テレワークのために従業員に事務用品を支給これは給与として課税が必要?

[取材/文責]マネーイズム編集部

新型コロナの感染拡大が収まらず、東京都に4度目の緊急事態宣言が出されました(7月12日~8月22日)。人流や密状態の抑制が目的で、企業には、テレワーク(リモートワーク)の推進があらためて強く呼びかけられています。ところで、実際にテレワークを行う場合には、従業員が自宅で仕事をするために、業務用の机やパソコンなどを会社が用意することもあるはずです。その費用は、給与として課税する必要があるのでしょうか? 通信費や電気料金を支給したら? 国税庁の見解を踏まえて解説します。

強まるテレワークの「圧力」

2021年6月16日に、東京商工会議所が発表した「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査」結果(調査対象は東京23区の中小企業、回答662社)では、5月の緊急事態宣言下の実施率は、38.4%にとどまりました。ちなみに、政府目標は、全体で70%です。

 

一方、こんな気になるニュースもありました。感染者数全国最多の東京都で、入院患者数、重症者数とも、ワクチン接種の進んだ高齢者に代わり、50代が最も多くなっているのです。働き盛りで外出(出社)の多いことなどが原因と考えられているのですが、今回の宣言に当たって東京都は、「飲食店対策」「ワクチン接種の強化」と並んで、「“50代問題”への重点的な対応」を対策の3本柱に掲げました。具体的には、テレワークの徹底などを企業に求めていく、ということです。

給与課税のポイントは「所有権」

とはいえ、新たにテレワークを始めるためには、従業員の自宅に事務用品などの整備が必要になることがあります。それらを会社が用意した場合の課税関係はどうなるのか、国税庁は次のような見解を示しています。

パソコンなどを支給した場合の課税ルール

  • 在宅勤務に必要な事務用品等(パソコンなど)を従業員に「貸与」する場合には、給与として課税する必要はありません。
  • 他方、それらを「支給」した場合(所有権が従業員に移転する場合)には、給与として課税する必要があります。

 

上記については、例えば、企業が従業員にもっぱら業務に使用する目的で事務用品等を「支給」という形で配付し、その配付を受けた事務用品等を従業員が自由に処分できず、業務に使用しなくなったときは返却を要する場合も、「貸与」とみて差し支えありません。

 

つまり、「貸与」(給与課税なし)か「支給」(給与課税あり)かで、税の扱いが変わるというわけです。

 

なお、以上の課税ルールは、会社が環境整備に関する物品等(従業員の自宅に設置する間仕切り、カーテン、椅子、机、空気清浄機など)を支給する場合についても当てはまります。

「清算」した場合の課税ルール

実際には、事務用品などの現物を貸したり支給したりするのではなく、会社による仮払いや、従業員の立替え払いで購入したのち「清算」するという方法が取られることもあるでしょう。その場合も、今説明したルールが適用されることになります。

 

すなわち、購入した物品を「貸与」する場合には、給与として課税する必要はなく、「支給」(所有権が従業員に移転する)ならば、課税となるわけです。

通信費、電気料金の支給は?

自宅で勤務する場合、従業員が仕事で使った通信費や電気代を支給することもあります。ただ、それらは生活と混然一体となっているために、「仕事のためにいくら支出したのか」を計算するのは、容易ではありません。これらについて国税庁は、次のようなルールを設けています。

電話料金

  • 通話料(下記の基本使用料を除く)については、通話明細書などにより業務のための通話に関わる料金を確認し、その金額を企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税する必要はありません。
  • 基本使用料などについては、業務のために使用した部分を合理的に計算する必要があります。「合理的に計算」とは、例えば次の【算式1】による算出を言います。その金額を企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えありません。

 

【算式1】

従業員が負担した1ヵ月の料金×その従業員の1ヵ月の在宅勤務日数/該当月の日数×1/2

 

なお、上記算式の「1/2」については、1日のうち、睡眠時間を除いた時間のすべてにおいて均等に基本使用料や通信料が生じていると仮定し、次のとおり算出されています。

 

  • ①1日:24時間
  • ②平均睡眠時間:8時間
  • ③法定労働時間:8時間

 

として、1日のうち「睡眠時間を除いた時間に占める労働時間の割合」は

③÷(①-②)=8時間/(24時間-8時間)=1/2

となります。

インターネット接続の通信料

基本使用料やデータ通信料などについては、電話料金の基本使用料同様、上記の【算式1】により算出したものを企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えありません。

 

ただし、従業員本人が所有するスマートフォンの本体の購入代金や業務のために使用したと認められないオプション代など(本体の補償料や音楽・動画などのサブスクリプションの利用料など)を企業が負担した場合には、その負担した金額は従業員に対する給与として課税する必要があります。

電気料金

電気料金に関しては、やはり業務のために使用した部分を合理的に計算する必要があります。例えば、次の【算式2】により算出したものを従業員に支給した場合には、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えない、とされています。

 

【算式2】

業務のために使用した部屋の床面積/自宅の床面積×その従業員の1ヵ月の在宅勤務日数/該当月の日数×1/2

 

「1/2」については、【算式1】と同様です。

まとめ

テレワークに伴う事務用品などを従業員向けに用意する場合には、「貸与」か「支給」かで、課税関係が変わる点に注意しましょう。通信費や電気料金については、業務のために使用した部分を「合理的に計算する」ことが求められます。

▼参照サイト

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