ビジネスで使うクレジットカードの「会計」はここに注意!

[取材/文責]マネーイズム編集部

個人事業主でもサラリーマンでも、仕事でクレジットカードを使うことは、珍しくありません。現金を持ち歩かないで済むうえに、今はポイント付与のサービスも充実しています。ただし、それだけに、現金決済とは違う会計処理が必要になることもあります。個人事業主が持っているカードの年会費は、経費になるのか? ポイントを使って会社の備品を購入したら、どう処理すればいいの? あらためて考えてみると、意外に「あれ?」と感じる“クレカの会計”について、解説します。

プライベート兼用のカード。年会費は経費になる?

社員に会社のクレジットカードを渡し、出張旅費などの経費を支払ってもらうのは、もう普通のこと。インターネットで事業に必要なものを購入しようと思ったら、カードは必需品とも言えます。便利でお得なクレジットカードですが、会計処理の際には、ちょっと迷いそうなことも。

 

例えば、カードの年会費は、経費になるのでしょうか? 経費(正確には「必要経費」)とは、「事業の所得を得るために必要な支出」のこと。会社が事業に関する支出のために作って利用する法人カードであれば、その年会費は当然この経費に該当し、所得から差し引くことができます(その分、節税になります)。

 

一方、個人事業であっても、「仕事専用」が明確なカードであれば、同様です。今は、個人でも作れる法人カード(事業内容なども含めた個人に対する与信による「ビジネスカード」)もあります。

 

個人事業主の場合、プライベートの支出も仕事関係も1枚のクレジットカードを使っているという人も少なくないのでは? その年会費は、どうなのでしょう? この場合、もちろん年会費の全額を経費にすることはできませんが、基本的に「仕事に使った金額分」については、経費計上が可能なのです。事業関連の支出が全体の60%あったなら、年会費の60%は経費にしてOK。こうした経費計上のやり方を「家事按分」といいます。

ポイントで「事業用の買い物」をしたときの会計処理は?

現金とクレジットカード決済の大きな違いは、後者には基本的に使用の度にポイントが付き、次回以降使うことができること。実質的な「値引き」なのですが、そのポイントを事業用に使った場合、会計処理をどう考えればいいのかも、引っかかるところです。

事業で貯めたポイントを事業で利用。その会計処理には、2つの方法がある

実は、この場合の会計について、「こうしなさい」というルールは明確化されていないのです。一般的には、次の2つの方法で処理することになりますが、どちらでも最終的な所得や納税額は変わりません。

 

  • ①ポイント=「収入」と考える
    事業用の支出を現金とポイントで行った場合、ポイント分を「収入」とみなして処理します。例えば10万円の支出があって、ポイントを3万円分使ったら

     勘定科目  金額  勘定科目  金額
     ○○費  100,000  現金  70,000
     雑収入  30,000

     となります。

  • ②ポイント=「値引き」と考える
    ポイント分を「値引きされた金額」とみて、最初から差し引いた支出額を計上します。今の例だと

     勘定科目  金額  勘定科目  金額
     ○○費  70,000  現金  70,000

    です。ポイント使用分は、記載しなくてOK。仮に全額をポイントで決裁した場合には、仕訳自体が不要になるのです。なお、決済をクレジットカードで行ったときには、①,②の「現金」は「未払金」となります。

 

いずれにしても、これらの場合、ポイント利用分を経費に計上することはできません。つまり課税対象になるわけです。

個人がプライベートの買い物で貯めたポイントを、仕事の買い物に使った

特に個人事業主の場合、こうしたことがあり得ます。結論を言えば、この場合のポイント使用分については、経費になります。さきほどと同じように、10万円の支出をして、そのうち3万円をポイントで支払ったとしましょう。この場合は

勘定科目 金額 勘定科目 金額
○○費 100,000 現金
(クレジットカードであれば「未払金」)
70,000
事業主借 30,000

という仕訳になります。「事業主借」とは「事業主から借りる」、すなわち「個人事業主が事業とは関係のないお金を事業に入れること」です。プライベートで貯めたポイントは、事業とは無関係な収入ですからこれに該当し、事業においては課税対象になりません。結果的に、10万円を丸々経費にすることができるのです。

 

ちなみに、事業での支出に対して付与されたクレジットカードのポイント利用分を事業に使えば、「事業所得」になります。ですから、さきほど説明したように、事業における課税対象ということになります。

 

では、今の例のようにプライベートで貯めたポイントを使った場合、税金を支払う必要はまったくないのでしょうか? 実は、このポイント利用分は、事業所得とは別建ての「一時所得」に該当します。「所得」ですから、別途課税対象になるのです。ただし、一時所得には年間50万円という控除額が設定されているため、それ以下であれば税金はかかってきません。正確に言えば、例えば生命保険の解約金といった他の一時所得と合算しても年間50万円以下であれば、無税ということになります。

まとめ

クレジットカードを事業に使うときには、現金決済とは異なる会計処理が必要になることがあります。不理解から、例えば事業で貯めたポイントで高額な備品を「購入」し、経費計上したりすれば、税務署に申告漏れを指摘される可能性もありますから、注意しましょう。不明な点は、税のプロ=税理士に相談を。

中小企業オーナー、個人事業主、フリーランス向けのお金に関する情報を発信しています。

新着記事

人気記事ランキング

  • banner
  • banner