カンパニー制とはどのような制度?概要と事業部制や持株会社との違いに注目して解説
カンパニー制は会社組織のひとつの選択肢です。幅広く事業を展開する会社が、それぞれの事業部門を独立採算制として、ひとつの会社のように見立てます。今回はカンパニー制の概要やメリット・デメリット、注意点まで幅広く解説します。
カンパニー制の概要
カンパニー制とは
カンパニー制は、社内の事業部をそれぞれ独立した会社のように扱う仕組みを指します。本来、会社は全体でお金や人などの資産を管理しますが、カンパニー制を導入するとそれぞれのカンパニー内で管理するようになります。
それぞれのカンパニーに役員を設置して多くの権限と責任を与えるため、実質的にはひとつの会社のような扱いとなります。また、会計処理もそれぞれのカンパニーが独自に実施するのが基本で、ほぼ独立した法人と同じ扱いです。
持株会社との違い
持株会社は複数の独立した会社によって構成されるグループを指します。子会社の株式を保有するための本社を設立し、業務は基本的に子会社がおこないます。
多くの業務を子会社化することによって、それぞれの会社がスリムになったり独立採算制を取れたりします。カンパニー制はひとつの会社内で独立採算制を取りますが、持株会社は登記上独立しているという違いがあります。
事業部制との違い
事業部制はカンパニー制と同様にひとつの会社内に組織が存在します。ただ、事業部制の場合はカンパニー制と異なり、独立採算制ではありません。
そのため、重要な物事の決定には常に本社の役員など経営陣の考えが絡んできます。カンパニー制はカンパニーごとに配置された役員が意思決定をしますが、事業部制では本社の役員が意思決定するという違いがあります。
カンパニー制を導入する際のポイント
責任を明確にしたいか
責任をどこまで明確にしたいかによって、カンパニー制を導入すべきかどうかが決まります。基本的にカンパニー制は事業部制などと比較すると責任範囲や責任者が明確です。これをどこまで重要視するかが、カンパニー制導入を決めると言っても過言ではありません。
カンパニー制を導入すると、業績はそのカンパニーだけで決まるようになります。役員を筆頭に責任範囲が明確となり、特に業績が悪かった場合に責任追及がしやすくなります。
スムーズな意思決定をしたいか
カンパニー制を導入すれば、個々の組織の規模を小さく できます。規模が小さくなればスムーズな意思決定がしやすくなるため、ここもポイントとして意識すべきです。
意思決定がスムーズになれば、それだけ会社の方針を臨機応変に変更できます。大規模な会社では難しいスピード感で意思決定をして、トレンドにいち早く乗れるかもしれません。
ただ、すべての会社でこのようなスムーズさが求められるとは限りません。意思決定を高速化したいかどうかは、カンパニー制を導入するかどうかの判断基準となります。
帰属意識の向上を目指すか
それぞれのカンパニーは専門的な集まりとなるのが一般的です。従業員は特定の分野のプロフェッショナルとなり「このスキルで会社に貢献している」と感じやすくなります。結果、従業員の帰属意識向上が期待できます。
一般的に会社を運営していくにあたって、従業員の帰属意識を高められるかどうかは重要なポイントです。カンパニー制を導入し個々の責任が増えることは、帰属意識の向上につながりやすくなります。
役員を選出できるか
それぞれのカンパニーには役員を設置しなければなりません。経営のかなめとなるため、適切な人材を選出ができるかどうかがポイントです。
カンパニー制では本社とは別に執行役員などが必要となり、経営を理解している人材の確保が求められます。適切な人材を配置しなければ、カンパニー制を導入しても失敗に終わるからです。重要なポジションを任せられる人材をどの程度確保できるかが、カンパニーの数を左右します。
カンパニー同士の交流ができるか
カンパニー同士の交流ができるかどうかも考えておきましょう。優先度は高くありませんが、交流ができる方が従業員の満足度が高まります。
カンパニーの規模を小さくするとそれだけ従業員数が少なくなり、交流できる相手や機会が減ってしまいます。そのような状況が続くと、従業員の不満が溜まってしまうかもしれません。
とはいえ、会社は基本的に働く場所との考え方もあります。カンパニー同士の交流ができれば理想的ですが、優先度の高いポイントではありません。
カンパニー制を導入する際の注意点
カンパニーに経営を任せる
カンパニーの経営はそれぞれの経営陣に任せるようにしましょう。役員を信頼し本社は干渉しすぎないようにすべきです。
本社が経営に干渉しすぎると、カンパニーの役員はモチベーションを下げてしまいます。重要な役割を任せられたにもかかわらず、自分の考えで経営ができなくなってしまうからです。
もちろん、本社として示すべき指針などもあります。ただ、それらは最低限に留めておき、基本的にはカンパニーの役員に任せるべきです。
運営にはコストがかかる
ひとつの会社だけを運営する場合と比較すると、カンパニー制の導入にはコストがかかります。例えば独立した会計処理をおこなう必要があるため、それぞれのカンパニーで決算に関する費用を支払う必要があります。カンパニーを増やせば増やすほど維持費が増える仕組みです。
これは一例ですが、カンパニーが増えると関連する維持費がかさむことは当然でしょう。新規で発生するコスト以上の価値があるのかは、注意深く検証しなければなりません。
全社的な視点が求められる
特定の会社だけではなく全社的な視点を持たなければなりません。カンパニー制はそれぞれのカンパニーが独立して事業を推進しますが、それらを取りまとめることも必要です。
例えばカンパニー全体での売上目標や利益率などを定めるべきです。また、社会貢献に関する取り組みなども推奨していくべきでしょう。本社はそれぞれのカンパニーにすべてを丸投げすることは避け、全社的な視点を持たなければなりません。
カンパニー制の事例
2022年3月導入:ローソン
ローソンはカンパニー制を導入して、利益責任の請求をおこないます。エリアごとに分割してそれぞれのエリアに適した経営を目指す方針です。
また、コンビニ経営以外の分野もそれぞれカンパニーに分割します。エンターテイメントや金融をカンパニーにして、コンビニ経営と離れた部分で経営を推進する仕組みです。
2022年7月導入:NTTドコモ
NTTドコモは非通信事業が増えたため、カンパニー制を導入する方針としています。金融や映像など通信以外の事業にカンパニー制を導入し、スムーズな意思決定を実現するとしています。
なお、カンパニー制導入の背景には、通信事業が伸び悩んでいることがあるでしょう。非通信事業の強化を図り、全社的な業績アップを目指していると考えられます。
2021年10月廃止:パナソニック
パナソニックは上記とは逆にカンパニー制を廃止しています。持ち株会社への移行を進めている状況です。
なお、パナソニックの公式サイトによると、カンパニー制の廃止は「中長期的な視点での事業競争力強化のため」とされています。カンパニー制が適していないと経営陣が判断した事例です。
まとめ
カンパニー制の概要と持株会社や事業部生との違いについてご説明しました。また、カンパニー制を導入する際のポイントについても解説したため、どのような観点からカンパニー制を検討すべきか理解してもらえたでしょう。
なお、カンパニー制は導入する会社もあれば廃止する会社もあります。必ずしも導入するのが正しいとは限らないため、注意点も踏まえながらよく検討するようにしてみてください。
立命館大学卒。
在学中に起業・独立などにあたり会計や各種監査などの法規制に対応するためのシステム導入ベンダーを設立。紆余曲折を経て多くのシステムを経験。
システム導入をされるお客様の起業活動を通じて得た経験、知見を活かし皆さんの気になるポイントを解説します。
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