法人にかかる税金はどれぐらい?法人税の計算方法をわかりやすく解説

[取材/文責]長谷川よう

経営者にとって重要なことの1つに、その年に納付する税金のことがあります。利益に税率をかければ簡単に法人税の金額が出ると思いがちですが、実はそうではありません。なぜなら、税金の計算には、税法独特の考え方が影響するからです。ここでは、法人税の計算を正しくするために、計算方法の基本的な考え方を解説します。

法人税の計算のしくみと手順

法人税の計算のしくみと手順

法人税の計算は、「(課税)所得×税率」の計算式で求めます。計算式自体はシンプルですが、その内容は少し複雑です。そこで、それぞれの構成要素を詳しく見ていきましょう。

①(課税)所得

毎月の経営状況を確認したり、毎年の税金を計算したりする際に、「利益」や「所得」という言葉を耳にする機会は多いでしょう。利益と所得は同じように思えますが、実は異なるものです。法人の計算をする場合は利益と所得の違いを知っておく必要があります。

・利益

利益とは、会社のもうけを示すものです。その月や年の経営状況を判断する指標となります。日々の取引を帳面に付けていきますが、その帳面に付けた売上などの収益から仕入や経費などの費用を差し引いたものが利益です。

 

利益=収益-費用

 

残高試算表や決算書では「当期純利益」などの科目で表示されます。利益は、税金の概算を把握するための目安になりますが、税金の計算をするための基になるものではありません。税金の計算では、所得を用います。

・所得

所得とは、税金の計算の基になる数値です。税法では、税金を計算する上の収益を「益金」費用を「損金」とよびます。所得は、益金から損金を差し引いたものになります。

 

所得=益金-損金

 

税金の計算は、日々の帳簿付けから導かれた利益から始めますが、日々の帳簿付けによる会計上の収益や費用と、税法上の益金と損金は、まったく同じではありません。そこで、利益から税法上の益金と損金になるように調整を行い、所得を計算していきます。

②税率

所得の金額を求めたら、そこに税率を乗じて法人税の金額を計算します。法人税の税率は、会社の規模やその年の所得金額によって異なります。普通法人の税率は次のように定められています。

 

区分 適用関係(開始事業年度)
平28.4.1以降 平30.4.1以降 平31.4.1以降
普通法人 資本金1億円以下の法人など 年800万円以下の部分 下記以外の法人 15% 15% 15%
適用除外事業者 19%(注)
年800万円超の部分 23.40% 23.20% 23.20%
上記以外の普通法人 23.40% 23.20% 23.20%
(注)平成31年4月1日以後に開始する事業年度において適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等をいいます。以下同じです。)に該当する法人の年800万円以下の部分については、19%の税率が適用されます。

中小企業については、年800万円超の所得については23.4%、それ以下の所得には19%の法人税が課税されるわけです。

また、普通法人以外の税率は、以下の通りとなっています。
なお、「協同組合等」は、農業協同組合(中央会を除く)、中小企業等協同組合、消費生活協同組合、信用金庫など、「公益法人等」は、学校法人、一般社団法人等(公益社団法人・公益財団法人及び非営利型法人に該当する一般社団法人・一般財団法人)、社会福祉法人、宗教法人、公共法人に含まれない各種の事業団等、「人格のない社団等」とは、法人でない社団または財団を指します。「特定の医療法人」は、租税特別措置法第67条の2第1項に規定する国税庁長官の認定を受けたものをいいます。
また、【 】は、「協同組合等」または「特定の医療法人」が連結親法人である場合の税率です。

区分 適用関係(開始事業年度)
平28.4.1以降 平30.4.1以降 平31.4.1以降
協同組合等(注1) 年800万円以下の部分 15%
【16%】
15%
【16%】
15%
【16%】
年800万円超の部分 19%
【20%】
19%
【20%】
19%
【20%】
公益法人等 公益社団法人、公益財団法人または非営利型法人 収益事業から生じた所得 年800万円以下の部分 15% 15% 15%
年800万円超の部分 23.40% 23.20% 23.20%
公益法人等とみなされているもの(注2) 年800万円以下の部分 15% 15% 15%
年800万円超の部分 23.40% 23.20% 23.20%
上記以外の公益法人等 年800万円以下の部分 15% 15% 15%
年800万円超の部分 19% 19% 19%
人格のない社団等 年800万円以下の部分 15% 15% 15%
年800万円超の部分 23.40% 23.20% 23.20%
特定の医療法人 年800万円以下の部分 下記以外の法人 15%
【16%】
15%
【16%】
15%
【16%】
適用除外事業者 19%
【20%】
年800万円以下の部分 19%
【20%】
19%
【20%】
19%
【20%】
(注1)協同組合等で、その事業年度における物品供給事業のうち店舗において行われるものに係る収入金額の年平均額が1,000億円以上であるなどの一定の要件を満たすものの年10億円超の部分については、22パーセントの税率が適用されます。
(注2)「公益法人等とみなされているもの」とは、認可地縁団体、管理組合法人および団地管理組合法人、法人である政党等、防災街区整備事業組合、特定非営利活動法人ならびにマンション建替組合およびマンション敷地売却組合をいいます。

法人税が課せられない法人もある

法人であっても、次のような利益を得ることを目的として事業活動をしていない組織には、原則として法人税は課税されません。

  • 公共法人:地方公共団体、国立大学法人、国民金融公庫、日本年金機構、金融公庫、日本道路公団、地方独立行政法人など
  • 公益法人:社団法人、財団法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人など
  • 人格のない社団:各種実行委員会、同窓会、管理組合、PTAなど

 
ただし、上の表にもあるように、公益法人、人格のない社団が「収益事業」を行っている場合には、その部分は課税対象になります。例えば、宗教法人に対する「お布施」は、宗教活動に含まれる行為とされ、課税されません。しかし、所有する土地を駐車場にして料金を徴収すれば、それは収益とみなされて、法人税がかかってくるのです。

具体的に法人税を計算してみよう

では、具体例を挙げて法人税の金額を計算してみましょう。

 

例)帳簿上の利益金額は500万円だった。帳簿上の収益のうち、税法上の益金にならないものは100万円、費用のうち損金にならないものは200万円だった。

 

所得金額は次のようになります。

 

所得金額=利益金額500万円-益金にならないもの100万円+損金にならないもの200万円=600万円

 

帳簿上の収益のうち、税法上の益金にならないものは、収益を計上しすぎているので利益からマイナスし、損金にならないものは費用を計上しすぎているため、利益にプラス(費用からマイナス)する必要があります。

 

所得金額が600万円の場合、税率は15%です。そこで法人税の金額は次のようになります。

 

法人税額=所得金額600万円×法人税率15%=90万円

 

具体例のケースでは、90万円の法人税を納めることになります。

益金とは 益金になるものとならないもの

法人税の計算上、益金になるもの

ここまでは、法人税の計算方法について見てきました。ここからは、税法上の益金について詳しく見ていきましょう。まずは、益金になるものです。益金になるものには、次のようなものがあります。

①有償での商品の販売やサービスの提供など

基本的に、会計上の収益と益金は同じです。商品を販売したり、サービスを提供したりして、現金などを受け取った場合は、税法上の益金になります。この他、固定資産の売却益や預金利息の受け取りなども会計上の収益と同じく、益金になります。

②無償での商品の販売やサービスの提供など

お金を受け取らず、無償で商品を販売したり、サービスを提供したりする場合も、益金に該当します。もしも、帳簿に載っていない無償での商品の販売や、サービスの提供があった場合は、税金の計算をする際に、その分を所得にプラス(益金算入)する必要があります。

法人税の計算上、益金にならないもの

会計上では収益になるものの、税法上では益金にならないものがあります。税法上で益金にならないものは、税金の計算をする際に、その分を所得からマイナス(益金不算入)する必要があります。益金にならないものには、次のようなものがあります。

①受取配当金

他社の株式を所有している場合に、配当金を受け取ることがあります。配当金は普通預金などに振り込まれるため、一般的に会計上では、受取配当金として収益に計上しています。しかし、配当金を支払う会社は、法人税などの税金を支払った後の利益から、配当金を支出しています。配当金を受け取った側でも税金を課してしまうと、二重課税となるため、受け取った側では、益金にしません。

②税金の還付

法人税や法人住民税の予定納税など、払いすぎた税金の還付を受けることがあります。こちらも通常は、益金にはなりません。ただし、事業税や固定資産税など損金になる税金が還付された場合は、益金になります。

損金とは 損金になるものとならないもの

法人税の計算上、損金になるもの

次に、法人税の計算上損金になるものを見ていきましょう。基本、損金になるものは費用になるものと同じです。損金になるものは、主に次の3つです。

①原価

仕入れや材料費など、売上に直接関係する原価については、売上を得るために必要不可欠なもののため、損金になります。

②販売費、一般管理費、その他の費用

原価が売上に直接関係する支出であるのに対し、売上に間接的に関係するのが、販売費や一般管理費などの費用です。例えば、人件費や水道光熱費、事務用品費、地代家賃などが販売費や一般管理費に該当します。こちらも、売上を得るために必要なものに違いがないので、損金になります。

③損失

固定資産を売却した場合の損や、商品が陳腐化した場合の廃棄損など、売上に関係する費用ではないが、事業を行う上で、発生しうる損失については、損金として認められます。

法人税の計算上、損金にならないもの

企業が支出する費用は、基本、事業に必要なものです。しかし、一定のルールを作らないと、経営者の裁量や利益の大小によって、その年の費用が大きくなったり小さくなったりする可能性があります。そこで、経営者の裁量などで費用の金額の大小を決められるものについては、税法上、一定のルールを設け、損金に認められないものもあります。代表的なものに次のようなものがあります。

①役員報酬、役員賞与

役員報酬や役員賞与は原則、損金になりません。ただし、役員報酬や役員賞与のうち定期同額給与や事前確定給与については損金になります。

②一定の金額を超える寄附金

慈善団体などへの寄付は、企業の社会貢献のために必要です。しかし、無制限に損金と認めてしまうと、租税回避に利用されてしまう可能性があるため、限度額を超える分については、損金になりません

③減価償却費の過大分

固定資産を購入すると、その取得価格を毎年少しずつ損金にしていきます。税法では、損金にする金額の計算方法を定めています。その計算によって求めた限度額よりも過大に費用とした分については、損金になりません

④その他

同業種、同規模の会社に比べ、あきらかに金額が多い費用については、損金にならないものがあります。例えば、役員やその家族の給料などです。

中小企業に対する税制面での優遇措置

●中小企業者等の法人税の軽減措置
法人税の税率は、原則として23.2%ですが、中小企業については、年800万円以下の所得に課税される法人税率は、15%となっています(普通法人の税率の表を参照)。実はこれは、法人税法の本則で19%に軽減されているものを、租税特別措置法でさらに15%まで引き下げた税率です。21年の税制改正で、この税率の適用期限が2年延長され、24年度末(25年3月31日までに開始する事業)となっています。
このほか、中小法人(資本金1億円以下)については、次のような優遇措置(中小業税制)が適用されています。

●貸倒引当金
貸倒引当金を、一定の限度額の範囲内で損金算入できる

●欠損金

  1. ①欠損金繰越控除について、所得金額の100%まで損金算入可
  2. ②欠損金繰戻還付(1年間)が可

 

●租税特別措置

  1. 研究開発税制:一般型の税額控除率
  2. 中小企業における賃上げ促進税制(旧称:所得拡大促進税制)
  3. 中小企業投資促進税制
  4. 中小企業経営強化税制
  5. 特定事業継続力強化設備等の特別償却(BCP)
  6. 中小企業事業再編投資損失準備金制度
  7. 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

中小企業税制について、詳しくは中小企業庁のHPをご連ください。

まとめ

今回は、法人税の計算の基礎について解説しました。法人税の計算には利益ではなく、所得を使います。所得を計算するためには、益金や損金について理解する必要があります。益金や損金になるもの、ならないものについては、その時の社会情勢などで税法で規定が変わるものもありますが、基本の考え方は不変です。まずは、基本の考え方を身に付けることが、法人税の計算の第一歩となるでしょう。

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会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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