新型コロナ“第3波”に対応し、雇用調整助成金の「特例措置」は、年明け以降も継続へ
労働者の雇用を維持した企業を支援する「雇用調整助成金」の、新型コロナに伴う特例措置が延長される見通しになりました。今年12月末が期限とされていましたが、政府・与党が期限延長に必要な財源を第3次補正予算に盛り込む方針を固めた、と伝えられています。いつまで延長されるのかは未確定ですが、自民党などは2021年3月まで現行水準を維持するよう、求めているようです。報道などにより明らかになっている点を中心に、特例措置について解説します。
新型コロナで設けられた「特例措置」
「雇用調整助成金」とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、「雇用調整(休業)」を行った場合、その間に従業員に支払う休業手当に要した費用の一部を国が助成する制度です。労働者の雇用を維持してもらうために休業手当の一部を国が肩代わりしようというもので、1975年に創設され、2013年に現在のような形になりました。
ところが、今年、新型コロウイルス感染症の拡大という想定外の事態が発生し、春ごろから雇用情勢がかつてないほど急激に悪化しました。それに対応するため、この制度に、コロナの影響により休業した事業主に対しては支給の中身を拡充し、なおかつ申請を簡素化した「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例」(特例措置)が設けられたわけです。
対象期間中は、「平時」の助成金に比べて支給要件が緩和されるとともに、助成率や日額上限が引き上げられることになりました。今年6月に成立した政府の第2次補正予算では、1日当たりの支給上限額が、それまでの8,330円から1万5,000円に引き上げられるなど、助成がさらに拡充されました。
特例措置は2度目の期間延長に
当初、この特例措置の適用は今年9月末までとなっていましたが、中小企業を中心に厳しい状況が続いていることを理由に、8月に12月末までの期間延長が決定されていました。しかし、その後も雇用情勢は好転の兆しが見えず、それどころか11月に入ってコロナの“第3波”に見舞われたことから、先行きに対する懸念が強まっています。
厚生労働省の公表資料によれば、11月13日時点の特例措置の支給決定件数は累計で181万5,000件、支給決定額は同2兆1,890億円に達しました。支給決定額は、ここ数週間、1週当たり700~900億円で推移していて、現場の苦しさを裏付けるものとなっています。
特例措置の2度目の延長は、こうした状況を受けたものです。「毎日新聞」(11月18日)の記事を引用しましょう。
自民党の雇用問題調査会は18日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた雇用調整助成金の特例措置について、来年3月末まで現行の水準を維持するよう求める提言をまとめた。期限の切れる年明け以降も全面的に維持し、来年4月以降も適切な対応を求める。
(略)調査会では10月下旬まで段階的な縮小を求める意見もあったが、11月に入って感染者数が増加するなどして全面維持を求める声が強まっていた。公明党や野党も全面維持を求めている
まだ「本決まり」ではありませんが、逆に、今後こうした方針が撤回される可能性は低いと考えられます。ただし、コロナ対策とはいえ財政支出が嵩んでいることや、助成金を出すことによって人手不足の産業への労働移動を妨げている、といった批判があるのも事実。「毎日」の記事も、「政府は年末が期限となっている特例措置を延長する方針だが、従業員を他社に出向させる場合の助成を増額する一方、補助率や上限額は段階的に縮小することも視野に検討を進めている」と指摘します。
雇用調整助成金(特例措置)の仕組みをよく理解したうえで、要件を満たす場合には、早めに申請すべきでしょう。
特例措置とは、どういうものか?
あらためて、制度の概要をみておきましょう。
今回の特例措置による支給対象となるのは、
- ①新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小している
- ②最近1か月間の売上高または生産量などが前年同月比5%以上減少している
- ③労使間の協定に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っている
という要件を満たす、すべての業種の事業主になります。ですから、事業活動が縮小していても、新型コロナに関係しないものは、対象外です。
助成金の支給額は、中小企業の場合は、
「(平均賃金額×休業手当等の支払率)×以下の助成率」となります。
- 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主:4/5
- 加えて解雇をしていないなどの上乗せの要件を満たす事業主:10/10
つまり、要件を満たせば、支払う休業手当の100%(1日の上限額は1万5,000円)を助成してもらえるのです。
なお、そもそも休業手当が支払われていない労働者個人を対象に、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」(「休業支援金・給付金」)が新設されています。新型コロナウイルス感染症の影響で休業し、賃金が支払われなかった中小企業の雇用保険の被保険者が対象ですが、週20時間未満の勤務などのため雇用保険の被保険者でない労働者(無給状態のアルバイトや非正規社員など)にも、給付金が支給されます。
支給されるのは、休業期間から、勤務した日などを除いた日数分で、支給日額は、休業前賃金の80%、上限は1万1,000円(月額33万円)となっています。
この休業支援金・給付金も、前回、雇用調整助成金の特例措置に準じて年末まで期間が延長されましたが、今回も同様の扱いになるものと思われます。
まとめ
新型コロナによる失業者の増大を防ぐために設けられた雇用調整助成金の特例措置は、来年も当面、継続されるもようです。ただ、支給水準などの引き下げも議論に上っていますから、対象となる場合には、早めに確実に申請することが大事です。不明な点は、税理士、社会保険労務士などの専門家に相談してみましょう。
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