個人事業主が資産をリースする場合の税金と会計処理方法

[取材/文責]長谷川よう

売上をあげるためには、車や機械、設備など様々な資産が必要になります。資産を手に入れる手段には購入とリースがあり、資産を購入した場合は固定資産になります。では、資産のリースをした場合はどうなるのでしょうか。ここでは、個人事業主が資産をリースする場合の税金と会計処理方法について解説します。

リース契約の3つの種類

ひとくちにリース契約といっても、大きく「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」の2つに分かれます。ファイナンスリースとオペレーティングリースの違いは、途中解約と修繕費などの負担です。途中解約できず、かつ修繕費などの費用を自己負担する契約のリースをファイナンスリースといい、それ以外の契約のリースをオペレーティングリースといいます。

 

また、ファイナンスリースは所有権が移転するかどうかで、さらに「所有権移転ファイナンスリース」と「所有権移転外ファイナンスリース」に分かれます。つまり、会計上は所有権移転ファイナンスリース、所有権移転外ファイナンスリース、オペレーティングリースの3種類のリース契約が存在することになります。

3つのリース契約の会計処理方法

リース契約には、所有権移転ファイナンスリース、所有権移転外ファイナンスリース、オペレーティングリースの3つがありますが、それぞれで会計処理方法が異なります。そこで、ここではそれぞれの会計処理方法を詳しく見ていきましょう。

所有権移転ファイナンスリースの会計処理

所有権移転ファイナンスリースとは途中解約できない契約で、かつ修繕費などの費用を自己負担する契約のリースです。しかも、リース期間経過後には、所有権がリース会社から借主に移転します。これは、普通に資産を購入し、代金を割賦で支払っているのと同じです。

 

そこで、所有権移転ファイナンスリースの会計処理は、資産を購入したのと同じ処理を行います。

 

例)年度の初月に120万円の資産をリース契約した。毎月の支払は元本1万円、利息1千円である。リース期間終了時には、資産の所有権は移転する。
なお、リース期間は10年、減価償却は定率法で償却率は0.250である。

 

・リース契約時の仕訳

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
リース資産 1,200,000円 リース債務 1,200,000円 資産のリース

 

リース契約をした場合は、リース料の総額を固定資産の「リース資産」と負債科目の「リース債務」を使って処理します。

 

借方勘定科目は、リース資産の種類に応じて「車両運搬具」や「機械装置」などの科目で処理しても問題ありません。

 

貸方勘定科目は、「未払金」や「未払費用」など、別の負債科目で処理しても問題ありません。

 

・毎月の支払の仕訳

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
リース債務 10,000円 普通預金 11,000円 リース料
支払利息 1,000円 利息部分

 

毎月の支払い時には、リース債務を支払った処理を行います。その際には、元本と利息を分けて処理する必要があります。

 

・減価償却費(決算)の仕訳

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
減価償却費 300,000円 リース資産 300,000円 減価償却費

 

所有権移転ファイナンスリースの会計処理は、資産を購入したのと同じ処理を行いますが、これは、減価償却費の計算でも同じです。この例の場合では、決算時に、定率法で処理します。

 

減価償却費=リース料総額120万円×償却率0.250=30万円

所有権移転外ファイナンスリースの会計処理

所有権移転外ファイナンスリースも途中解約できない契約で、かつ修繕費などの費用を自己負担する契約のリースです。所有権移転ファイナンスリースと違うところは、リース期間経過後に、所有権がリース会社から借主に移転しないことです。

 

そこで、リース契約時の仕訳や毎月の支払の仕訳は、所有権移転ファイナンスリースと同じ処理を行い、減価償却費(決算)の仕訳のみ異なる処理を行います。所有権移転ファイナンスリースと同じ例で、仕訳を確認しましょう。

 

例)年度の初月に120万円の資産をリース契約した。毎月の支払は元本1万円、利息1千円である。リース期間終了時には、資産の所有権は移転しない。残価保証額はないものとする。なお、リース期間は10年である。

 

・リース契約時の仕訳

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
リース資産 1,200,000円 リース債務 1,200,000円 資産のリース

 

リース契約をした場合は、リース料の総額を固定資産の「リース資産」と負債科目の「リース債務」を使って処理します。

 

借方勘定科目は、リース資産の種類に応じて「車両運搬具」や「機械装置」などの科目で処理しても問題ありません。

 

貸方勘定科目は、「未払金」や「未払費用」など、別の負債科目で処理しても問題ありません。

 

・毎月の支払の仕訳

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
リース債務 10,000円 普通預金 11,000円 リース料
支払利息 1,000円 利息部分

 

毎月の支払い時には、リース債務を支払った処理を行います。その際には、元本と利息を分けて処理する必要があります。

 

・減価償却費(決算)の仕訳

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
減価償却費 120,000円 リース資産 120,000円 減価償却費

 

所有権移転外ファイナンスリースの減価償却費の計算は「リース期間定額法」で処理します。リース期間定額法とは、リース資産総額をリース期間で月数按分して、その年度の減価償却費を計算する方法です。この例の場合では、次のように計算します。

 

減価償却費=リース料総額120万円÷120か月×12か月=12万円

オペレーティングリースの会計処理

オペレーティングリースは途中解約ができたり、修繕費などの費用の負担の必要がないなど、いわゆる一般にリースと呼ばれているものです。資産の購入とは異なるため、支払いの都度、支払金額を経費にすることができます。所有権移転ファイナンスリースと同じ例で、仕訳を確認しましょう。

 

例)年度の初月に120万円の資産をリース契約した。毎月の支払は元本1万円、利息1千円である。このリースは、オペレーティングリースである。なお、リース期間は10年である。

 

・リース契約時の仕訳

仕訳不要

 

・毎月の支払の仕訳

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
リース料 11,000円 普通預金 11,000円 リース料

 

・減価償却費(決算)の仕訳

仕訳不要

 

オペレーティングリースの場合は、リース契約時と減価償却費の仕訳は不要です。毎月の支払の仕訳では、元本と利息を分ける必要はありません。

個人事業主はリースとローン購入どちらがお得?

ここまでは、リース取引の処理を見てきました。では、個人事業主ではリースとローン購入どちらがお得なのでしょうか。

 

結論からいうと、リースとローン購入にはそれぞれメリットがあり、自分に合ったメリットがある方が得になります。そこで、ここではリースとローン購入それぞれのメリットを見ていきましょう。

資産をリースにする場合のメリット

資産をリースにする場合のメリットには、次のものがあります。

・コストがかからない

資産を購入するためには、頭金が必要であったり、メンテナンスの費用が必要であるなど、様々なコストが必要です。しかし、リースの場合は頭金が不要です。また、オペレーティングリースの場合は、メンテナンスの費用も不要のため、コストは低くなります。

・支払額が経費になる

資産を購入した場合は、支払額は経費にならず、毎年、減価償却が必要になります。ただし、オペレーティングリースの場合は、支払額が経費になるため、節税効果が高くなります。

資産をローンで購入する場合のメリット

資産をローンで購入する場合のメリットには、次のようなものがあります。

・資産が自分の所有になる

資産をローンで購入する場合は、資産が自分の所有になるため、仕事に使いやすいように、自由にカスタマイズすることができます。

・中古資産の場合は節税効果が高い

実は、中古資産の場合は、新品に比べて償却年数が短いです。例えば、同じ120万円の資産でも、新品の場合は5年で償却するものが、中古の場合は3年で償却できます。単純計算5年だと毎年24万円の償却が、中古の場合だと40万円の償却ができます。

 

中古資産の場合、リース料の支払いに比べて1年で経費になる金額が高いケースもあり、その場合は、節税効果が高くなります。

まとめ

個人事業主が資産をリースする場合、リースの契約には、所有権移転ファイナンスリース、所有権移転外ファイナンスリース、オペレーティングリースの3つがあり、それぞれで処理方法が異なります。リース契約がどの契約になるのかを見極め、正しく会計処理を行いましょう。

 

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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