「新型コロナ」に感染したかも!?会社を休んだら、給料はもらえるの?

[取材/文責]マネーイズム編集部

新型コロナウイルス(COVID-19)が世界で猛威を振るっています。日本国内でも、横浜港に到着したクルーズ船の乗客を含め、死者は35人に上りました(2020年3月16日現在)。政府の要請により、小中高などの一斉休校やイベント自粛、さらには私権制限を含む緊急事態宣言の発令が可能となる「特別措置法」の成立と、社会、経済への影響も拡大するなか、気になるのは「お金」のこと。発熱して咳も出る。会社に連絡したら「出社に及ばず」と言われた。例えばこんなとき、給料は補償されるのでしょうか? 「新型コロナとマネー」について、ケース別に整理しました。

熱があるから会社を休んだら?

感染拡大を防ぐため、政府はテレワーク(ICTなどを活用して、出社せずに自宅などで働くこと)の推進を呼びかけています。つまり、オフィスでの勤務という、仮に新型ウイルスの感染者がいた場合に、その人との「濃厚接触」が生じやすい環境を極力つくらないようにしましょう、ということ。まして、その「感染」が疑われるような症状がある場合には、「頼むから、治るまで出社はしないでくれ」ということになるのではないでしょうか。
 
そういうかたちで会社を休んだ場合の給料がどうなるか? ですが、まず前提として、

(1)年次有給休暇は自由に取れます

「有給休暇」というのは、その名の通り「給料が支払われる休暇」。これは、労働者の求めがあった場合には、使用者が必ず与えなくてはならないことになっています。病気だろうがバカンスだろうが、理由は問いません。ですから、新型コロナかどうかに関わらず、「熱があるので、有休を取らせてください」というあなたの申請を、会社は拒否することはできません。ただし、当然のことながら、休んだぶん有休は消化されていきます。おかげそのせいで、バカンスに行けなくなる可能性があります。
 
ちなみに、日本郵政が社員に対して、あとで説明する学校の一斉休校に伴って国が新設した助成制度の利用より有給休暇を優先するように、という指示を出して問題になりました。今述べたように、有給休暇は理由を問わず取得できる労働者の権利ですから、会社が使い方を指示するのは違法です。同社も後に撤回しました。

(2)発熱した。コロナかどうかわからないけれど、念のため自主的に休む
   →給料は補償されません

熱があっても十分仕事はできるのだけど、会社に行って万が一同僚にウイルスを感染させてしまったら、申し訳ない。だから休みます――。このような場合、給料は?
 
残念ながら、会社に支払い義務が生じる「休業手当」の対象にはなりません。つまり、原則として、休んだ日の給料が支払われることはありません。発熱は、新型以外の「普通の」かぜやインフルエンザかもしれないので、この段階で手当てを受け取ることには、合理性が認められないのです。
 
この場合、会社に任意で設けられた有給の病気休暇制度などがあれば、そのフォローを受けられる可能性があります。就業規則を確認しましょう。
 
では、検査の結果、確かに新型コロナウイルスに感染していたことが分かり、会社を休むことになった場合は、どうなるのでしょう?

(3)新型コロナ「陽性」が発覚。休まざるを得なくなった
   →やっぱり給料は出ません

新型コロナウイルス感染症が指定感染症に指定された結果、感染が認められた場合には、都道府県知事は就業制限を行うことができます。これに従って休む場合、やはり「休業手当」は支給されません。手当は、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当する場合に支払われる、とされているからです。
 
ただし、(2)の場合も含めて、被用者保険(※)に加入している人は、要件を満たせば、傷病手当金の支払いを受けることができます。具体的には、「療養のために労務に服することができなくなった日から、直近12ヵ月の平均の標準報酬日額の2/3」が保障されることになっていますから、加入する保険者健康保険組合などに確認するようにしてください。

(4)「発熱があったら休むように」という会社の指示に従って休んだ
   →休業手当支給対象です

このように、経営者側の自主的判断で休業させるのは、「使用者の責めに帰すべき事由」に該当します。ですから、上のケースとは違い、休業手当をもらうことができます。なお、話してきた休業手当は、「平均賃金の100分の60以上」と定められています。

※被用者保険
会社に雇用されている人が加入する公的保険。健康保険、厚生年金保険、介護保険など。

【関連記事】:新型コロナで会社を休んでも傷病手当金がもらえる!傷病手当金の税金とは

会社が休業したら? 労災の適用はあるの?

(5)会社の事業がストップし、休業しなくてはならなくなった
   →休業手当の支給は、ケースバイケース

すでに起こっていますが、新型ウイルス感染症の影響で、会社の事業自体が休止に追い込まれる可能性があります。そのような場合には、給料の補償はどうなるのでしょうか?
 
このケースでも、事業の休止が「使用者の責めに帰すべき事由」かどうかが問題になります。そうであれば、会社には休業手当を支払う義務が生じます。他方、不可抗力による場合には、労働者が手当を受け取ることはできません。ウイルスの蔓延が「不測の事態」であることを考えると、「経営責任」を問うのは、結構ハードルが高いかもしれません。

(6)仕事で新型コロナウイルスに感染した
   →労災保険給付の対象です

なお、新型コロナウイルス感染症を発症し、それの原因が業務や通勤であることが認められるときには、労災保険給付の対象になります。該当する可能性がある場合には、事業所を管轄する労働基準監督署に相談しましょう。

「臨時一斉休校」に伴う助成金を受け取れる要件は?

政府は、新型ウイルスの流行防止策として、小中高校などの一斉臨時休校を要請しました。これに伴って、対象になった教育機関のうち、小学校や特別支援学校、幼稚園、保育園、認定こども園などに通っていた子どもを世話するために、会社を休まなくてはならなくなった保護者は、賃金助成などを受けられることが決まっています。
 
正確には、該当する労働者に対して、最初に説明した年次有給休暇とは別に「有給の休暇」を取得させた事業者に、そのぶんを国が補助します、という制度が新設されました。賃金支払い額の全額が補助されますが、1日1人当たり8,330円という上限が設けられています。労働者は、有給休暇を取得した場合に支払われる賃金と同額を、受け取ることができます。
 
対象は、①新型コロナウイルス感染症に関する対応として臨時休業をした小学校などに通う子ども、②新型コロナウイルスに感染した、ないし感染した恐れのある小学校などに通う子ども――の世話を、保護者として行うことが必要となった労働者です。正規、非正規は問いません。
 
「保護者」とは、親権者、未成年後見人、里親、祖父母など「子どもを現に監護する者」を指しますが、事業者が有給休暇の対象とする場合には、子どもの世話を一時的に補助する兄弟やおじ、おばといった親族も含まれます。
 
なお、この臨時休校に伴う補償は、当初は給与所得者限定で、フリーランス、自営業者などは対象外でした。しかし、追加の緊急対応策で、①個人で就業する予定だった場合、②業務委託契約などに基づく業務遂行に対して報酬が支払われており、発注者から一定の指定を受けているなどの場合――には、就業できなかった日数に応じて、1日4,100円の支給が発表されました。これについても、「サラリーマンの半額に過ぎない」という批判があります。
 
なお、助成は20年の3月31日までが対象となっており、申請期間は今日18日から6月30日、申請書の提出先は学校等休業助成金・支援金受付センターまで。

まとめ

新型コロナウイルス感染症に関連して休みを取っても、原則として給料は補償されません。一方、状況によっては、新たにできた助成などの制度を利用することができるかもしれません。自分が対象になっていないかを調べるとともに、今なお流動的な情報をこまめにチェックするようにしましょう。

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