期間延長!石油石炭税の還付って知っていますか?

[取材/文責]岡田桃子

平成26年度の税制改正において創設された、原油等の生成過程で発生する非製品ガスに係る石油石炭税を石油精製業者に還付する措置。この措置が平成29年3月31日をもって適用期間を終えるため、平成29年の税制改正で三年間延長されることになりました。しかしながらこの措置の認知度は高いとは言えず、本来適用されるはずの企業も本措置を見落としている可能性があります。適用された企業の中には数億円もの還付を受けた例もあるため、この機会に非製品ガスに係る石油石炭税の還付措置を知り、自社の事業に当てはまる項目がないか確認してみてはいかがでしょうか。

非製品ガスに係る石油石炭税の還付措置概要

非製品ガスに係る石油石炭税の還付措置とは

平成29年の租税改正で3年間の延長が決定された「非製品ガスに係る石油石炭税の還付措置」とは、石油備蓄法第2条第5項で規定された石油精製業者が、所轄税務署長の承認を受けた製造場において、石油石炭税が既に課税されている原料を使って各種石油製品を製造する際に副次的に「非製品ガス」を製造した場合に、その「非製品ガス」の原料に課された石油石炭税相当額を、当該石油精製業者に還付するというものです。
つまり、以前は「非製品ガス」の原料にも税金が課されていたのが、その分の額が還付されるようになったということです。

非製品ガスとは

「非製品ガス」とは、石油製品等の製造に伴って副次的に製造されるガスのうち、販売(販売以外の授与を含む)を目的としたもの以外のガスのことを指します。
具体的には、水素やメタンまたはエタンを含有するガスであり、水素・メタン・エタンの容量の合計が、これら以外のガス(プロパン・ブタン・イソブタン・エチレン・プロピレン・ブテンなど)のいずれの一種類の容量と比較しても小さくないものをいいます。
また、本還付措置の対象となる非製品ガスは「販売(販売以外の授与を含む)に供するもの以外のもの」とされていますが、ここでいう「販売以外の授与」とは、ガスを他の者に無償で譲渡することを指すので、有償・無償に関わらず、他の者に譲渡するガスは非製品ガスには該当しないということになります。
これらの非製品ガスは、精製の過程で不可避的に発生する一方で商品としての価値がなく、販売することも難しいものが多いため、石油連盟は長年にわたり非製品ガスの石油石炭税の還付を要望していました。

還付措置の適用を受けるための条件とは

それでは、還付措置の適用を受けるためにはどのような条件が必要となるのでしょうか。
先述したように、本還付措置の適用を受けることができるのは、石油備蓄法第2条第5項で規定される「石油精製業者」で、非製品ガスの製造場所在地の所轄税務署長の承認を受けた者に限られています。この「石油精製業者」とは、石油備蓄法では、特定設備を用いて指定石油製品の製造を行う事業である「石油製造業」に従事する者をいうこととされており、この「石油製造業」を行うためには、あらかじめ経済産業大臣に所定の届け出を行う必要があります。
また、非製品ガスの製造場について所轄税務署長による承認を受けるためには、所轄税務署長に対し「石油石炭税非製品ガス製造場承認申請書」を提出する必要があります。対象となる非製品ガスの製造場は、石油精製を行う製造場として石油備蓄法26条による届け出がされた製造場であって、同条に基づき常圧蒸留装置の届け出がされている製造場であり、いわゆる石油化学工場は含まれないため注意が必要です。

還付申請手続と還付申請金額

還付申請手続について

還付を受けようとする場合には、非製品ガスを製造してから1年以内に「石油石炭税相当額還付申請書(非製品ガス用)」に「石油石炭税非製品ガス還付金額計算書」を添付して、所轄税務署長に提出する必要があります。

還付申請金額の算出方法について

還付されるのは、非製品ガスを副次的に製造した場合にその原料に課された石油石炭税相当額であるため、還付申請金額は、非製品ガスの数量に石油石炭税の税率を掛けることで算出することができます。また、非製品ガスの数量は非製品ガスの重量を原料の密度で除すことで求められるため、まとめると還付申請金額は以下の式で求められます。

還付申請金額=非製品ガスの数量(=非製品ガスの重量÷原料の密度)×石油石炭税の税率

石油石炭税の税率は、「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例」が適用されているため、石油石炭税法に定める本則税率よりも引き上げられており、平成29年7月時点で原油・石油製品1klあたり2,800円となっています。

非製品ガスに係る石油石炭税の還付措置が創設された背景

ここまで紹介してきた非製品ガスに係る石油石炭税の還付措置が創設された背景には、もちろん石油連盟からの要望があったということもありますが、それ以外の狙いとして、石油精製業者に対して国際競争力の強化につながる前向きな投資を促し、石油精製業者の経営基盤を強化することで、石油製品の安定供給を確保へとつなげることが挙げられます。
近年、我が国の石油製品の需要は全体的に減少傾向にあり、また国際競争も激化していることから、石油精製業者の経営環境は悪化してきています。しかし、東日本大震災時に明らかになったように、石油はエネルギー供給の頼みの綱であり、平時から石油の安定供給を確保することが重要になってきます。そのためには石油精製業者の経営基盤を強化することが必要であるとの考えが、本還付措置の創設の一因となりました。

その他の細かい注意点

最後に、本還付措置に関する細かな注意点について見ていきます。

記帳義務

非製品ガスの製造場について所轄税務署長の承認を受けた石油精製業者は、非製品ガスについて記帳義務を負います。具体的には、
1.非製品ガスの製造に使用された原料の種類、数量、密度、使用年月日
2.製造した非製品ガスの数量、重量、製造年月日
3.移出した非製品ガスの数量、移出の年月日、受取人の住所又は居所及び氏名又は名称並びに移出先の所在地及び名称
の3つの事項を帳簿に記載する必要があります。

非製品ガスの組成分析

石油精製の工程で発生したガスが還付措置の対象となる非製品ガスであることを判定するためには、ガスの組成分析を行う必要があります。この組成分析は原則として常時行う必要がありますが、非製品ガスであることが明らかな場合には組成分析は月1回とするなど、適宜の方法で実施して良いとされています。

さらに詳しい内容を知りたい方は国税庁が発行したQ&Aをご覧ください。

☆ヒント
自社の事業が還付の対象となっている場合、還付を受けて少しでも支払う税金を少なくしたいですよね。しかし、還付措置は複雑でわかりにくい点も多いかと思います。
そのような場合には一度プロの税理士に相談して、自社の事業が還付の対象か、または還付を受けるにはどのような手続きをすれば良いかなど聞いてみると良いかもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。非製品ガスに係る石油石炭税の還付措置はあまり広く知られている措置ではありませんが、適用されれば多額の還付を受けることも可能です。ぜひこの機会に、自社の事業に還付の対象として当てはまる項目がないか再確認してみてください。

東京大学卒。
経理業務で得た知見や、中央官庁時代に得た法律や制度に関するナレッジを分かりやすく解説します。

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