損する経費計上とは間違った節税対策について解説します

[取材/文責]マネーイズム編集部

事業をしていると気になるのが、税金のことです。納める税金を抑えるためには、経費を多く計上したほうが良いと考えている人も多いでしょう。

確かに経費計上は節税対策になりますが、場合によっては経費計上がかえって損になることもあります。

ここでは、損をする経費計上や間違った節税対策について解説します。

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そもそも経費計上をするとなぜ節税になるのか

はじめに、なぜ経費計上をすると節税になるのかを見ていきましょう。

法人税も所得税も所得に対して、税金が課されます。計算式で見ると、次の通りです。

税金額(法人・個人事業主)=所得金額×税率

では、所得とは何でしょうか。法人では「益金-損金」で計算した金額、個人事業主では「収益-必要経費」で計算した金額が所得金額になります。益金や損金といえば、難しく感じますが、基本的には、収入や経費と同じです。

所得金額に税率を乗じて、納める税金の金額を求めるため、所得金額を低くすることが節税の対策になります。所得金額を低くする方法は、売上を減らすか、経費を増やすかのどちらかになります。しかし、通常、売上の圧縮をすることは難しいです。そのため、経費計上によって所得金額を減らし、節税を行います。

金券を用いて節税をする場合は、「金券を使った節税対策は可能か?金券の正しい費用計上時期について解説」をご覧ください。

経費計上をすると損をする?間違った節税とは

所得金額を減らすために、経費を増やして納める税金を減らすのが、経費計上による節税対策です。しかし、実はやみくもに経費計上をすると、損をします。つまり、間違った節税になります。

ここでは、経費計上による間違った節税について解説します。

経費計上をするとお金が減ることに注意

節税にばかり目を向けて、経費を計上すると、大事なことを忘れてしまいがちです。
それは、経費計上をすると、キャッシュはその分減っているということです。

基本的に、経費を計上した金額で減るキャッシュと、節税によってキャッシュの減少を抑えた分を比較すると、経費を計上した金額で減るキャッシュのほうが大きく、その結果、手持ちのキャッシュは減ることになります。具体例で、キャッシュの減少額を見ていきましょう。

例)売上高3,000万円、経費1,000万円、税率40%の場合

・これ以上の経費計上をしないケース
このケースの税金の計算は、次のようになります。

税金金額=(売上高3,000万円-経費1,000万円)×税率40%-控除額279.6万円=520.4万円

・経費を追加で200万円支出した場合
このケースの税金の計算は、次のようになります。

税金金額=(売上高3,000万円-経費1,000万円-追加の経費200万円)×税率40%-控除額279.6万円=440.4万円

経費を追加しなかった場合と、追加した場合では520.4万円-440.4万円=80万円の節税となります。しかし、ここで考えたいのが、キャッシュの減少です。
200万円の経費支出に対して、節税となった分は80万円です。キャッシュは200万円-80万円=120万円減少しています。

節税になっても、キャッシュは節税前よりも120万円減少するため、キャッシュを手元に残したい法人や個人事業主には、間違った節税になります。

売上を生み出す経費に支出しよう

経費の計上による節税は、キャッシュの減少が起こります。節税では、納税額を抑えるだけでなく、キャッシュをできるだけ減らさないことも大事になります。

しかし、経費の支出を伴わない節税も難しいです。そこで、今年の単年のことだけを考えるのではなく、来年以降のことも考えて節税します。具体的には、売上を生み出す経費に支出することが大事です。売上の増加としての効果が来年以降であったとしても、無駄な支出にはなりませんし、今後の成長につながります。

もうひとつ、経費の支出による節税で気を付けなければならないのが、外部の目です。利益やキャッシュが少ないと、金融機関からの融資も受けにくくなります。資金繰りのことも考え、計画的に節税対策をすることが重要です。

そのほかの間違った節税方法

経費計上以外にも、節税方法はいくつかあります。しかし、そのほかの節税方法についても、使い方を間違えると効果が薄いものになるケースも多いです。

ここからは、そのほかの間違った節税方法について見ていきましょう。

減価償却資産の購入による節税

経費よりも大きな支出を伴う節税に、減価償却資産の購入があります。減価償却資産は支出が大きいため、節税額も大きくなると考えがちですが、そうではありません。

1つ当たり10万円以上資産を購入した場合は、減価償却の対象となります。減価償却資産は、その効果が購入年度だけでなく、複数年にわたります。そのため、購入年度に購入価格の全額を経費にできません。複数年にわたって、少しずつ経費にしていきます。

何年にわたって経費にするのかは、資産の種類や構造などで、法律で定められています。例えば、耐用年数10年で100万円の資産を購入した場合は、簡単にいうと、1年間に10万円ずつしか経費にできません。

もうひとつ、注意したいのが事業供用についてです。実は、減価償却資産を購入しただけでは、減価償却をできません。事業で使って初めて、減価償却ができます。そのため、決算間近に減価償却資産を購入し、事業に使わなければ、経費にできる金額は0円です。

将来の売上増加を見込んでの投資により、減価償却資産を購入する場合なら問題ありませんが、節税のための減価償却資産の購入は、止めた方が良いでしょう。

短期前払費用と未払費用の計上

節税方法としてよく用いられるものに、短期前払費用と未払費用の2つがあります。
それぞれについて見ていきましょう。

・短期前払費用
法人や個人事業主の支出の中には、会費のように、毎月継続してサービスの提供などを受ける場合に、あらかじめ1年間分などをまとめて前払いするものもあります。
例えば、1~12月が事業年度の場合で、4月に1年間の会費を12万円(月1万円)支払った場合、その年に経費になるのは4~12月までの9か月分の会費9万円です。

短期前払費用の特例とは、支払った日から1年以内にサービスなどの提供を受けるものに支払いがあった場合は、支払時に支払額の全額を経費にできるというものです。

上記の例の場合で、短期前払費用の特例を使えば、9万円ではなく12万円を経費にできます。

・未払費用
経費は、商品の購入やサービスの提供を受けたときに計上します。原則、代金の支払いが支払済か未払いなのかは、関係ありません。

しかし、大きな金額の経費でなければ、未払いのものは支払時に経費にすることも多いです。未払費用とは、これら代金の支払いが来年になるものを、今年の経費に計上することで、節税をするものです。

ここまで、短期前払費用と未払費用について見てきましたが、両者ともに計上年度は節税となります。しかし、来援以降に経費にできるものを前倒ししているだけなので、来年に影響が出てしまいます。節税をする場合は、来年のことも考えて、計画的に行う必要があります。

まとめ

法人税も所得税も所得に対して、税金が課されます。所得金額は、売上から経費を差し引いて計上するため、経費計上を増やせば、節税になります。

しかし、やみくもに経費計上をすると、損をします。それは、経費計上をするとキャッシュが減るからです。基本的に、節税額よりも経費計上によるキャッシュ減少が大きく、その結果、手持ちのキャッシュは減ることになります。経費に支出するのであれば、将来的に売上を生み出す経費に支出するようにしましょう。

また、個人事業主の場合は青色申告をすることで、青色申告特別控除(最大65万円)や赤字の繰り越しなどを使うことができ、キャッシュの減少とならない節税もできます。

節税をする場合は、節税以外の影響も考えて計画的に行いましょう。

【関連記事】:ついに「節税保険」の営業に行政処分 そもそも節税保険とは?今後は使えなくなる?

▼参照サイト

No.2100 減価償却のあらまし【国税庁】
No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合【国税庁】

中小企業オーナー、個人事業主、フリーランス向けのお金に関する情報を発信しています。

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