決算資料とは?種類や・作成目的について・投資家向けにわかりやすく解説
投資家は投資判断の際「決算資料を活用すべきだ」という意見を耳にしたことがあるかもしれませんが、具体的に決算資料がどのようなものかわからないと、投資判断材料としての活かし方がよくわかりませんよね。
そこで本記事では、決算資料の概要や種類、作成目的について、投資初心者向けにわかりやすく解説します。最後までご覧いただくことで、決算資料をどのようにして投資判断に活かせばよいかイメージしやすくなるでしょう。
決算資料とは株主総会などで使用する資料のこと
まずは「決算資料とは何か」について簡単に説明します。決算資料とは、一般的に決算説明会や株主総会での説明に使われる資料のことを指します。ただし、決算資料という法的な定義はありません。
決算資料のおもな種類と目的
決算資料には、おもに以下の4種類があります。
- 決算書
- 決算説明会資料
- 有価証券報告書
- 決算短信
以下の見出しでは、それぞれの内容と利用目的について詳しく解説します。
1.決算書:企業の財務状況を示す書類
決算資料のなかで特に重要であるのが、決算書です。決算書は、1年間の事業年度における企業の資産や負債、業績などの財務状況を第三者に公開するための計算書類です。決算書の正式名称は「財務諸表」もしくは「計算書類」となっています。
国内企業には、法人税法により決算書作成が義務付けられています。また、確定申告書を提出する際には、開示義務も求められています。
決算書の作成期限は、法人税の申告期限である「事業年度終了後2カ月以内」です。ちなみに、事業年度は企業が任意に定められますが、3月や12月を決算月としているケースが多いです。
投資家は決算書を閲覧することで、企業の財務状況が適切であるか、ひいては投資先として相応しいか判断しやすくなります。
決算書には、以下の5種類があります。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
- 株主資本等変動計算書
- 個別注記表
特に1~3を「財務三表」と呼び、経営に関する意思決定や資金管理だけではなく、確定申告時にも必要とされています。では、それぞれの概要について解説します。
1.貸借対照表
貸借対照表は、企業の資金の使い道を表したものです。例えば借入金は負債、会社の利益は純資産、不動産は資産などという風に分類されます。
投資家は貸借対照表を閲覧することで、企業の財務状況を把握し「この企業は財務が安定しているから投資しても問題なさそう」といった判断ができるようになります。
また貸借対照表は、バランスシートとも呼ばれます。
2.損益計算書
損益計算書は、一定期間における企業の経営成績を表す資料です。企業の利益と損失が明確となるため、投資判断に役立ちます。
損益計算書に記載される項目と内容は、以下の表のとおりです。
3.キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書は、企業の現金(キャッシュ)の流れを示すものです。キャッシュフロー計算書を閲覧することで、現在企業の手元にある現金の額や、どのような理由で現金が増減したのかなどがわかります。
4.株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書は、貸借対照表の「純資産の部」の変動額のうち、株主資本の各項目の変動事由を報告するものです。株主資本等変動計算書には、以下の4つの項目が記載されます。
- 資本金:株主からの出資金
- 新株予約権:事前に定められた条件で株式を取得する権利
- 資本剰余金:株主から出資されたお金のうち資本金として計上しなかった部分
- 利益剰余金:利益の積立額
5.個別注記表
個別注記表は、以下の項目を一覧にしたものです。
- 重要な会計方針に関する注記
- 貸借対照表に関する注記
- 損益計算書に関する注記等
- 今まで各計算書類に記載されていた注記
2.決算説明会資料:決算説明会で用いる資料
続いて、決算説明会資料について解説します。
決算説明会資料は、機関投資家や証券会社、報道関係者などを対象とした「決算説明会」で用いる資料です。決算説明会資料は、決算説明会開催前に発表されているため、当日は内容自体の説明よりも質疑応答やコミュニケーションをおもな目的として使われます。
投資家は決算説明会資料によって、企業の事業状況や今後の方針などがわかります。企業としても、より多くの出資を募るべく決算内容を可能な限り正確に伝えようと努めているため、投資の判断材料として役立てやすいでしょう。
ただし決算説明会資料は、書式が定められているわけではないため、企業によって見やすさが異なります。例えば、グラフや図などが豊富に使用されておりわかりやすい決算説明会資料もある一方で、多くの情報をただ文字として詰め込んだだけであまり視認性が高くないものもあります。
ちなみに、最近はインターネットを活用した決算説明会も増えているため、以前よりも参加ハードルが下がりました。
3.有価証券報告書:外部に自社の情報を開示するための書類
次に、3つめの有価証券報告書について解説します。
有価証券報告書は、決算内容や経営状況などを含む自社の情報を、外部に開示するための書類です。そもそも有価証券とは、証券取引所での売買に必要な書類のことで、具体的には株式や債券、手形、小切手などを指します。
有価証券報告書は、公認会計士または監査法人の監査が義務づけられているため、信頼性は比較的高いです。そのため、投資家が投資判断するうえで重要な書類のひとつとされています。
有価証券報告書の発行を義務付けられているのは、有価証券を発行している上場企業や、その他一部の企業です。提出先は内閣総理大臣で、事業年度終了後3カ月以内に提出する必要があると定められています。
4.決算短信:上場企業に義務づけられている書類
最後に、決算短信について解説します。決算短信は、上場企業に対して提出と開示が義務づけられている書類です。決算短信はわかりやすくいうと「決算の速報」を目的としており、おもに以下の情報を含みます。
- 連結経営成績
- キャッシュフロー状況
- 配当状況
- 業績予測
- 業績情報の要約
決算短信は、有価証券報告書よりも早く開示されるため、より早く決算内容の要点を押さえられるというメリットもあります。よって投資家は、決算短信で予測情報を得ることが多いです。
一方で決算短信は、有価証券報告書のように監査法人の監査が義務づけられていないため、信頼性では若干劣る部分があります。また、公開後も適宜修正される可能性があります。
ちなみに決算短信は、四半期ごと(年4回)提出されます。
まとめ
決算資料を正しく読めるようにすることで、より精度の高い投資判断ができるようになる可能性があります。特に決算書は重要で、内容はやや複雑ですが、大まかな内容を押さえるだけでも十分投資判断に活かせるでしょう。
フリーランスライター。学習塾勤務時代のブログ運営を通じてライティングやSEOについて学び、これらのスキルを活かして2021年に独立。専門ジャンルは金融・不動産。保有資格は宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。
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