2021年度補正予算案に盛り込まれた中小企業対策まとめ

[取材/文責]マネーイズム編集部

政府はこのほど、一般会計の歳出が35兆9,895億円という過去最大規模に上る2021年度補正予算案を閣議決定しました。12月の臨時国会で審議され、21年内にも成立の見込みです。予算案には、新型コロナの影響も踏まえた中小企業対策も具体化されています。経済産業省(中小企業庁)関連の施策についてまとめました。

中小企業関連の予算額は3兆8,594億円に

補正予算案には、次のような中小企業対策が盛り込まれました。

  • 事業復活支援金【2.8兆円】
  • 資金繰り支援【1,403億円】※別途繰越予算あり
  • 事業再編・再生支援【757億円】
  • 「がんばろう!商店街」事業 ※既存予算で対応
  • 事業環境変化への対応支援の強化【130億円】
  • 取引適正化等推進事業【8億円】
  • 海外需要獲得支援【12億円】
  • 災害からの復旧・復興【128億円】
  • 事業再構築補助金【6,123億円】
  • 生産性革命補助金(生産性革命推進事業)【2,001億円】

具体的な支援・事業は?

では、それぞれどのような支援、事業が予定されているのか、見ていきましょう。

事業復活支援金

事業復活支援金は、補正予算案の中小企業対策の“目玉”とも言える制度で、21年2月に申請が終了した持続化給付金の「後継」に位置づけられるものです。

 

新型コロナの影響で大きく売上高が落ち込んだ事業者(中堅・中小・小規模事業者、フリーランスを含む個人事業主)に対し、地域・業種を問わず、固定費負担の支援として、5ヵ月(21年11月~22年3月)分の売上高減少額を基準に算定した額が一括給付されます。上限は、個人が50万円・法人が250万円となっています。

★詳しくは https://www.all-senmonka.jp/moneyizm/75423/

資金繰り支援

資金繰り支援として、以下の施策が盛り込まれました。

  • ●政府系金融機関による実質無利子・無担保融資
  • 対象者:新型コロナの影響で、売上が減少した中小企業(小規模個人▲5%/小規模法人▲15%/その他▲20%)
  • 開始時期:受付中(期間を今年度末まで延長)
  • 無利子上限:日本政策金融公庫(中小)3億円、(国民)6,000万円/商工組合中央金庫3億円
  • 無利子期間:当初3年間
  • 貸付期間:運転資金15年以内、設備資金20年以内
  • 据置期間:最大で5年

 

  • ●日本政策金融公庫による資本性劣後ローン(※)
  • 対象者:新型コロナの影響によりキャッシュフローが不足する企業や、一時的に財務状況が悪化したため企業再建等に取り組む企業
  • 開始時期:受付中(来年度も実施)
  • 融資上限:日本政策金融公庫(中小)10億円、(国民)7,200万円
  • 貸付期間:5年1ヵ月、7年、10年、15年、20年(元本については、期限一括償還)

 

  • ●伴走支援型特別保証
  • 対象者:新型コロナの影響を受け売上が15%以上減少した中小企業で、金融機関の継続的な伴走支援を受けながら経営改善に取り組む者
  • 開始時期:受付中(来年度も実施)
  • 融資上限:6,000万円(現在は4,000万円。引上げ準備中)
  • 保証料:原則0.2%
  • 保証期間:最大で10年
  • 据置期間:最大で5年

 

※劣後ローン:融資相手から高い金利収入を得られる代わりに、返済順位が低い(劣後する)ローンのこと。

生産性革命補助金

具体的には、次のような施策が実行されます。

  • ●ものづくり補助金
  • 業況が厳しい中でも賃上げ等に取り組む中小企業向けに特別枠を創設し、優先採択や補助率引き上げを行います(最大1,250万円、補助率2/3)。
  • グリーン・デジタル分野への取組に対する特別枠を創設し、補助率や上限額を引き上げます(グリーン枠=最大2,000万円・デジタル枠=最大1,250万円、補助率2/3)。

 

  • ●持続化補助金
  • 業況が厳しい中でも賃上げ等に取り組む事業者や、事業規模の拡大に取り組む事業者向けに特別枠を創設し、補助率や上限額を引き上げます(成長・分配強化枠=最大200万円、補助率は原則2/3、赤字事業者の場合には3/4)。
  • 後継ぎ候補者が実施する新たな取り組みや創業を支援する特別枠、インボイス発行事業者に転換する場合の環境変化への対応を支援する特別枠を創設し、上限額を引き上げます(新陳代謝枠=最大200万円・インボイス枠=最大100万円、補助率2/3)。

 

  • ●IT補助金
  • インボイス制度への対応も見据えたITツールの導入補助に加え、PC等のハード購入補助等を行います。
  • 補助対象:ITツール(会計ソフト、受発注システム、決済ソフトなど)、パソコン、タブレット、レジなど
  • 補助上限額と補助率:
    ITツール ~50万円(補助率3/4)、50~350万円(補助率2/3)
    PC、タブレット等 10万円(補助率1/2)
    レジ等 20万円(補助率1/2)
  • 商業集積地・サプライチェーン等で密に連携した複数の中小・小規模事業者によるITツール・機器の導入を支援するため、複数社連携型IT導入枠を設け、データ共有・活用などの取組も支援します。

 

  • ●事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎに係る取り組みを、年間を通じて機動的かつ柔軟に支援します。

  • 補助対象:
    ・事業承継・引継ぎ後の新たな取組に関する設備投資等
    ・事業引継ぎ時の専門家活用費用等
    ・事業承継・引継ぎに関する廃業費用等
  • 補助上限額と補助率:
    補助上限額=150万円~600万円
    補助率=1/2~2/3

 

事業再構築補助金

売上高減少要件を一部緩和するなど使い勝手を向上させるとともに、業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者に対する特別枠を創設します(最低賃金枠等も継続、最大1,500万円、補助率3/4=中小)。また、グリーン分野への取り組みに対する特別枠も創設されます(売上高減少要件撤廃、最大1億円、補助率1/2=中小)。

  • 対象要件:
    ①2020年4月以降の連続する6ヵ月間のうち、任意の3ヵ月の合計売上高が、コロナ以前と比較して10%以上減少していること。複数事業者が連携する場合は、売上高減少分の合算が可能

    (注)以下の要件は撤廃

    「2020年10月以降の連続する6ヵ月間のうち、任意の3ヵ月の合計売上高が、コロナ以前と比較して5%以上減少していること」
    ②事業再構築指針に沿った事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること等

  • 開始時期 :2022年以降(補正予算成立後、詳細を調整)
  • 対象経費:建物費(移転に伴う一時的な貸工場等の賃借料についても、建物費の一部として認める)、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費(一部の経費については、上限等の制限あり)
  • 補助上限額・補助率については、中小企業庁「事業再構築支援のご案内」を参照
  • jigyo_saikoutiku.pdf (meti.go.jp)

    その他の支援について

    • ●事業再編・再生支援

    事業再生支援ニーズの高まりに応じ、中小企業の私的整理等のガイドラインを年度内に策定。併せて官民連携のファンドや中小企業再生支援協議会の支援体制を拡充します。

     

    • ●「がんばろう!商店街」事業

    商店街等が行う需要喚起を目的としたイベントなどを支援。参加者の感染リスクを今まで以上に低減するため「ワクチン・検査パッケージ」導入等を支援し、補助上限額を引上げます。

     

    • ●事業環境変化への対応支援の強化

    コロナ下の環境変化に直面する中小・小規模事業者に対して、中小企業団体等の支援者が、経営者等との対話を通じて経営課題を抽出する等の課題設定型の伴走支援を実施します。また、最低賃金引き上げやインボイス制度導入等の環境変化への対応が求められる中小・小規模事業者に対し、制度の周知やデジタル化支援・相談等を実施します。

     

    • ●取引適正化等推進事業

    中小企業向けに、取引価格交渉ノウハウに関するセミナー等を開催し、価格交渉力の強化などを支援します。

     

    • ●海外需要獲得支援

    新型コロナウィルスの影響の下、急速に拡大する越境EC(電子商取引)市場の獲得促進のため、中小企業の行う海外向けブランディング・プロモーション等を支援します。

    まとめ

    21年度補正予算案には、以上のような中小企業対策が盛り込まれ、21年内にも国会で可決の見通しです。引き続き厳しい環境が続く中、自らが対象になっていないかをよく確認し、利用を検討しましょう。不明な点は、税理士などの専門家に相談するのをおすすめします。

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