グレーゾーン解消制度とは?どうやって利用するの?メリットも解説

新規事業を始めるときに、法規制の対象でないことを確認することは重要です。確認するのに利用できる制度として、「グレーゾーン解消制度」があります。今回はグレーゾーン解消制度について、利用方法やメリットを見ていきましょう。類似の制度も紹介しますので、新規事業を始めるという人は参考にしてください。

グレーゾーン解消制度とは?

新規事業を始めるときに気になるのが、法律の規制です。あとから規制対象であるとわかれば、事業を続けられなくなることもあります。あらかじめ規制の対象でないと確認する作業が欠かせません。違法と判断されて、ビジネスモデルを変更したケースも実際にあります。
新規事業についての法規制の適用有無を前もって確認できる制度が、グレーゾーン解消制度です。2014年に施行された「産業競争力強化法」に基づいて設けられました。グレーゾーン解消制度では、法規制の適用の有無を、規制を所管する省庁(規制所管省庁)に確認できます。原則、1カ月以内に回答を得られます。
わかりやすく、 グレーゾーン解消制度を利用した実際の事例を見てみましょう。例えば以下のケースがあります。

【賃金の支払いを代行するサービス】

従業員への賃金の支払いを使用者(企業)に代わって行うサービスにおいて、グレーゾーン解消制度が利用されました。労働基準法が定める「賃金直接払いの原則」「賃金毎月1回以上定期日払いの原則」に違反しないかを確認しています。結果として、違反するものではないと判断されました。

【前眼部撮影用医療機器の販売・貸与のサービス】

スマートフォンのカメラ部分に取り付ける前眼部撮影用医療機器の販売と貸与のサービスを考える企業も、グレーゾーン解消制度を利用しています。機器を利用すれば、看護士など医師以外でも前眼部の撮影が可能になるサービスです。医師以外の人物が撮影することが医師法の「医業」に該当するか確認をしました。前眼部撮影用医療機器を使用方法に沿って使用するのであれば、医療行為には該当しないという結果が出ています。

グレーゾーン解消制度を利用するときの流れ

実際にグレーゾーン解消制度を利用したいときに、どのような流れで行えばいいのでしょうか。具体的に、以下の流れに沿って利用してください。

  • 照会書を作成する
  • 照会書を事業所管省庁に提出する
  • 事業所管省庁から規制所管省庁に照会書を送付してもらう
  • 事業所管省庁を通じて回答結果が通知される

 

照会書は経済産業省の公式サイトからダウンロードできますので、確認してみてください。また、どの省庁が事業を所管しているかわからない人もいるでしょう。その場合、経済産業省に問い合わせれば教えてもらえます。

なお、照会書には主に以下の項目を記載する必要があります。

  • 事業活動の概要と目標
  • 事業活動により生産性の向上や新しい需要が見込まれる理由
  • 事業活動の内容
  • 事業活動の実施時期
  • 事業活動の場所
  • 確認事項
  • その他

グレーゾーン解消制度を利用するメリット

ここで、グレーゾーン解消制度を利用するメリットを紹介します。主に以下のメリットがあげられます。

メリット➀安心して事業に取り組める

新規事業の準備には時間や労力が必要ですし、コストも大きくかかります。時間・労力・コストをかけて進めていた事業が、あとから規制対象であるとわかるケースも少なくありません。その場合、事業計画を最初から見直す必要がでてしまいます。
あらかじめ法規制の有無について確認しておけば、安心して新規事業の準備に取り組めます。

メリット②顧客に対してアピールできる

グレーゾーン解消制度を利用すれば、適法な事業の証明になります。顧客に対してアピールになるでしょう。法規制の対象外であることを確認後、自社サイトなどで公表し顧客に伝える企業も増加傾向です。さらに利用すると話題性が生まれ、メディアで取り上げられる可能性もあります。新規事業のPRになり、顧客の増加が見込まれるのもメリットです。

メリット➂回答を公表しないこともできる

グレーゾーン解消制度は、2018年以降、回答が公表されることになっています。事業計画書などが公表されてしまうと競合他社に模倣されてしまう可能性がありますが、同意がある場合に限り公表される仕組みです。競合に知られないように事業を進めることができます。安心して制度を利用できるのも、メリットの1つと言えるでしょう。

グレーゾーン解消制度と似ている制度

グレーゾーン解消制度には、いくつか似た制度があります。混乱してしまわないように、似た制度の概要を確認しておきましょう。

グレーゾーン解消制度と似ている制度➀新事業特例制度

グレーゾーン解消制度と似ている制度としてまず説明したいのが、「新事業特例制度」です。新事業特例制度とは、新規事業を始める事業者が、支障となる規制の特例措置の適用を認める制度を言います。グレーゾーン解消制度とともに、産業競争強化法に基づいて創設された制度になります。特例措置の活用が認められると、その事業者に対しての規制が緩和されます。規制によって実施できなかった実証実験などもしやすくなるでしょう。ただし、規制の特例が常に認められるわけではありません。また、条件が付けられる場合もあります。グレーゾーン解消制度で規制が適用されると判断された場合も利用できる制度ですから、方法の1つとして検討してみてください。
新事業特例制度では、まず、特例措置の要望を出す手続きを行います。その後、特例措置を活用して安全性があることを立証したあと規制が緩和される流れです。

グレーゾーン解消制度と似ている制度②規制のサンドボックス制度

規制のサンドボックス制度とは、ドローンやAIなどの革新的技術を事業化する目的で、現行の規制を一時的に停止したり見直したりする制度のことです。企業が実施した実証実験の結果をもとに、政府によって規制の見直しや変更が行われます。サンドボックス制度の「サンドボックス(sandbox)」は、英語で「砂場」を意味します。子どもが失敗を気にせず砂遊びをするように、規制に捉われずに革新的技術について試行錯誤できるようにと制度の名前が決められました。AIなどの革新的技術を使ったビジネスは、規制のために事業化が難しい傾向にあります。この規制のサンドボックス制度が導入されたことで、事業化がしやすくなりました。

まとめ

今回は、グレーゾーン解消制度について見てきました。グレーゾーン解消制度を利用すれば、安心して新規事業の準備を進めることができます。時間や労力、コストをかけて準備してきた事業を途中で変更しなければならないという事態を避けるために、新規事業を始める人は、ぜひ制度の利用を検討してみてください。

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