スマホ決済各社の手数料競争が激化!スマホ決済の流れや会計処理も解説

[取材/文責]長谷川よう

現金に代わる決済方法として、スマホ決済の普及が進んでいます。そのため、スマホ決済のシステムを導入する会社やお店も増えています。スマホ決済の導入で問題になるのが手数料です。実は、スマホ決済各社で手数料競争が激化しています。
ここでは、スマホ決済の手数料競争からスマホ決済の流れ、会計処理まで解説します。

スマホ決済の手数料競争の現状とは

今、スマホ決済各社では、手数料競争が激化しています。それは、スマホ決済の手数料をめぐり、スマホ決済各社が急にさまざまな動きを見せ始めたためです。

 

そこでここでは、スマホ決済の手数料をめぐる各社の動きやスマホ決済を取り巻く現状について見ていきましょう。

スマホ決済の手数料をめぐる各社の動き

会社やお店がスマホ決済を導入した場合、スマホ決済会社のシステムを使って決済を行うことになります。そのため、決済するごとにスマホ決済会社に対して手数料が発生します。

 

ただし、今までは、加盟店を増やすことを目的に、スマホ決済の手数料を無料にしているスマホ決済業者も多くいました。そのため、加盟店は手数料を気にせずに、スマホ決済のシステムを利用できました。

 

しかし、ここにきて手数料無料を見直す動きが加速してきています。スマホ決済の最大手であるPayPayが、中小加盟店向け手数料を10月から有料化することを決めました。それに応じるように、d払いやau PAYも今までの決済手数料の無料化を見直し、10月から有料化します。

 

逆に、楽天ペイでは新規の中小加盟店を対象として2021年の10月からの1年間は、決済手数料を無料化することを発表しました。これは、加盟店拡大を狙ったものです。

 

このように、スマホ決済の手数料をめぐる各社の動きが活発化し、今後ますます各社の競争が激しくなっていくことが予想されます。

スマホ決済を取り巻く現状

では、スマホ決済を取り巻く各社の現状はどうなっているのでしょうか。そもそもスマホ決済は、ソフトバンクのグループ会社であるPayPayが参入したことをきっかけに、その規模を拡大しています。それは、広告や大幅なポイント還元などの各種キャンペーンの施策によるところが大きいです。

 

現在では、スマホのキャリア会社などを中心に、多くの企業がスマホ決済に参戦しています。おもなスマホ決済の会社は、次のようになります。

 

スマホ決済企業 加盟店舗数 手数料
楽天ペイ 約500万店舗 3.24%
新規加盟店は10月より1年間無料
au PAY 約440万店舗 2.6%(10月から)
LINE Pay 約405万店舗 1.98%(10月から)
d払い 約352万店舗 2.6%(10月から)
PayPay 約340万店舗 最低1.6%(10月から)
メルペイ 約234万店舗 2.6%

 

このように、10月から手数料を徴収する企業は増えています。ただし、PayPayでは半年間、手数料を上回る還元キャンペーンを行うなど、スマホ決済各社でこれからもさまざまな施策が行われていく可能性があります。

加盟店におけるスマホ決済の一般的なお金の流れ

ここまでは、スマホ決済手数料をめぐる各社の動きについて見てきました。では、そもそも加盟店がスマホ決済を行った場合、どのような流れで決済代金が加盟店に入金されるのでしょうか。ここからは、加盟店におけるスマホ決済の一般的なお金の流れについて見ていきましょう。

 

まず、加盟店になるためには、スマホ決済会社への申込が必要です。申込をした後は、専用の機器を導入します。ただし、専用機器の導入は無料の場合が多く、加盟店になるためにあらかじめ資金が必要ということはありません。

 

加盟店への支払は、スマホ決済を使った商品の販売を行ってから発生します。スマホ決済の一般的な流れは、次のようになります。

 

・商品の販売
スマホ決済で商品を販売します。この時点では、お客から商品代金を受け取ることはありません。

 

・スマホ決済会社から商品代金の振り込み
後日、スマホ決済会社から、販売した商品の代金が振り込まれます。商品代金の振込時期は、ある程度お店側で自由に選択できる場合が多いです。基本は、毎月決まった日の自動振込ですが、お店側で振込日を指定できる都度振込を行っているスマホ決済会社もあります。

 

スマホ決済会社に支払う決済システム利用料などの手数料は、商品代金振込時に支払います。実際には、商品代金から手数料を差し引いた金額が、お店の口座に振り込まれることになります。

 

・キャンペーンにより後日ボーナスが振り込まれる場合もある
スマホ決済会社では、加盟店獲得のためにさまざまなキャンペーンを行っています。例えば、決済代金の数パーセントを後日還元といったものもあります。そのため、これらキャンペーンにより、後日お店の口座にボーナスが振り込まれることもあります。

スマホ決済における加盟店の会計処理

では、スマホ決済における加盟店の一般的な会計処理を場面ごとで、具体例で見ていきましょう。

 

・機器導入時

例)スマホ決済を始めるために、スマホ決済会社に申込、機器を導入した。機器の導入費用は無料だった。

 

→仕訳不要

 

スマホ決済の機器は基本、無償で導入できます。そのため、機器導入時に仕訳をする必要はありません。

 

・商品売上時

例)10万円の商品をスマホ決済により販売した。

 

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
売掛金 10万円 売上高 10万円 スマホ決済で
商品を販売

 

商品の販売時点では、まだ商品代金は未回収となっています。そのため、借方勘定科目は「売掛金」で処理します。

 

・商品代金の入金時
例)先月のスマホ決済代金100万円が振り込まれた。ただし、決済システム利用料1万6,000円が差し引かれたため、口座に入金されたのは、100万円-1万6,000円=98万4,000円だった。

 

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
普通預金 984,000円 売掛金 100万円 販売代金の入金
支払手数料 16,000円     決済システム利用料

 

売上高は、商品の販売時に計上しているため、商品代金の入金時には、売掛金を回収した仕訳をすることになります。

 

商品代金から差し引かれた決済システム利用料は、一般的には「支払手数料」で処理しますが、他の手数料と分けるために「決済システム利用料」などの勘定科目を作成し、使用しても問題ありません。

 

・返金時

例)1万円の商品の返品を受け、スマホ決済の返金処理を行った。なお、この商品の代金はまだ入金されていない。

 

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
売上高 1万円 売掛金 1万円 販売商品の返品

 

商品の返品を受けたため、売上時の仕訳の逆仕訳を行います。スマホ決済の返金処理については、仕訳不要です。返金処理後に残った金額に対して、決済システム利用料が再計算され、代金の入金時に差し引かれます。

 

・キャンペーンにより後日ボーナスが振り込まれた

例)スマホ決済会社から還元キャンペーンの代金10万円が口座に振り込まれた。

 

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
普通預金 10万円 売上高 10万円 還元キャンペーン

 

還元キャンペーンの代金は、支払済の決済システム利用料を上回った金額になることもあります。そのため、一般的には決済システム利用料の返金とは考えずに、売上高として処理します。金額が小さい場合や頻度が少ない場合は、売上高と分けて「雑収入」で処理しても問題ありません。

まとめ

スマホ決済会社の手数料競争は、激化しています。顧客獲得に向けて、今後もキャンペーンなどさまざまな施策を行なう可能性があります。スマホ決済をしようと考えている、またはすでにスマホ決済を導入しているお店にとって、スマホ決済会社の今後の施策を考え、どの決済会社に加盟するのか、または乗り換えるのかなどを慎重に判断する必要があるでしょう。

 

また、それと同時に正しい会計処理をしていく必要もあるので、新しいキャンペーンなどがあった場合は、注意しましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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