法人版マイナンバーが税金・事業活動に及ぼす影響とは?

[取材/文責]阿部正仁

マイナンバーは個人だけのものではありません。法人版マイナンバーの導入により、法人ごとに法人番号が指定されています。法人番号とマイナンバーには共通点がある一方、異なる点も存在します。そこで、税金・事業活動に及ぼす影響という視点から法人版マイナンバーについて詳しく解説します。

法人版マイナンバー(法人番号)とは

法人版マイナンバーとは、個人に対するマイナンバーの法人版という位置づけです。国税庁は株式会社など一つの法人ごとに13桁の法人番号を指定しています。

法人番号の目的

法人番号もマイナンバーと同じように納税者の利便性向上が目的のひとつです。しかし、後述する法人側の利便性は個人とは異なります。

「国税庁法人番号公表サイト」に法人情報が公表される

法人版マイナンバーでは「国税庁法人番号公表サイト」に次の法人情報が公表されます。

 

  • ①法人番号
  • ②商号又は名称(フリガナを含む)
  • ③本店又は主たる事務所の所在地

 

たとえば、「日産自動車株式会社」で調べると国税庁法人番号公表サイトに次の情報が表示されます。変更履歴情報等の項目の「履歴等」をクリックすると法人番号指定年月日が「平成27年10月5日」であることが分かります。

 

  • ①法人番号:9020001031109
  • ②商号又は名称:日産自動車株式会社(ニッサンジドウシャ)
  • ③所在地:神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地

法人番号には利用制限がない

法人番号はマイナンバーと違い、利用範囲に制限がなく、前述の「日産自動車株式会社」の会社情報も誰でも閲覧が可能です。そのため、工夫次第で法人側は様々な方法に活用することができます。

法人番号で法人情報を取得する

国税庁法人番号公表サイトから法人情報を入手するのが法人番号を活用する基本といえます。まずは法人情報の入手方法について見ていきましょう。

法人情報を検索する

国税庁法人番号公表サイトから「法人番号」「商号又は名称」「所在地」のいずれかで法人情報を検索できます。さらに法人種別など、その他の検索条件を細かく設定することも可能です。たとえば、「ワタミ株式会社」と検索すると、法人番号指定年月日のほか、平成27年12月1日にワタミフードシステムズ株式会社と吸収合併をしたという変更履歴が表示されます。ほかにも法人番号指定年月日以降における所在地や商号など法人情報の変更履歴も分かるため、企業の信用調査に利用できるでしょう。

効率よく法人情報を取得する

以前は法人情報を入手するためには、登記簿謄本の取得が必須でした。当日に登記簿謄本を入手するなら法務局に出向く必要があり、インターネットから取得する場合でも手続した翌日以降にしか入手できませんでした。もちろん、登記簿謄本の入手は有料です。

 

しかし、法人番号が指定されたことにより、場所や時間を選ばずに法人情報が入手できます。しかも無料です。そのため、法人情報を入手する時間と費用の両面で効率的になったといえます。

 

さらに法人番号から10社までまとめて検索できるのも法人番号公表サイトの特色です。そのため、複数の法人情報を一括で検索するのに便利といえます。

法人情報をデータで取得する

法人番号公表サイトでは前述の検索機能のほかにも法人情報を次の方法によりデータで取得できます。

(1)ダウンロード機能

法人番号公表サイトの法人情報は「月末時点におけるすべての法人の最新情報を都道府県別および国外の単位に分けて月単位で取得する全件データダウンロード」と「新規の法人番号、名称・所在地の変更などの変更情報に相当する差分データを全国および国外のデータを日単位で取得する差分データダウンロード」に大別できます。

(2)DVDによるデータ提供

すべての法人の最新情報をDVDに記録することが出来ます。事前にDVDを国税庁法人番号管理室に郵送などで提出しなければなりません。

(3)Web-API(システム間連携インタフェース)

Web-API(システム間連携インタフェース)により、インターネット経由で簡単な条件を指定してリクエストを送信することで法人情報が取得できます。「指定した条件に合致する法人情報」や「指定した期間および地域で抽出した法人等の更新情報」が入手できるのが特徴です。

 

法人番号公表サイトの「アプリケーションIDの発行届出フォームからの入力」または「書面によるアプリケーションIDの発行届出」のいずれかの方法で事前申請すれば利用できます。

取得した法人情報を活用する

法人番号をその法人のコード番号に設定することで業務の効率化が実現できます。そもそも法人番号はマイナンバーと同じように指定した番号の変更がないため、コード番号として最適といえます。

入力作業の効率化

Web­API またはダウンロード機能により法人番号を活用することで、「法人名」「本店所在地」の情報を自動的に補完入力する機能を追加できます。法人番号をコード番号にすることより、手入力による住所などの誤入力や表記のゆれによる問題が解消でき、入力作業も効率的になります。

会計業務の効率化

「法人番号=コード番号」で取引先を管理することで、得意先や仕入先ごとの売掛金や買掛金などの集計が容易になりました。売掛金管理を例にしましょう。法人番号を用いて自動集計すれば、たとえ得意先の支店単位や営業所単位で売掛金の管理をしていても法人単位での売掛金管理が簡単になります。

新規営業先等の把握の効率化

新規営業先などを把握するためには法務局に出向いたり業者から法人情報を買い取ったりするのが一般的でした。しかし、法人番号公表サイトから法人情報をダウンロードし、「法人番号指定年月日」で絞り込むことで、新たに法人番号が指定された法人(新規設立法人)の抽出が可能となり、新規営業先などの把握が効率的にできるようになります。

将来、消費税の課税事業者の法人番号が公表される

年商1,000万円の課税事業者のほうが免税事業者よりも対外的な信用度が高いのが一般的です。そのため、たとえ消費税を納税してでも自発的に「免税事業者→課税事業者」を選択することが予測できます。

インボイス方式(適格請求書等保存方式)とは

令和5年10月1日から導入されるインボイス方式により、課税事業者の法人番号などがインターネット上で公表されます。

 

インボイス方式(適格請求書等保存方式)とは課税事業所が発行した請求書等に記載されたもののみが控除の対象となる「仕入税額控除」の仕組みを表します。課税事業者は適格請求書発行事業者であり、インボイス方式に対応した「適格請求書」の発行が可能です。

 

つまり、インボイス方式導入後は、同じ買い物なら仕入税額控除の対象外となる免税事業者よりも課税事業者から購入したほうが消費税の節税につながるということになります。

 

インボイス方式の導入後に課税事業者になる制度である「適格請求書発行事業者登録制度」により、登録番号(T+法人番号)がインターネット上で公表されることになりました。

公表される内容

インターネット上で公表される内容は次の通りです。金融機関などの取引先による信用調査が容易になることが考えられます。

 

  • 適格請求書発行事業者の氏名又は名称(課税事業者である法人名)
  • 登録番号(T+法人番号)、登録年月日または取消・失効年月日
  • 法人の場合、本店又は主たる事務所の所在地

まとめ

法人側の事務作業を効率化できたり、対外的な信用度アップを図るために自発的に消費税を納める確率を上げたりするのが法人番号を指定されることによる影響でしょう。そのため、法人版マイナンバーは事業活動において避けては通れないといえます。

TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。

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