新しい機械設備導入する前に!固定資産税の特別措置について解説

[取材/文責]山本麻衣

中小企業が新たに機械装置を導入した場合、固定資産税が3年間にわたって2分の1に軽減されることを知っていますか?
本記事では、制度の概要、期間、適用条件、手続き、対象設備などについて解説していきます。

制度の概要

人口減少や国際競争の高まりによって、中小企業の経営は近年苦しいものとなっています。そんな中小企業の生産性を向上するため、施行されたのが中小企業等経営強化法です。本記事で紹介する固定資産税の特別措置も、この中小企業等経営強化法の中で定められたものです。中小企業等経営強化法においては、中小企業が「経営力向上計画」を申請することをメインの施策の一つとしています。

「経営力向上計画」とは、自社の現状をしっかりと分析した上で、設備投資や顧客データの分析を通じた商品・サービスの見直し、ITを活用した管理会計の導入、人材育成といった自社の「経営力」を向上させる取組を応援するものです。
この経営力向上計画が認定されると、中小企業は税制や金融支援等、様々な優遇を受けることができます。
そのうちの1つが、固定資産税の特別措置です。具体的には、経営力向上計画の中で生産性を高めるために導入する設備について、固定資産税が3年間にわたって2分の1に軽減されるという制度です。

特別措置を受けるための要件

対象となる事業者

固定資産税の特別措置を受けることができるのは、以下の3つの条件を満たす中小事業者等(租特税法の中小事業者及び中小企業者)と定められています。
・資本金又は出資の総額が1億円以下の法人
・資本又は出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1000人以下の法人
・常時使用する従業員数が1000人以下の個人
これらを満たしていても、以下の場合は適用の対象となりません。
・大規模法人から2分の1以上の出資を受ける法人
・2つ以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人
ここで大規模法人とは、資本金か出資金の額が1億円超の法人、又は資本金か出資金を持たず常時使用する従業員数が1,000人を超える法人のことを指します。

適用期間

経営力向上計画が認定された事業者は、平成29年4月1日から平成31年3月31日までに生産性を高めるための設備を取得した場合、3年間にわたって固定資産税の特別措置を受けることができます。
経営力向上計画の申請から認定までは、標準的な場合で30日、長い場合で45日かかります。申請に不備があったりするとさらに時間がかかる恐れもあるため、特別措置を活用するにはスケジュールに余裕を持って行うことが必要でしょう。

対象設備

経営力向上計画において、固定資産税の特別措置の対象となる設備は、以下の条件を満たす機械装置です。

・販売開始から10年以内のモデルであること(販売開始日が、取得日の10年前の日の属する年度(1月1日~12月31日)開始の日以降であること)
・旧モデル比で生産性(単位時間当たりの生産量、精度、エネルギー効率など)が年平均1%以上向上しているもの
・一台一基の取得価額が160万円以上のもの

対象となる機械装置については、最新のモデルである必要はありません。また比較すべき旧モデルがない新製品の場合、同一メーカー内に類似する機能・性能を持つ設備があれば、その設備との比較が行われます。ただし、比較すべき旧モデルが全くない場合には、比較する指標がないため、10年以内に販売開始されたものであることのみが要件となります。

適用を受けるための手続き

固定資産税の特別措置を受けるためには、経営力向上計画の申請の際に合わせて以下のような申請が必要となります。

1. 証明書の入手

経営力向上計画策定時に設備を決定し、その設備を生産した設備メーカーを通じて工業会等による証明書を入手します。

2. 経営力向上計画の申請

経営力向上設備等の種類を記載した計画申請書とその写し(コピー)とともに、工業会等による証明書(原本)を添付して、主務大臣に計画申請、計画認定書を交付してもらいます。
なお計画申請書については、税の申告の際に必要となるため、主務大臣に提出する前に必ずコピーを取っておくことが必要です。

3. 固定資産税の申告

固定資産税の申告の際に、納税書類とともに計画認定書の写し、計画申請書の写し、工業会等による証明書の写しなどの添付書類の写しをそれぞれ自治体に提出します。

例外的な場合の注意事項

リース会社を利用する場合

リース会社を利用して設備の導入を行う際にも、固定資産税の特別措置を受けることが可能です。ただし、いくつか必要な手続きが増えるので注意が必要です。

具体的には、工業会等による証明書の入手や、固定資産税の申告はリース会社に代行してもらうことになります。このため先ほどの手続における「1. 証明書の入手」では、設備メーカーではなくリース会社に証明書の依頼をしなければなりません。また「2. 経営力向上計画の申請」でも、証明書に加えてリース会社が作成した見積書や軽減額計算書を添付する必要があります。「3. 固定資産税の申告」はリース会社が代行しますが、その前にリース会社にも計画認定書の写しと計画申請書の写しを送付しておく必要があります。

経営力向上計画の提出前に設備を導入した場合

経営力向上計画に位置づける設備は、計画策定後に取得することが原則ですが、設備を取得した後に経営力向上計画を提出することも可能です。

その場合は、設備取得日から60日以内に経営力向上計画が受理される必要があります。この場合、固定資産税の賦課期日が1月1日であることから、12月31日までに計画が認定されなければ減税期間が1年少ない2年間となってしまいます。申請手続きには同様に時間がかかるため、余裕をもって申請を進めることが重要です。

☆ヒント
経営力向上計画を利用すると、固定資産税の特別措置を受けることができます。しかし、ここまで見てきた通りその申請には多くのステップがあり、一つ一つの手続きも複雑なものとなっています。余裕をもったスケジュールで申請を行うことためには、まずは税務のプロである税理士に相談するのが安心です。
また固定資産税の特別措置では、申請が遅れると減税期間が1年少なくなってしまう可能性もあります。固定資産税の申告をすべて問題なく行うためには、手間と確かな知識が必要不可欠です。制度を正しく利用し、適切な節税を行うためにも、まずは税理士に相談し、税理士のもとで会計処理を行うことを、強くお勧めします。

まとめ

経営力向上計画の制度を利用すると、新たに導入した設備に関して、固定資産税の特別措置を受けることが可能です。ただし、その手続きや適用条件には複雑な面も多く、適切な申請をしなければ減税措置を正しく受けることができなくなってしまいます。
経営力向上計画を利用し、固定資産税の特別措置を受ける際には、税務のプロである税理士に相談するなどプロのサポートを受けつつ、正しい手続きを心がけましょう。

東京大学卒。現、同大学院所属。
学生起業、海外企業のインターンなどの経験を経て、外資系のコンサルティング会社に内定。
自分の起業の経験などを踏まえてノウハウなどを解説していきます。

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