商品券や図書券など物品切手等の譲渡における会計処理を徹底解説

[取材/文責]長谷川よう

事業を行う中で、商品券や図書券などの物品切手等を購入することがあります。自社で使う場合や人に贈るために購入する場合など、商品券や図書券の使い道はさまざまです。また、購入時期と使用時期が異なるため、それぞれで会計処理も必要です。

ここでは、使い道や時期別に、物品切手等の会計処理について解説します。

そもそも物品切手等とは

はじめに、そもそも物品切手等とはどのようなものかを見ていきましょう。

物品切手等とは、いわゆる商品券のようなもので、引き換えに物品やサービスの提供を受けられる証書のことです。証書と引き換えに物品やサービスの提供を受けるため、証書の記載金額部分については、引き換え時にお金を負担することはありません。

たとえば、1,000円の商品券で1,000円の商品と交換することができ、その際に交換手数料などは発生しません。

物品切手等という言葉は主に、消費税の法律などでよく用いられる言葉であり、通常は「商品券」や「ビール券」などの名称で取引されています。商品券やビール券以外に、旅行券やプリペイドカード、ギフトカード、クオカードなどが物品切手等に該当します。

会社が物品切手等を購入する場合、自社で使うか人に贈ることを目的としていることが多いです。どちらの目的で購入するかによって、物品切手等の会計処理方法が異なります。処理方法について、次項で詳しく説明します。

商品券や図書券など物品切手等の会計処理

ここでは、物品切手等を自社で使うために購入した場合と、人に贈るために購入した場合の会計処理をそれぞれ見ていきましょう。

自社で使うために購入した物品切手等の場合

自社で使うために購入した物品切手等の場合の会計処理は、購入時に資産計上する方法と、購入時に経費計上し期末に残高を資産計上する方法の2つがあります。それぞれの方法の仕訳は、次のようになります。

●購入時に資産計上する方法

購入時に資産計上する方法では、商品券や図書券などの物品切手等の購入時に「貯蔵品」勘定などの資産の科目で処理し、物品切手等を使う都度、資産から経費に振替していく会計処理方法になります。

例)商品券5万円を現金で購入した。その後、3万円分を消耗品と交換したため、期末では2万円の商品券が手元にある。

・商品券購入時

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方科目 摘要
貯蔵品 50,000円 現金 50,000円 商品券購入

借方勘定科目の「貯蔵品」は「(他店)商品券」など、別の勘定科目で処理しても問題ありません。

 

・商品券を消耗品と交換した時

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方科目 摘要
消耗品費 30,000円 貯蔵品 30,000円 消耗品購入

上記の貯蔵品から消耗品費への振替仕訳を行います。
・期末
期末の仕訳は必要ありません。
 

●購入時に経費計上し期末に残高を資産計上する方法

物品切手等の使い道が決まっていたり、期中に使い切ることが多かったりする場合では、購入時に経費計上し、期末に残高を資産計上する方法で処理したほうが管理しやすいです。この場合の会計処理は次のようになります。

例)旅行券3万円を現金で購入し、その後出張で25,000円を使用した。旅行券の期末の残高は5,000円である。

・旅行券購入時

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方科目 摘要
旅費交通費 30,000円 現金 30,000円 旅行券購入

旅行券の購入時に「旅費交通費」や「出張費」など科目で経費計上します。

・旅行券使用時
旅行券使用時の仕訳は必要ありません。

 

・期末

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方科目 摘要
貯蔵品 5,000円 旅費交通費 5,000円 旅行券

期末に旅行券の未使用分を経費から「貯蔵品」に振り替えます。振替仕訳をすることで、旅行券の使用分のみが経費に計上されます。

人に贈るために購入した物品切手等の場合

人に贈るために物品切手等を購入する場合は多くの場合、購入してすぐに物品切手等を贈るため、購入時に経費で処理します。ただし、贈った相手が得意先など社外の人なのか、社内の従業員なのかによって使用する勘定科目が異なります。それぞれの仕訳を見ていきましょう。

・得意先など社外の人に贈った場合

例)得意先にお中元で贈るために商品券3万円を現金で購入した。
借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方科目 摘要
接待交際費 30,000円 現金 30,000円 商品券購入

得意先など社外の人に贈るために、物品切手等を購入した場合は「接待交際費」で処理します。

 

・社内の従業員に贈った場合

例)創業10周年の記念に、現金で購入した商品券1万円を贈った。
借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方科目 摘要
給料手当 10,000円 現金 10,000円 商品券

原則、従業員に支給する商品券などの物品切手等は、従業員の給与扱いになります。
これは、創業何周年の記念であっても同じです(創業何周年の記念で物品を贈った場合は、福利厚生費)。

例)従業員の出産祝いに、現金で購入した商品券1万円を贈った。
借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方科目 摘要
福利厚生費 10,000円 現金 10,000円 商品券

従業員に対する結婚や出産などへのお祝いは、社会通念上問題のない範囲であれば、給与扱いをせずに「福利厚生費」で処理することが可能です。

※金額が大きい場合や、特定の人のみ商品券を贈っている場合などは、給与扱いになります。

このように、従業員に商品券などの物品切手等を贈った場合は、状況により会計処理が異なるので、注意が必要です。

 

人に贈るために購入した物品切手等の場合であっても、期末に残高が残っている場合は「貯蔵品」勘定に振り替えます。

商品券や図書券など物品切手等の譲渡・購入における消費税の取り扱い

商品券や図書券などの物品切手等を購入したり、使用した場合に会計処理とともに注意しないといけないのが、消費税の取り扱いです。

ここでは、物品切手等の消費税の取り扱いを見ていきます。

物品切手等の譲渡における消費税の取り扱い

消費税では、譲渡(売却)と購入の考え方は原則、同じです。そこで、まずは商品券や図書券などの物品切手等を譲渡(売却)した場合、消費税をどう取り扱うか見ていきましょう。

結論からいうと、商品券や図書券などの物品切手等を譲渡(売却)した場合の消費税は非課税になります。

 

消費税は、物の消費に課税される税金です。つまり、物を購入して消費しないと、消費税の対象になりません。ここでいう「物の消費」とは、商品券や図書券などの物品切手等の消費ではなく、物品切手等を用いて取得した商品の消費のことです。

 

物品切手等の売却にまで消費税を課してしまうと、物品切手等の売却をしたときと、物品切手等の購入者が物品切手等を使って商品を購入したときで二重に課税されてしまうことになります。そのため、物品切手等を売却した際には、消費税の課税対象にはしていません。

 

これは、チケット業者の場合も同じです。

※チケット業者が、郵便切手を売却した場合は、課税になります。

物品切手等を購入した場合の消費税の取り扱い

次に、物品切手等を購入した場合の消費税の取り扱いを見てみましょう。物品切手等を購入した場合の消費税の取り扱いで注意しないといけないのが、課税仕入れの計上時期と金額です。

・課税仕入れに計上できる時期
物品切手等を購入した場合の消費税の取り扱いは基本、譲渡における考え方と同じです。

物品切手等を購入した時点では消費税の課税仕入れにはならず、その後、物品切手等を使って商品を購入した時に課税仕入れに計上します。

 

また特例として、物品切手等を使って商品を購入した時ではなく、物品切手等の購入時に課税仕入れに計上することも認められています。ただし、この場合は、毎年継続して、物品切手等の購入時に課税仕入れで処理する必要があります。

 

・課税仕入れに計上する金額
物品切手等を使って商品を購入する場合は、物品切手等の額面金額と同じ、もしくは近い金額のものを購入します。物品切手等の額面金額と購入物の金額が同じであれば問題ありませんが、違う場合はどうなるのでしょうか。この場合は、物品切手等の価格が課税仕入れの金額になります。

 

例えば、3万円の商品券で2万9500円の商品を購入した場合でおつりがでない場合は、商品券の額面金額3万円が課税仕入れの金額になります。

まとめ

物品切手等とは、引き換えに物品やサービスの提供を受けられる証書のことをいいます。物品切手等の譲渡においては、会計処理と消費税の処理に注意する必要があります。物品切手等の会計処理は、自社で使うのか、人に贈るのかで異なります。

 

また、物品切手等の譲渡における消費税は非課税です。物品切手等の購入においては、課税仕入れの時期や金額に注意する必要があります。

 

物品切手等の会計処理と消費税の処理をしっかりと理解し、正しい処理を行いましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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