中国越境ECにおける基礎知識とは?税金やメリット・デメリットなども解説

[取材/文責]岡和恵

スマートフォンの普及や通信環境整備により、世界中でインターネットショッピングが盛んになりました。
コロナ禍による生活様式の変化も、ネットショッピングを後押しする大きな要因になっています。
この記事では、中国を中心とした越境ECの税金、メリットやデメリットについてそのポイントを解説します。

越境ECの現状と将来性について

そもそも越境ECとはなにか?

ECとはElectronic Commerceの略語で「電子商取引」のことです。インターネットを介した商取引のことです。
そして、「越境」ECとは、国を越えて行われるEC取引をいい、国内からインターネットで海外へ向けて商品などを販売することを指します。

ECにおいては、インターネットを通じて行うのは「受発注」や「決済」であり、配送についてはオフラインとなるケースも多々あります。

一般に誰と誰が取引をするか、取引の形態を表す用語として、次の3つの型があります。
➢B2B(BtoB、Business to Businessの略)
企業(法人)間取引のこと(例:企業向けの各種購買サイト)

➢B2C(BtoC、Business to Consumerの略)
企業(法人)と一般消費者の取引のこと
(例:Amazon、楽天市場、各種企業の個人向けサイトなど)

➢C2C(CtoC、Consumer to Consumerの略)
一般消費者など個人と個人の間で行う取引のこと(例:メルカリ、ヤフオクなど)

特に越境ECの取引形態としてよく利用されるのが、B2B、B2Cです。
ここで、B2CのEC市場の国別比較を見てみましょう。

私たちの生活もコロナ下でネット通販が増えたとはいえ、中国やアメリカの規模の大きさに驚きます。
さらに、わが国とアメリカと中国の3国だけに絞って、越境ECの規模を比較したものが下図です。

上の図は、企業-消費者間のB2C取引における日・中・米3国の市場規模の比較です。
上の図の赤い矢印はお金の流れに相当します。
越境EC取引によって、中国からわが国にわたってきたのが約2兆円、中国からアメリカにわたってきたのが2.3兆円であり、中国の越境ECの取引規模が大きいことがよくわかります。

逆にいうと、わが国における越境ECはまだ伸びしろがあるということではないでしょうか?

越境ECの事業パターンとは?

経済産業省が令和3年7月に発表した「電子商取引に関する市場調査」という報告書において、越境ECの事業モデルとして6つのパターンが挙げられていました 。大きく3つの種類に分類した上で、それぞれについて見てみましょう。

【自社サイトを立ち上げて運営】

国内又は相手国において自社サイトを立ち上げるもので、ECサイト立ち上げにかかる独自ドメインの取得やサーバーの契約、さらに集客がしやすい、わかりやすいサイトの構築が必要です。

➢国内自社サイト
自社ECサイトを国内で立ち上げ、集客、注文を受け、海外の顧客に商品を配送します。
集客のための広告宣伝費はかかりますが、顧客と直にやり取りすることができます。
➢相手国自社サイト
相手国においてECサイトを立ち上げ、現地で集客し、注文を受け、先にわが国から輸送した商品を配送しておきます。相手国でのECサイト立ち上げ費用、わが国からの商品の保管費用などがかかります。

【ECモール等に出店】 

多くの企業のECサイトが集まったインターネット上の仮想の商店街(モール)に出品するケースです。
既存のプラットフォームを利用することができるため、ECサイト立ち上げのための初期費用はかかりませんが出店料などのランニングコストがかかります。

➢国内ECモール等出店
モール自体の集客力を利用することができます。アカウントを作成し、商品情報を登録します。
国内消費者の延長上に海外消費者がいるという位置づけです。

➢相手国ECモール等出店
相手国のECモールに出店します。出店については、相手国、商品、個々のECモールによって手続きが異なることがあるため、代行会社を利用することが多いようです。

➢保税区活用型出店
相手国のECモールに出店します。相手国の保税倉庫にあらかじめ商品を輸送し、受注があればその倉庫から発送する事業モデルです。顧客から見れば、商品の到着が早くなります。

【一般貿易型】

一般の貿易と変わらない手続きが必要ですが、BtoB型の場合などに活用されます。
相手国のECモールなどに出店し、受注があれば国内から一般の輸出取引としたり、あらかじめ相手国の倉庫に商品を輸送したりする方法があります。

これらに当てはまらないケースもあるかもしれませんが、事業モデルだけでも多く、複雑になっています。

また、ビジネスのスタイルを決めても、商品そのものの輸入が規制されていれば取引はできません。
例えば、中国であれば、小売り輸入商品リストがあり、まず対象とする商品の取扱いがあるかどうかを調べる必要があります。
今般、中国は越境ECの優遇措置に対象となるリストを更新し、2022年3月1日より、全部で1,476税目の商品となりました。 消費者需要の変化に対応した更新のようです。

越境ECにおいて押さえておくべき税金の基礎知識

輸出取引における消費税の考え方

例えば、新たに海外顧客向けに国内自社のサイトを立ち上げたとします。
国内であれば、税込価格で表示することになるため、一般に1,000円の商品については、1,100円などとして表示することになります。

わが国において、消費税の対象となる取引は「国内取引」と「輸入取引」です。
したがって、商品を扱う業者が消費税の課税事業者であっても、輸出取引は消費税が免税 となります。

消費税については、消費地課税主義の原則、国際間の競争力低下防止のため、もともとは課税取引であるものを国外で消費されるものについては「免税」としているのです。
ただし、輸出取引については、輸出許可書などにより輸出取引の証明があるものに限られます。
 
したがって、国内から商品を仕入れ、それを国外に輸出する課税事業者は、国内で支払った消費税について申告により消費税の還付を受けることができます。

中国越境ECに係る税について

ここでは、中国の顧客向けに必要となる税金について見ていきましょう。
【関税】
関税は、中国に輸入される商品に課される税金であり、商品が中国の税関を通る際に徴収されます。

【増値税(ぞうちぜい)】
中国国内において海外から物を輸入する場合などに、増値税という税金が発生します。増値税の税率は17%(一部のものは13%)であり、 わが国の消費税に似ています。
したがって、わが国では消費税は免税となり、国内で仕入れた商品の消費税が還付されたとしても、中国において顧客から預かったより税率の高い増値税を支払うことになります。

【行郵税(ぎょうゆうぜい)】
個人顧客が郵送等で商品を一定以上輸入する場合には、行郵税が課せられます 。

ECサイトにもこれらの税金について明記し、負担者を明らかにしておかないと、後々トラブルに発展しかねません。これは中国の例ですが、相手国の税金事情だけでなく、取引の規制などを前もって十分に調査をする必要があります。

越境ECのメリット・デメリットとは?

越境ECのメリットとはなにか?

越境ECのメリットとしては、実店舗に比べて出店や運営において手間やコストが少ないなどのほか、次のようなメリットが考えられます。

➢従来型の実店舗よりも顧客に安く商品やサービスを提供することができる
➢海外顧客という幅広いターゲット、新たな販路が期待できる
➢国内よりも競合する相手が少ない
➢Made in Japanの魅力

越境ECのデメリットとはなにか?

越境ECのデメリットとしては、受発注はインターネットサイトでできますが、自社の商品が海外に渡るため、輸出コストがかかる上、商品の紛失・破損などの危険性があることが挙げられます。

➢自社商品のアピールなど、言語をある程度マスターする必要がある
➢国や地域によって商習慣や手続き、税金などが異なる
➢集客のための相手国の市場マーケティングが必要となる
➢インターネット回線に問題がある場合もある(安定したアクセスが難しい場合もある)
➢国内より決済トラブルなどが多い(クレジットカード決済の可否など)

まとめ

国内のECだけでなく、越境ECは今後もっと発展しそうな気配です。
海外のものがとても珍しい時代ではなくなりましたが、自社商品が海外の方に好評を得たとわかると、わが国人としても嬉しくなります。
ECサイトに商品の動画をアップしたり、顧客との面談もインターネットを通じてできたりと、越境ECには好ましいIT技術が大いに利用できます。

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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