「新型コロナ」対策の「給付金」「協力金」は課税対象なのをご存知ですか?
新型コロナウイルス感染症の拡大により、業績が大きく悪化した中小企業、個人事業主などに対する「持続化給付金」や、都道府県独自の「休業協力金」などの支給が始まりました。ところで、同時に給付が始まっている国民1人当たり10万円の「特別定額給付金」が非課税なのに対して、これらには、法人税や所得税が課税されることになっています。“コロナショック”で青息吐息の事業者に配られる給付金から税金を取るというのは、酷な感じもしますが、どうして非課税扱いにならないのでしょうか? 「コロナ給付金と税金」についてまとめました。
非課税の給付金とは?
新型コロナウイルス感染症に伴う、国や地方自治体の各種給付金の申請・支給が始まっています。そのうち、広く国民に関係するのが、全国民1人当たり10万円が配られる「特別定額給付金」で、「5月中」という政府目標からは遅れているものの、徐々に支給が始まっています。
この特別定額給付金には、税金はかかってきません。当初、課税対象にして、新型コロナがあってもあまり生活に支障のない高所得者からは、一定程度を「返して」もらうべきだ、という意見もありました。累進課税といって、所得が高いほど税率が上がっていく所得税のメカニズムが活用できるのではないか、という議論だったわけですが、結局「確実に10万円を渡す」ことを優先したことなどから、非課税扱いに落ち着きました。
このほか、今回の新型コロナ対策では、国が支給する対象児童1人当たり1万円の「子育て世帯への臨時特別給付金」も非課税とされました。さらに、国が公布する「企業主導型ベビーシッター派遣事業」の割引券や、東京都などの地方自治体が独自に行う「ベビーシッター利用支援事業」における助成も、非課税です。本来、これらは「雑所得」(※)として所得税の課税対象なのですが、新型コロナの見舞金相当として、課税されないことになりました。
給与所得、事業所得、不動産所得など他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得。公的年金、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当する。
事業者向けの給付金には課税される
一方、新型コロナで打撃を受けた企業や個人事業主向けに支給されるものには、主として次のようなものがあります。
- 持続化給付金
昨年に比べ売上が大幅に減った事業者に交付される。支給額は、中小企業が最大200万円、個人事業主、フリーランスについては最大100万円となっている。 - 雇用調整助成金
経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るために従業員に支払う休業手当に要した費用を、国が肩代わりする制度。新型コロナ対策として、大幅に拡充が図られた。 - 休業協力金
各地方自治体が、休業や営業時間短縮要請などに応じた事業者に対して独自に支給するもの。東京都の場合(「感染拡大防止協力金」)は、一律50万円(2事業所以上で要請に応じた事業主には100万円)が支給される。
これらの給付金、協力金は、さきほどの特別定額給付金と異なり、法人税(企業)や所得税(個人事業主など)の課税対象です。とはいえ、あらかじめ税金を引かれたうえで支給されるわけではありません。例えば100万円の給付金を受け取ると、その金額が売上とともに収入に計上され、そこから経費などを差し引いた事業所得をベースに、税金が計算されることになるのです。
もし課税されないと……
給付金などへの課税については、「苦しい立場に追い込まれている事業者に対する援助なのだから、非課税にすべきではないか」という声も聞かれます。確かに、法人税の税率が15%ならば、単純計算で、200万円の給付を受けたら30万円が課税されることになりますから、無視できない金額ではあります。
一方で、こうした事業者向けの給付金などを非課税とすることに対しては、反論もあります。そもそも、中小企業の6割近くは赤字で、税金を支払っていないという実態があります。課税所得がマイナスなので、法人税は発生しないのです。「コロナ禍」で大幅に業績が悪化する中、そうした企業の大半は、たとえ給付金をもらっても黒字転換は困難=やはり税金の支払いは発生しない公算大、だとみられています。
そうしたことも踏まえて、給付金を非課税にすることの最大の問題は、「税の公平性」にあると言えます。もし、こうした給付金を非課税にして、さらに家賃や人件費などの経費を通常通り控除(収入から差し引くこと)できることになると、給付された部分には、二重課税ならぬ「二重控除」が行われることになるでしょう。売上だけで回している事業者との不公平が、露呈するわけです。
さらに、同じ黒字なのに、営業努力の結果それを達成した事業者に比べて、給付金や協力金の補填で黒字となっている事業者の方が支払う税が少なくて済むということになると、「働かないほうが得だ」というモラルハザードが広がる危険性も指摘されています。
「税の公平性」を守るというのは、まさに正論です。ただし、一方で新型コロナによる経済の落ち込みが予想以上に甚大で、瀬戸際に追い込まれている事業者が少なくないのも事実。今後とも、課税が問題視されないような迅速かつ有効な方策の実行を望みたいものです。
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まとめ
新型コロナ対策として国や自治体から支給される給付金などには、非課税のものと、課税されるものがあることに注意しましょう。また、今後の経済状況などによっては、新たな支援制度の創設や、非課税枠の拡大といった対策が講じられる可能性もあります。常に最新の情報をチェックするようにしてください。
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