エコカー減税縮減?車体課税の見直しについて解説
自動車の購入や所有に対して、車体課税と呼ばれる税金が課せられています。事業用の車に関しても、自家用車とは額が異なるものの、車体課税が課せられます。車体課税において、環境にやさしい自動車の購入を促すために免税や減税をする制度が、エコカー減税やグリーン化特例です。今回はこれらの制度に関して、平成29年度改正によって変更が加えられた適用条件や適用期間について解説します。
自動車に関する税の種類
自動車の購入や所有に関する税は、以下のような種類に分かれています。
自動車税、軽自動車税
毎年4月1日時点に自動車を所有している者に対して課税される税金です。新規購入時には、その翌月から年度末までの月数に応じた額の支払いが必要で、翌年度からは毎年1年分支払うこととなります(軽自動車税は翌年度からの支払いのみ)。自動車の種類や用途によって額が異なります。
自動車重量税
新規登録時(購入時)と車検のたびに、課税される税金です。新規登録時には、1回目の車検までの年数分(1回目の車検が3年後であれば3年分)、車検の際には次の車検までの年数分(2年ごとに車検が行われる場合には2年分)を支払います。
自動車取得税
自動車の購入時に、購入者に対して課税される税金です。自動車の種類や用途によって額が異なります。
エコカー減税とは
エコカー減税とは、自動車重量税と自動車取得税について、免税や減税を行う制度です。それぞれ解説します。
自動車重量税
平成29年度の改正では、適用期間は以下の通り延長されました。
適用期間:平成29年5月1日~平成31年4月30日
適用内容:適用期間中に新車新規登録または車検を行った場合、特例措置が適用
また、適用条件や軽減率は、以下の通り段階的に基準が引き上げられることとなりました。
改正前 | 改正後 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
H29.5からH30.4 | H30.5からH31.4 | |||||||
対象車 | 初回車検 | 2回目 車検 |
初回車検 | 2回目 車検 |
初回車検 | 2回目 車検 |
||
電気自動車等 | 免税 | 免税 | 免税 | 免税 | 免税 | 免税 | ||
ガソリン車等 | 平成32年度 達成基準 |
+50%達成 | 免税 | 免税 | 免税 | 免税 | 免税 | 免税 |
+40%達成 | 免税 | 免税 | 免税 | 免税 | 免税 | |||
+30%達成 | 免税 | 免税 | 免税 | 75%軽減 | ||||
+20%達成 | 免税 | 免税 | 75%軽減 | 75%軽減 | ||||
+10%達成 | 75%軽減 | 50%軽減 | 50%軽減 | |||||
達成 | 50%軽減 | 25%軽減 | 25%軽減 | |||||
平成27年度 達成基準 |
+10%達成 | 25%軽減 | 25%軽減 | 本則税率 | ||||
+5%達成 | 25%軽減 | 本則税率 | ||||||
達成 | 本則税率 |
・電気自動車等とは、電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車、クリーンディーゼル車、天然ガス自動車を指しています。
・ガソリン車等とは、改正前ではガソリン車及びハイブリッド車、改正後ではガソリン車、ハイブリッド車、及びLPG車を指しています。
・ガソリン車等は、いずれも平成17年排出ガス基準75%低減車又は平成30年排出ガス基準50%低減車に限ります。
自動車取得税
平成29年度の改正では、適用期間は以下の通り延長されました。 適用期間:平成29年4月1日~平成31年3月31日 適用内容:適用期間中に新車新規登録を行った場合、特例措置が適用 また、適用条件や軽減率は、以下の通り段階的に基準が引き上げられることとなりました。
改正前 | 改正後 | ||||
---|---|---|---|---|---|
H29 | H30 | ||||
対象車 | |||||
電気自動車等 | 非課税 | 非課税 | 非課税 | ||
ガソリン車等 | 平成32年度 達成基準 |
+40%達成 | 非課税 | 非課税 | 非課税 |
+30%達成 | 非課税 | 非課税 | 80%軽減 | ||
+20%達成 | 非課税 | 60%軽減 | 60%軽減 | ||
+10%達成 | 80%軽減 | 40%軽減 | 40%軽減 | ||
達成 | 60%軽減 | 20%軽減 | 20%軽減 | ||
平成27年度 達成基準 |
+10%達成 | 40%軽減 | 20%軽減 | ||
+5%達成 | 20%軽減 |
・電気自動車等とは、電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車、クリーンディーゼル車、天然ガス自動車を指しています。
・ガソリン車等とは、改正前ではガソリン車及びハイブリッド車、改正後ではガソリン車、ハイブリッド車、及びLPG車を指しています。
・ガソリン車等は、いずれも平成17年排出ガス基準75%低減車又は平成30年排出ガス基準50%低減車に限ります。
グリーン化特例
グリーン化特例とは、自動車税、軽自動車税について免税、減税を行う制度です。それぞれ解説します。
自動車税
平成29年度の改正では、適用期間は以下の通り延長されました。 適用期間:平成29年4月1日~平成31年3月31日 適用内容:適用期間中に新車新規登録等を行った場合に限り、当該年度の翌年度分について特例措置が適用 また、適用条件や軽減率は、以下の通り段階的に基準が引き上げられることとなりました。
対象車 | 改正前 | 改正後 | ||
---|---|---|---|---|
電気自動車等 | 75%軽減 | 75%軽減 | ||
ガソリン車等 | 平成32年度達成基準 | +30%達成 | - | 75%軽減 |
+20%達成 | 50%軽減 | - | ||
+10%達成 | 75%軽減 | 50%軽減 | ||
平成27年度達成基準 | +20%達成 | 50%軽減 |
・電気自動車等とは、電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車、クリーンディーゼル車、天然ガス自動車を指しています。
・ガソリン車等とは、改正前ではガソリン車及びハイブリッド車、改正後ではガソリン車、ハイブリッド車、及びLPG車を指しています。
・ガソリン車等は、いずれも平成17年排出ガス基準75%低減車又は平成30年排出ガス基準50%低減車に限ります。 ただし、グリーン化特例では、自動車税について重課も行われることに注意が必要です。具体的には、以下の基準を満たした自動車に対し、15%程度の重課が行われます。
・ガソリン車、LPG車:新車新規登録等から13年を過ぎている場合
・ディーゼル車:新車新規登録等から11年を過ぎている場合 なお、電気自動車、燃料電池自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車、ガソリンハイブリッド自動車、一般乗合バス及び被けん引車については、重課の適用外となります。また、バス(一般乗合バスを除く)及びトラック(被けん引車を除く)についても、10%程度の重課となります。
軽自動車税
平成29年度の改正では、適用期間は以下の通り延長されました。 適用期間:平成29年4月1日~平成31年3月31日 適用内容:適用期間中に初めて車両番号の指定を受ける減税対象車(三輪以上の軽自動車)を取得する場合に限り、当該年度の翌年度分について特例措置が適用 また、適用条件や軽減率は、以下の通り段階的に基準が引き上げられることとなりました。
対象車 | 改正前 | 改正後 | ||
---|---|---|---|---|
電気自動車等 | 75%軽減 | 75%軽減 | ||
ガソリン車等 | 平成32年度達成基準 | +30%達成 | - | 50%軽減 |
+20%達成 | 50%軽減 | - | ||
+10%達成 | - | 25%軽減 | ||
達成 | 25%軽減 |
・電気自動車等とは、電気自動車、天然ガス自動車を指しています。
・ガソリン車等とは、改正前ではガソリン車及びハイブリッド車、改正後ではガソリン車、ハイブリッド車、及びLPG車を指しています。
・ガソリン車等は、いずれも平成17年排出ガス基準75%低減車又は平成30年排出ガス基準50%低減車に限ります。
自動車税と同様に、グリーン化特例では、軽自動車税についても重課が行われることに注意しましょう。具体的には、初めて車両番号の指定を受けてから13年を経過した三輪以上の軽自動車に対し、20%程度の重課が行われます。なお、電気自動車、燃料電池自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車、ガソリンハイブリッド自動車及び被けん引車については、重課の適用外となります。
エコカー減税、グリーン化特例を上手に利用するためには?
エコカー減税、グリーン化特例を活用する上での注意点について解説します。
エコカー減税の対象となる車の方が、燃費がいいとは限らない
エコカー減税やグリーン化特例においては、基準として平成32年度達成基準や平成27年度達成基準が設定されています。これらは、自動車の重量に応じて燃費の基準値を定めているものなので、必ずしもこの基準における評価が高い自動車の方が、燃費がいいとは限りません。使用目的と減税率を考慮し、目的にあった自動車を選ぶことが必要です。
自動車税は、自動車取得税や自動車重量税と異なりすぐに減税の対象となるものではない
エコカー減税は、自動車取得税、自動車重量税に対して適用されるため、購入時や新規登録時に減税が行われます。一方で、グリーン化特例は、自動車税に対して適用されるため、購入した翌年度に減税が行われます。このため、購入費用の節約というよりも、ランニングコストの節約として捉える必要があります。
免税や減税だけでなく、重課にも注意が必要
自動車税、軽自動税の制度説明の際にも触れましたが、グリーン化特例では、免税や減税だけでなく、重課の規定もあることに注意しましょう。不必要な課税を受けることのないよう、見直してみることも重要です。
まとめ
自動車の購入や維持には多くの費用がかかりますが、エコカー減税やグリーン化特例の制度をうまく利用することによって、節税が可能となります。正しい知識のもとで、用途にあった自動車選びを心がけましょう。
慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。
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