コロナの収入減で受けられるフリーランスの保険料免除・減免を解説
新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少したフリーランスは、国民健康保険料および国民年金保険料の納付について免除や減免を受けることができます。特例措置が適用される範囲、またコロナ禍のなかでフリーランスが取るべき行動について解説します。
コロナで収入が減少したフリーランスがやるべきこと
必要な情報を収集する
新型コロナウイルス感染症は2020年1月16日に国内初の感染者が確認されて以来、全国に緊急事態宣言が出される事態へと発展しました。外出自粛、日常生活に必要不可欠ではないものを取り扱う店舗には営業自粛が求められ、経済活動には大打撃となっています。やむなく休業や事業縮小となり、収入が減少したフリーランスや個人事業主、中小企業は相当数に上ります。
このようなフリーランス等を支援する政策として、持続化給付金の支給や事業資金の実質無利子・無担保融資が行われます。持続化給付金は再起を目指す事業者に対し、事業の継続を下支えする目的で支給される給付金です。
新型コロナウイルス感染症の影響により1ヵ月の売上が前年同月比で50%以上減少している場合、法人は200万円、個人事業主は100万円の持続化給付金を受けることができます。
しかしこのような制度は、申請しなければ活用できません。いくら有用な制度があっても、知らなければ申請すらできないことになります。必要な支援を受けるためには、厚生労働省HPなどを閲覧して必要な情報を自分で入手しなければなりません。また未確定のものも多く、情報は随時更新されています。こまめな確認を怠らないようにしましょう。
減免・免除が受けられる制度を確認する
社会保険料などについて猶予の特例も、コロナで収入減を余儀なくされた事業者に対する支援策として実施されます。免除や減免が受けられる範囲が特例で拡大され、多くのフリーランスが国民健康保険や国民年金の保険料支払を猶予されます。
また電気やガス、電話、上下水道の料金、公営住宅家賃、NHK受信料等についても支払や未払いによる利用停止の猶予を行うよう、各事業者に対して政府から要請が出されています。
2020年度の国民年金保険料は月額16,540円です。国民健康保険料や他の料金などと合わせて免除や減免、支払猶予を受けることができれば、出費をかなり抑えることができます。特例措置の内容を確認して、必要であれば申請を検討しましょう。
国民健康保険料の金額と減免制度について
国民健康保険料が高い理由
国民健康保険の保険料は高いとよく言われます。会社員は勤務先による健康保険組合や、中小企業を対象とする協会けんぽ(全国健康保険協会)などに加入し、それぞれに定められた保険料を支払っています。退社して国民健康保険に切り替わったときなど、保険料の高さに驚く人は少なくありません。
国民健康保険の保険料が高いことの一因は、会社負担がないことにあります。会社員は健康保険料について、50%を会社に負担してもらうことができます。これに対して国民健康保険は、全額を自分で支払わなければなりません。大企業の中には健康保険料の50%を超える部分を会社負担分としているところもあります。会社負担がない国民健康保険の保険料が高く感じられるのは当然です。
また加入者の違いも、国民健康保険の保険料の高さにつながっています。基本的に会社員が加入する健康保険には会社員以外は加入できません。しかし国民健康保険の加入者はフリーランスをはじめとして自営業者、農業者など多様です。無職者や高齢者など、無収入や低収入の人も多く含まれています。支払能力のある人に重い負担が求められるため、一定の収入がある人の保険料は高く算定されます。
国民健康保険料の減免を受けるには?
国民健康保険料の減免は、国民健康保険法第77条の「市町村及び組合は、条例又は規約の定めるところにより、特別の理由がある者に対し、保険料を減免し、又はその徴収を猶予することができる。」の規定に基づく制度です。国民健康保険は各市区町村が保険者となってそれぞれに運用されているため、減免についても細かく異なった基準が設けられています。
しかし大枠は一緒で、災害や不慮の事故に遭った場合、前年度に比べて大きく収入が減少した場合などが、国民健康保険料の減免が受けられる対象とされています。減免を受けようとする場合は、各市区町村の窓口へ必要書類を提出して申請を行います。
国民年金の保険料免除制度について
国民年金保険料の免除制度とは?
国民年金第1号被保険者は経済的理由から保険料の支払が困難な場合には、免除を受けることができます。全額免除と一部免除があり、一部免除には4分の3免除、半額免除、4分の1免除の3つがあります。国民年金保険料免除が受けられるかどうかは、本人や配偶者、世帯主の前年所得によって判断されます。それぞれの前年所得が基準以下であることが必要です。
免除を受けずに国民年金保険料を不払いとしていると、未納として扱われます。国民年金保険料を未納としていると、保険料納付済期間の不足から老齢基礎年金の支給が受けられなくなったり、障害を負ったり死亡したりした場合でも障害基礎年金や遺族基礎年金の給付が受けられなくなったりするので注意が必要です。
国民年金保険料の免除を受けると?
国民年金保険料の免除を受けると、将来給付を受ける老齢基礎年金額が減少します。老齢基礎年金を受けるには基本的に480月(40年間)の保険料納付済期間が必要です。免除を受けた期間も、老齢基礎年金の受給資格については保険料納付済期間として取り扱われます。
ただし支給額について保険料を納付した月を1とする計算式で、全額免除を受けた月は8分の4(2分の1)、4分の3免除の月は8分の5、半額免除の月は8分の6、4分の1免除の月は8分の7に置き換えられます。全額免除を1年間受けた場合、老齢基礎年金は1年あたり1万円弱減少します。
免除を受けた国民年金保険料は、10年以内であれば後から納付することが可能です。国民年金保険料を追納すると免除を受けた期間でも保険料納付済期間としての扱いを受けることができ、将来に受け取る老齢基礎年金の額も減額されません。
コロナでの収入減で受けられる国保・年金保険料減免について
国民健康保険料の減免対象適用拡大について
新型コロナウイルス感染症の影響により、収入が前年度の10分の3以上減少することが見込まれる場合に、国民健康保険料の減免が受けられる見通しです。
減免の割合は、前年の合計所得金額を基準とした通達が次のとおり出されています。
- 300万円以下であるときは全部
- 400万円以下であるときは10分の8
- 550万円以下であるときは10分の6
- 750万円以下であるときは10分の4
- 1,000万円以下であるとき10分の2
国民年金保険料の免除対象適用拡大について
新型コロナウイルス感染症の影響により2020年2月以降に収入が減少し、所得が相当程度まで下がった場合、免除の対象になります。申請書類は日本年金機構HPからダウンロード可能で、感染防止の観点から郵送での申請書提出が推奨されています。提出先は各市区町村の国民年金担当窓口です。
まとめ
国民健康保険や国民年金には保険料が支払えない場合に利用できる、減免や免除の制度があります。新型コロナウイルスに対する支援策として適用対象の拡大が行われ、条件を満たせば保険料支払について猶予を受けることができます。活用可能な制度や支援策について、しっかりと情報収集を行いましょう。
▼参考資料
- 厚生労働省リーフレット「生活を支える支援のご案内」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000625689.pdf - 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html
複数の企業で給与計算などの業務を担当したことから社会保険や所得税などの仕組みに興味を持ち、結婚後に社会保険労務士資格とファイナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。現在はライターとして専門知識を活かした記事をはじめ、幅広い分野でさまざまな文章作成を行う。
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