看護師の退職手続きには何が必要?年金・健康保険・失業保険について解説

[取材/文責]長谷川よう

看護師として、今の仕事を退職したり、次の仕事を探したりする際に、退職するための手続きが気になる人も多いでしょう。看護師が退職するにあたり、退職する前にしておくこと、退職後にしておくことがあります。
そこで、この記事では看護師の退職で必要な年金・健康保険・失業保険などの手続きについて解説します。

看護師の退職前にしておくこと

看護師の退職では、退職後だけでなく、退職前からしておかなければならない事も多くあります。退職前の手続きでは、退職届の提出はもちろんのこと、次の手続きもしておく必要があります。

貸与品など返却すべきものを返却する

退職前にしなければならないことのひとつが、貸与品の返却です。看護師として仕事をする職場の制服や筆記用具などの貸与品を返却します。また、職場から与えられた名札や名刺、職員証、それらを入れるケースなども返却をします。基本的には、退職日に返却することになりますが、事前に返却準備が必要なものがあればあらかじめ準備をしておきます。

 

貸与品とは異なりますが、必ず返却しないといけないものが健康保険証です。看護師は勤務先の健康保険組合(または協会けんぽなど)に加入しているため、一般的に、退職前と退職後で加入する健康保険が異なります。そのため、健康保険証は忘れずに返却します。

 

ただし、一定期間、前の職場の社会保険に加入できる健康保険の任意継続制度を利用することも可能です。この場合、健康保険証の番号が必要となるので、返却前に健康保険証のコピーなどをとっておく必要があります。

退職後に必要な書類などの受け取り

退職前に必要な手続きは、貸与品の返却だけではありません。退職後の年金や健康保険、失業保険の手続きなどで必要な書類を勤務先から受け取っておく必要があります。退職前に受け取りが必要な書類は、次のとおりです。

 

  • 雇用保険被保険者証
  • 離職票
  • 年金手帳(会社に預けている場合)
  • 源泉徴収票
  • 退職証明書

 

このうち、雇用保険被保険者証や離職票は失業保険などの手続きで、年金手帳は年金の手続きで、源泉徴収票は確定申告などの手続きで必要となります。退職証明書は退職したことを証明する書類で、絶対に必要な書類ではありませんが、新しい就職先で提出を求められることもあります。

看護師の退職後に行う年金・健康保険の手続き

看護師の退職後に行う主な手続きには、年金・健康保険の手続きと失業保険の手続きがあります。ここでは、年金・健康保険の手続きから見ていきましょう。

退職後には年金の切り替えが必要

退職後、再就職までの間に少しでも空く期間がある場合は、厚生年金から国民年金への切り替えが必要となります。公的年金の加入者は、次の3つの分類があります。

 

  • 第1号被保険者:自営業者や無職の方などが加入する国民年金のみの被保険者
  • 第2号被保険者:会社員などが加入する厚生年金や共済年金の被保険者
  • 第3号被保険者:年収130万円未満で、第2号被保険者(配偶者や両親)に扶養されている人

 

退職後は通常、第2号被保険者から第1号被保険者に切り替えを行います。会社員である配偶者などの扶養に入る場合には、第3号被保険者に切り替えます。第1号被保険者になる場合には、退職の日から14日以内に国民年金の加入手続き行う必要があります。

 

年金の切り替えの手続きは、住所地の市区役所または町村役場で行います。手続きには「年金手帳」「印鑑」「身分証明証」が必要です。必要書類は自治体で異なることもありますので、事前に自治体窓口にお問い合わせください。

 

第3号被保険者に切り替える場合は、配偶者などの会社を経由して「被扶養者(異動)届」を日本年金機構へ提出する必要があります。そのため、配偶者などの会社の担当者に切り替える旨を伝え、会社の指示にしたがって手続きを進めます。

退職後の健康保険の手続き方法

退職後、再就職までの間に少しでも時間がある場合には、健康保険を国民健康保険に切り替える必要があります。退職後の健康保険の加入方法には、次の3つがあります。

 

  • 国民健康保険への加入
  • 今までの会社の保険への任意継続
  • 会社員の配偶者などの扶養に入る

 

国民健康保険への加入は、国民年金の加入と同じく退職の日から14日以内に手続きを行う必要があります。国民健康保険の切り替えの手続きは、住所地の市区役所または町村役場で行います。

 

年金の切り替えの手続きには「健康保険の資格喪失が分かる書類」「印鑑」「身分証明証」が必要です。健康保険の資格喪失が分かる書類には、年金事務所で受け取れる健康保険資格喪失証明書や退職証明書、離職票などが該当します。必要書類は、自治体で異なることもあります。事前に住所地の自治体窓口にお問い合わせください。

 

任意継続や配偶者などの扶養に入る場合の手続きや必要書類は、その会社が加入している保険組合によって異なります。事前に各保険組合にお問い合わせください。

看護師の退職後の失業保険の手続き方法

ここからは、看護師の退職後の失業保険の手続き方法について見ていきましょう。

失業保険の手続きに必要な書類

年金や健康保険に比べて、失業保険の手続きは少し複雑です。また、必要書類も多くなります。失業保険の手続きに必要な書類は、次のとおりです。

 

  • 雇用保険被保険者離職票-1、2
  • マイナンバーカード
    マイナンバーカードがない場合は、個人番号確認書類と身元(実在)確認書類が必要です。
    個人番号確認書類:通知カード、個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)
    身元(実在)確認書類:

    • ①運転免許証、運転経歴証明書、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)などからⅠ種
    • ②①の書類がない場合は、公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書、年金手帳などから2種(コピー不可)
  • 写真(最近の写真、正面上半身、縦3.0cm×横2.5cm)2枚
  • 印鑑
  • 本人名義の預金通帳又はキャッシュカード(一部指定できない金融機関があり)
  • 離職票‐1の金融機関指定届に金融機関による確認印がある場合、通帳は不要

退職後の失業保険の手続きの流れ

失業保険の手続きの流れは、次のとおりです。

 

  • (1) 必要書類の準備
    上述した必要書類を準備します。
  • (2) ハローワークで手続き
    必要書類がそろったら、まずはハローワークで最初の手続きを行います。具体的には、求職申し込みや離職票など必要書類の提出、雇用保険説明会の日時決定などの手続きです。この際、次の手続きで必要な雇用保険受給資格者のしおりを受け取ります。
  • (3) 雇用保険受給者初回説明会
    次に、指定日時に雇用保険受給者初回説明会に参加します。その際には、雇用保険受給資格者のしおりや筆記用具、印鑑が必要です。
    雇用保険受給者初回説明会に出席したら、第一回目の「失業認定日」が知らされ「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」が手渡されます。
  • (4) 失業の認定
    失業の認定を受けるため、失業認定日にハローワークに行きます。第一回目の「失業認定日」以降の失業認定日は通常4週間に一度あり、各失業認定日にはハローワークに行き、失業の認定を受ける必要があります。
    失業の認定には、求職活動の状況を記入した「失業認定申告書」と「雇用保険受給資格者証」の提出が必要です。
  • (5) 失業手当の受給
    失業の認定を受けたら、通常5営業日程度で失業保険(失業手当)が振り込まれます。
    自己都合による退職では、初回の失業手当を支給されるまでに3か月の給付制限があるため、失業手当の受給は3か月後になります。

まとめ

看護師の退職では、退職前、退職後に多くの手続きを行う必要があります。特に、年金や健康保険、失業保険の手続きを失念してしまうと、普段の生活に支障をきたしてしまう可能性が高くなります。

 

看護師で退職をする方は、忘れずに年金や健康保険、失業保険の手続きを行いましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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