税理士自ら2億円を脱税!こんなセンセイに依頼するのは危険です
2020年5月、ちょっと驚きのニュースがありました。東京国税局査察部が、業務で得た報酬を売上から除外したりする手口で計8億円超の所得を隠し、その分の納税を免れようとしたとして、現役の税理士(現在は廃業)を東京地検に告発した、というのです。「正しい納税」をサポートする立場にある税理士が、その専門知識を悪用したわけですが、税に対する倫理観をここまで欠いていれば、顧客に対してもそういうスタンスで臨むことは、容易に想像できるでしょう。依頼する側には、税理士選びに十分な注意が必要です。
マルサが本人と会社を摘発
報道によると、問題のA税理士は、自らが実質的に経営する2つのコンサルタント会社に、架空のコンサルタント手数料を支払ったとして、自身の所得を少なく申告していたことに加え、その2社についても売上の一部を除外していたそう。この手口で、2017年までの3年間に約8憶2700万円の所得をごまかし、結果的に約2億1200万円を脱税した疑いが持たれています。
国税局査察部は、別名「マルサ」。税務調査(※1)でこうした実態を把握し、所得税法違反(個人)と法人税法違反(2社)の疑いで、東京地検に告発したわけです。マルサが入ったうえに告発されるような、隠した所得が高額かつ悪質なケースは「脱税」と表現され、「申告漏れ」などとは区別されています。間違いなく「重加算税」という重いペナルティを課せられるだけでなく、場合によって刑事罰の対象にもなるのです。
大家に消費税還付を「指南」
ところで、これも報道によれば、A税理士は不動産投資と相続に関する節税業務に特化した業務を行い、顧問先の95%が地主とサラリーマン大家だった、ということです。不動産投資家などに対しては、「金地金」の取り引きを使った消費税還付の方法を助言する事業を展開していたそう。
ちなみに、ここでは詳しくは述べませんが、これは、住居用不動産の賃貸事業では通常対象とならない「仕入税額控除」(※2)を可能にするスキームとして、比較的ポピュラーなものでした。仕入税額控除が認められないのは、家賃には消費税が課税されないため、事業者が課税業者になれないからです。しかし、別事業として金の売買を行えば、そちらは課税対象。この仕組みを工夫することで、結果的に、本来は認められない居住用アパートの建設・購入に際しての高額の消費税還付を受けられる、という建付になっています。ただ、あからさまな節税策だったこともあり、法改正や裁判所の判決を通じて、このスキームの「利用」の間口は狭まりました。
国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。
※2仕入税額控除
消費税を納税する際に、仕入などの経費で支払っていた消費税額を差し引ける制度。
気がついたら「申告漏れ」になっていた……
税理士法には、「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」と定められています。節税のアドバイスはできても、顧客の「税逃れ」の手助けをすることは許されませんし、まして自分自身が脱税に手を染めるなどというのは、論外と言うしかありません。
もちろん、ほとんどの税理士は、その使命をしっかり自覚して活動しています。しかし、稀に今回のような税理士の本分に背く行為が、明るみに出ることがあります。税理士資格を持たない人間が税務書類を作成したり申告を代行したりして、告発されるような事件も発生します。
「とにかく、『節税』してくれるから」「コストが安いから」といった安易な気持ちでそういう人たちに仕事を依頼した結果、知らずしらず「申告漏れ」や「粉飾決算」になっていた、などというのでは、元も子もありません。税理士選びには、慎重さも必要なのです。
「正しい申告」「適切なアドバイス」をしてくれる税理士を。そう言われても、どうやって探したらいいのかわからないという方も多いはず。そんな時には、ぜひ次のサイトを参考にしてみてください。
まとめ
税理士を選ぶ際、「まず節税ありき」になるのは、考えもの。迷ったら、実績のある税理士紹介会社を使うのも1つの方法です。
中小企業オーナー、個人事業主、フリーランス向けのお金に関する情報を発信しています。
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