結婚式の「ご祝儀」には税金がかかる?結婚資金と税金について解説
現在では、式自体を簡素化し、費用をかけずに結婚式を挙げるカップルもいますが、それでも挙式にかかる費用はある程度まとまった金額となります。そのような中で頂くご祝儀はありがたいものです。今回は、結婚式でもらった「ご祝儀」にまつわる税法について解説します。
結婚式にかかる費用はどれくらい?
多様化する結婚式のスタイル
近年の結婚式は、参列者の規模や挙げる場所など、実に様々なスタイルがあることについて簡単に触れる。
日本の婚姻率は年々減少する傾向にあり、1947年には12.0%あった婚姻率も2015年には5.1%と半分以下にまで低下しています。背景にあるのは、生活スタイルの多様化により婚姻することの意義がなくなったことや、結婚や子育てにかかる負担を敬遠する傾向にあることなどが挙げられます。事実婚やシングルマザーを選択する方も増えており、少子化が加速することが懸念されています。
少子化は将来的な国力の低下を招きますので、政府としても黙って放置しておくわけにはいきません。そこで、婚姻を考えている若年層の経済的負担を減らすために「結婚・子育て資金の一括贈与に関わる贈与税の非課税措置」を創設しました。婚姻にかかる結婚費用や新居の費用、転居費用などの贈与について非課税枠を設けるなどして、婚姻時の負担を減らすことで婚姻を促進しようというものです。
結婚費用もスタイルに応じて変わる
婚姻率自体は減ってはいるものの、1件の挙式にかかる費用は下がっておらず、場合によっては300万円を超えることもあるようです。なかには結婚費用の負担増を敬遠して式自体を挙げないカップルや、本人達と親族だけのごく少人数による小規模な挙式を行うカップルもいます。
しかし、結婚式は人生の一大イベントの一つですから、費用をかけてでも思い出に残る挙式にしたいと考えるのは当然でしょう。そこで、自分達で準備しきれない部分を「ご祝儀」や「親からの資金援助」などでまかなうケースも見受けられます。
結婚費用と税金の関係について解説
結婚式の「ご祝儀」には税金がかかる?
税法の基本的な考え方は「もうけに対して課税する」というものです。結婚式とはいえ「ご祝儀」をもらえば受け取った側は「もうかる」ことになります。また、親から結婚資金の援助を受ければ「贈与」に該当しますので受け取った側はやはり儲かることになります。
いずれにしても税金が発生するように思われますが、税法には「非課税措置」というのがあり、社会通念上、一般的と認められる金品については税金がかからないとされています。
結婚式であれば通常、列席するときに「ご祝儀」を持参するのが一般的です。したがってこのようなご祝儀を受け取った場合には非課税となります。
ここでいう非課税というのは「本来税金がかかるものであるにもかかわらず、政策上の観点から税金を課さないものとした」ものをいいます。「ご祝儀」のように社会通念上、常識として受け取るものにまで税金を課税するのはいかがなものか?という理由により非課税とされているわけです。
ちなみに、結婚式のご祝儀に限らず、葬儀の際に渡すお香典やケガで入院した際の見舞金なども、同様の理由により非課税措置の対象となります。
「親からの資金援助」は贈与になる?
では、親からの資金援助はどうでしょう?
結婚費用を準備する際に、親から費用の一部、あるいは全部を援助してもらう場合があります。親から子供への資金援助であっても、通常であれば110万円を超える部分に対して贈与税が課税されます。しかし現在、政府の少子化対策の一環として創設された「結婚・子育て資金の一括贈与に関わる贈与税の非課税措置」という制度があります。これにより、結婚資金の援助に関しては「最大300万円」まで非課税とされます。
・挙式に直接かかる費用
結婚式場の会場費や料理、引き出物、衣装代などがこれに含まれます。また、事前に出す招待状や司会者に支払う報酬なども挙式に直接かかる費用に含まれます。海外で挙式を行う場合に親族等の海外渡航費を負担するケースがありますが、渡航費や宿泊費などは非課税措置の対象外となります。
・新居に入居する際の費用
婚姻後に、2人でアパートなどに入居する際にかかる家賃、敷金や礼金、共益費、不動産会社に支払う仲介手数料などがこれに該当します。なお、入居に際して買いそろえる家電や家具は含まれませんし、アパートとは別に賃借する駐車場代も含まれませんので注意してください。
・引越しする際の費用
引越しにかかった費用がこれに該当しますが、親から引越し費用を受け取った人が負担した費用だけが非課税の対象となります。したがって、パートナーの引越し費用は非課税の対象外となります。また、引越しに際し、引越し業者を使わずに自分たちでレンタカーを借りて引越したような場合に、そのレンタカー代は非課税とはならない点も注意しなければなりません。
上記に挙げたような費用は、親からの資金援助であっても贈与税の非課税対象となります。
結婚費用が課税対象となるケースも
一般的ではない「多額のご祝儀」には注意
ご祝儀が非課税とされるのは「社会通念上、一般的であると認められる範囲」です。親族関係やご祝儀を渡す方の年齢、地域性などにもよりますが、ご祝儀は多くても「5万円程度」が一般的な範囲であると考えられます。ここで例えば、100万円のご祝儀を渡したとします。結婚式の引き出物や挙式に出される料理など、挙式にかかった費用に見合っていれば別ですが、費用に見合うものでなければ一般的な範囲であるとはいえません。一般的な範囲を超えたご祝儀は、受け取った側(受贈者)に贈与税が発生します。
もし仮に、ご祝儀を受け取った際に贈与税の申告をしないで、後の税務調査で指摘された場合、贈与税の本税の他に、金額に応じた「無申告加算税」と期間に応じた「延滞税」が課税されますので注意してください。
非課税にならない結婚費用もある
結婚式にかかった費用に対する贈与はその全てが非課税となるわけではありません。最後に結婚資金の贈与のうち、非課税とならないものを列挙してみましょう。
・新婚旅行にかかった費用
海外旅行など、新婚旅行に要する費用は多額になりがちですが、挙式後に発生する費用であることから、税法上は非課税対象外として取り扱われます。類似するものとして、挙式に参加するために支出した交通費や宿泊代も非課税とはなりませんので注意してください。
・婚約指輪・結婚指輪の購入費用
婚姻にあたって婚約指輪や結婚指輪を購入することが一般的です。挙式のなかで指輪の交換をするケースもありますので、挙式に直接要する費用という見方もできますが、税法上は非課税として取り扱われます。類似する費用として、結納にかかった費用や結婚式前のエステ費用なども挙式に直接要する費用ではありませんので、非課税の対象外となります。
・婚活サービスの利用料
婚姻に結びつけるためのツールとして最近注目を浴びている「婚活サービス」ですが、これも贈与税の非課税対象とはなりません。婚活サービスは挙式に至るまでに要する費用ですから、挙式を開催するにあたって直接要する費用ではありません。
まとめ
日本の少子化問題は遠い将来の話ではなく、政府としても結婚資金の非課税措置等により婚姻率の上昇を模索しています。私たちも税制上の非課税特例があることを正しく理解して結婚資金にかかる節税を考えてみる必要があるでしょう。
Webライター/ライター
フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。
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