょう。シェアリングエコノミーとは簡単にいうと、「インターネットを通じて、個人が保有している遊休資産などを他の人が利用できるようにする仕組み」のことです。

 

たとえば、フリマアプリなどインターネット上のマッチングプラットフォームを利用した物品の売買などが、シェアリングエコノミーに該当します。シェアリングエコノミーで取引されるのは所有している物だけでなく、スキルなどの無形のモノも含まれます。

 

一般社団法人シェアリングエコノミー協会によると、シェアリングエコノミーは取り扱う資産によりスキル・空間・モノ・移動・お金の5つのタイプがあります。それぞれのタイプでは、次のような資産をシェアしています。

 

  • スキルのシェア 介護や育児、知識や技術など
  • 空間のシェア  駐車場や民泊、スペースや会議室など
  • モノのシェア  フリマやオークションでの物品の販売など
  • 移動のシェア  車やバイク、サイクルなど
  • お金のシェア  クラウドファンディングや仮想通貨など

シェアリングエコノミーと所得税

ここまでは、シェアリングエコノミーの内容とタイプについて見てきました。ここからは、シェアリングエコノミーで収入が出た場合に、所得税が課されるのかどうかについて見ていきましょう。

シェアリングエコノミーで所得税はかかる

シェアリングエコノミーと所得税の関係を見る場合には「所得税が課税されるのか非課税か」「所得税が課税されるなら、所得の種類は何になるのか」の2つの観点から見ていく必要があります。それは、所得税は所得の種類によって所得金額や税金の計算方法が異なるためです。シェアリングエコノミーの各タイプごとに、所得税との関係を見ていきましょう。

 

・スキルのシェア
介護や育児、知識や技術などのスキルのシェアでは、一般的にスキルを提供した対価として、お金などを受け取ります。対価として受け取ったお金などは、収入としてみなされるため、スキルのシェアは所得税の対象となります。

 

では、スキルのシェアは何所得になるのでしょうか。スキルのシェアは、事業所得もしくは雑所得に該当します。

 

事業所得とは、独立・継続・反復して行われる仕事から得られる所得のことをいいます。会社員ではなく独立して、ある程度の規模でスキルのシェアの提供を行っている場合は、事業所得になります。

 

雑所得とは、他のどの所得にも該当しない所得のことです。たとえば、1年に数回程度だけ家事の手伝いをするなど、規模が小さい場合は雑所得になる可能性が高いです。

 

事業所得、雑所得ともに、収入金額から必要経費を差し引いたものが、所得金額となりますが、事業所得では青色申告ができるが、雑所得では青色申告ができないなどの違いがあります。

 

・空間のシェア
空間のシェアについても、空間を提供した対価として、お金などを受け取るため、所得税の対象となります。空間のシェアでは、形態によって所得区分が異なります。一般的には、駐車場や会議室、スペースの賃貸については「不動産所得」になります。また、民泊は「雑所得」になる可能性が高いです。

 

不動産所得も雑所得も、収入金額から必要経費を差し引いたものが、所得金額となりますが、不動産所得では青色申告ができるが、雑所得では青色申告ができないなどの違いがあります。

 

空間のシェアでは、たとえば、食事の提供を伴う場合は事業所得になるケースがあるなど、提供している状況によって所得区分が異なります。所得区分が不明な場合は、税理士などの専門家に相談したほうが良いでしょう。

 

・モノのシェア
モノのシェアでは、まず、所得税の課税対象かどうかが問題となります。なぜなら、個人が生活で使用していた家具や衣服の売却については、所得税が課されないこととなっているからです。フリマやオークションでの出品は、これら生活に通常必要な動産の売却が多いため、所得税が非課税のケースも少なくありません。

 

もちろん、個人が販売目的で物を仕入れて、それを売却した場合は、所得税が課されます。所得税が課される場合は、独立・継続・反復して行われているかどうかで、事業所得もしくは雑所得で処理します。

 

・移動のシェア
車やバイク、サイクルなどのシェアも原則、所得税が課されます。移動のシェアについても、独立・継続・反復して行われているかどうかで、事業所得もしくは雑所得で処理します。

 

・お金のシェア
お金のシェアについては、取り扱っているものや形態で所得が異なります。たとえば、仮想通貨の場合は一般的に雑所得となります。

 

クラウドファンディングの場合は、購入型なら事業所得または雑所得、寄付型なら資金提供者が個人の場合は贈与税の対象となるなど、クラウドファンディングのタイプによって、税金のしくみが異なるので、注意が必要です。所得区分が不明な場合は、税理士などの専門家に相談したほうが良いでしょう。

シェアリングエコノミーは確定申告が必要

シェアリングエコノミーで、所得税の課税対象となる場合には原則、確定申告が必要です。ただし、以下のケースでは確定申告は不要です。

 

  • 会社員で、給与所得、退職所得を除いた所得が20万円以下の場合
  • 納める所得税の金額がない場合

 

シェアリングエコノミーを副業として行っている会社員も多いです。その場合、会社の給料以外の副業の所得金額(もうけ)が20万円以下の場合は、確定申告をする必要がありません。また、経費がかかりすぎてシェアリングエコノミーが赤字になっている場合など、そもそも納める所得税の金額がない場合も、確定申告は不要です。

シェアリングエコノミーでは消費税にも注意する

シェアリングエコノミーで注意すべき税金には、所得税以外に消費税もあります。ここでは、シェアリングエコノミーの消費税について見ていきましょう。

そもそも消費税が課税される条件とは

そもそも、消費税は原則、事業者に課されます。そのため、事業を行っていない場合には、消費税は課されません。また、事業者であっても基準期間(前々年)における課税売上高が1,000万円以下の場合は、消費税の課税を免除されます。

 

ただし、基準期間(前々年)における課税売上高が1,000万円以下の場合であっても、前年の1月~6月の課税売上高もしくは給与等支払額の合計額が1,000万円を超えている場合は、消費税が課されるので注意が必要です。

タイプ別シェアリングエコノミーの課税判定

消費税の課税事業者の場合は、シェアリングエコノミーによる収入が消費税が課税されるものかどうかを判断する必要があります。各タイプのシェアリングエコノミーの消費税の課税判定は、次のようになります。

 

・スキルのシェア 
スキルのシェアでは、シェアリングエコノミーが事業かどうかが、消費税の課税判定の基準となります。スキルのシェアが独立・継続・反復して行われている事業であれば、消費税の課税対象になります。事業でない場合は、消費税は課されません。

 

・空間のシェア
空間のシェアもスキルのシェアと同様に、シェアリングエコノミーが事業かどうかが、消費税の課税判定の基準となります。空間のシェアが事業であれば、消費税の課税対象になります。事業でない場合は、消費税は課されません。

 

ただし、土地の貸付とみなされるものや、住宅用としての建物の貸付とみなされるものは、消費税は非課税になります。

 

・モノのシェア
モノのシェアのうち、生活に通常必要な動産の売却は非課税です。一方、モノのシェアが事業であれば、消費税の課税対象になります。

 

・移動のシェア
移動のシェアもそれが事業であれば、消費税の課税対象になります。事業でない場合は、消費税は課されません。

 

・お金のシェア
お金のシェアは、その形態によって消費税の課税関係が異なります。仮想通貨の場合は、原則、消費税は課されません。

 

クラウドファンディングの場合は、状況によって、課税関係が異なりますが、おおむね、お金のシェアが事業の場合は消費税の課税対象に、事業でない場合は消費税は課されないことになります。

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まとめ

シェアリングエコノミーは、「インターネットを通じて、個人が保有している遊休資産などを他の人が利用可能とする仕組み」です。ひとことでシェアリングエコノミーといっても、取り扱うものや事業形態により、所得税や消費税の課税関係が異なります。

 

新型コロナウイルスの影響などにより、家にいる時間が増える中、今後シェアリングエコノミーをする人はさらに増加すると考えられます。シェアリングエコノミーの課税関係をしっかりと理解することが、ますます重要となってくるでしょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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