決算申告手続きに必要な勘定科目内訳明細書とは?

[取材/文責]山田隆裕

法人の決算申告の際に必要になる書類の一つに「勘定科目内訳明細書」というものがあります。初めての決算申告手続きにむけ大量の書類を目の前にどうしていいかわからずにいる、そんな企業向けに、具体的な例を用いて「勘定科目内訳明細書」について説明していきます。

決算とは

まずは、決算申告の流れを簡単に説明していきます。個人事業主の場合は1月から12月までの売り上げや経費をまとめて、毎年2月16日から3月15日に確定申告を行います。この確定申告を法人として行うものが、法人の決算申告です。法人の決算申告は、確定申告と異なり、各企業が定めた事業年度終了日の翌日から2か月以内に行います。税金の申告・納付を適切に行うため、また株主への報告のために、業績などをまとめます。

決算で作成する書類

法人決算の際に作成しなければならない書類は主に以下の8つです。

  • 総勘定元帳(全取引を勘定科目ごとに記録したもの)
  • 領収書つづり(領収書をまとめたもの)
  • 決算報告書(賃貸対照表・損益計算書・勘定科目内訳明細書・個別注記表などをまとめたもの)
  • 法人税申告書(複数の別表で構成される書類に決算申告書をつけたもの)
  • 消費税申告書(消費税の申告をするときに必要)
  • 法人事業概況説明書(事業内容・従業員数などを記載したもの)
  • 地方税申告書(法人住民税・法人事業税の申告をするときに必要)
  • 税務代理権限証書(決算業務を税理士に委託した場合に必要)

 
このうちの勘定科目内訳明細書について、今回は詳しくみていきます。

勘定科目内訳明細書とは?

勘定科目内訳明細書とは、大まかに言うと「各勘定科目の残高・内容確認を進めながら、期末残高の内訳を記載したもの」です。
法人税法により、勘定科目内訳明細書の提出は全法人に課せられています。勘定科目内訳明細書を見て、税務署が調査対象を選ぶと言われています。具体的にはA社の内訳書に記載されたB社との取引内容と、B社の内訳書に記載されたA社との取引内容が異なっていたら税務署がこれら2社を調査対象の候補にあげるといった具合です。

しかし、すべての法人にとってそうというわけではありません。税務署の調査対象にならない法人も存在します。その法人の特徴は以下の通りです。
 

  • 売り上げが年間3,000万円に満たない小企業
  • 赤字
  • 設立から2年以下
    •  
      ここまで見ると税務調査を決定する大変重大な書類のように感じられるかもしれませんが、勘定科目内訳明細書に多少の誤りがあったところで税額が変わるわけではないので、本業を疎かにしない程度に取り組むことをおすすめします。

      しかし、融資の際に金融機関が勘定科目内訳明細書の提出を求めることもあります。この場合、内容に不備があると信用を失ってしまう可能性もあるので、状況に応じて勘定科目内訳明細書の位置づけを明確にしましょう。

      ☆ヒント
      勘定科目内訳明細書は全法人が提出しなければなりませんが、始めたばかりの小さな法人にとってはあまり重要度の高くないものなので、企業の規模や状況によってその重要度が左右されうるものとなっています。
      具体的に勘定科目内訳明細書をどう位置づけるかについては、今後の経営計画をすり合わせた上で税理士と相談してみると良いかもしれません。

      勘定科目内訳明細書の書き方解説!

      決算書項目の中に次の内訳書に該当する科目があれば作成します。

      1.預貯金等の内訳書

      • 取引機関別に、かつ預貯金の種類別に記入。
      • 預貯金等の名義人が代表者になっているなど法人名と異なる場合は、「摘要」欄に「名義人○○」のように、名義人を記入する。

      2.受取手形の内訳書

      • 振出人、振出年月日・支払期日、金額、支払銀行名、割引銀行名を記入する。
      • 一つの取引先からの受取手形の総額が100万円以上のものについては各別に記入し、その他は一括して記入する。
      • 融通手形については、各別に記入し摘要欄にその旨を記入。
      • 為替手形の場合は、引受人の氏名及び住所を摘要欄に記入。
      • 差出人と債務者とが異なる場合は、その債務者の氏名及び住所を摘要欄に記入。
      • 「割引銀行名」欄には、割引銀行名または裏書譲渡先名を記入。

      3.売掛金(未収入金)の内訳書

      • 「科目」の欄には売掛金・未収入金を記入し、続いて相手先の名称・所在地、期末残高を記入。
      • 相手先別期末残高が50万円以上のものについては各別に記入し、その他は一括して記入する。
      • 未収入金についてはその取引内容を摘要欄に記入する。

      4.仮払金(前渡金)、貸付金及び受取利息の内訳書

      • 仮払金の内訳書については、「科目」欄に仮払金・前渡金を記入し、続いて相手先の名称・所在地・法人代表者との関係、期末残高、取引内容を記入する。
      • 相手先別期末残高が50万円以上のものについては各別に記入する。ただし、役員、株主および関係会社については、期末残高が50万円以下でも各別に記入する。
      • 「取引の内容」欄には、例えば「機械設備の購入手付金」、「仮払税金」などと記入する。
      • 貸付金及び受取利息の内訳書については、貸付先の名称・所在地・代表者との関係、期末残高、期中の受取利息額、利率、貸付理由、担保内容などを記入する。
      • 相手先別期末残高が50万円以上のものについては各別に記入する。ただし、役員、株主および関係会社については、期末残高が50万円以下でも各別に記入する。

      5.棚卸資産(商品又は製品、半製品、仕掛品、原材料、 貯蔵品)の内訳書

      「科目」欄には、商品又は製品、半製品、仕掛け品、原材料、貯蔵品、作業くず、副産物等のように記入し、続いて品目、数量、単価、期末残高などを記入する。

      6. 有価証券の内訳書

      • 「区分」には「売買目的有価証券」「満期保有目的等有価証券」「その他有価証券」別に、「売買」「満期」「その他」を記入する。
      • 証券会社等を通じて行った売却または買い入れは、その証券会社名等を「売却(買い入れ)先の名称(氏名)」欄に記入する。
      • 「摘要」欄には関係会社のものであるときはその旨を記入する。

      7.固定資産(土地、土地の上に存する権利及び建物に限る。)の内訳書

      • 固定資産の種類構造・用途・面積・物件の所在地、期末残高、期中取得や処分の明細などを記入する。
      • 「期中所得の明細」の各欄には、期末現在高がなくても期中において売却、購入または評価替えを行った場合に記入する。

      8.支払手形の内訳書

      • 支払先、振出年月日、支払期日、支払銀行名、金額を記入する。
      • 一取引先に対する支払手形の総額が100万円以上のものについては各別に記入し、その他は一括して記入する。

      9.買掛金(未払金・未払費用)の内訳書

      • 「科目」欄には、買掛金・未払い金・未払い費用の別を記入し、続いて相手先の名称・所在地、期末残高を記入する。
      • 相手先別期末残高が50万円以上のものについては各別に記入し、その他は一括して記入する。

      10. 仮受金(前受金・預り金)の内訳書-源泉所得税預り金の内訳書

      • 「科目」欄には、仮受金、前受金、預り金の別を記入し、続いて相手先の名称・所在地・法人代表者との関係、期末残高、取引内容を記入する。
      • 相手先別期末現在高が50万円以下のものについては各別に記入する。

      11.借入金及び支払利子の内訳書

      • 借入先の名称・所在地・代表者との関係、期末残高、期中の支払利子額、利率、貸付理由、担保内容などを記入する。
      • 相手先別期末現在高が50万円以下のものについては各別に記入する。

      12. 土地の売上高等の内訳書

      • 所有している土地を売却した場合または、土地等を仲介した場合に、取引金額の多額なものから各別に記入する。

      13. 売上高等の事業所別内訳書

      • 事務所の名称・所在地・責任者氏名・代表者との関係、事業等の内訳、期末棚卸高、期末従業員数、使用建物の延面積、源泉所得税納付署を記入する。

      14.役員報酬手当等及び人件費の内訳書

      • 役職名、氏名・住所・代表者との関係、常勤・非常勤の別、役員給与の計・内訳、退職給与などを記入する。

      15.地代家賃等の内訳書-工業所有権等の使用料の内訳書

      • 地代家賃の区分、借地の物件の用途・所在地、貸主の名称・所在地、支払い対象期間、支払賃借料などを記入する。

      16.雑益、雑損失等の内訳書

      • 科目、取引内容、相手先の名称・所在地、金額を記入する。
      • 科目別かつ相手先の別の金額が10万円以上のものについて記入する。
      ☆ヒント
      上記の16項目は、該当する科目がない場合には作成不要です。これらの作成には意外と時間がかかるので、余裕をもって取り組み始めるのがいいでしょう。もしもわからないこと、不安なことがありましたら、実務経験の豊富な税理士に相談すると良いでしょう。

      まとめ

      本業が忙しい会社にとって決算は大変負担になります。決算自体時間がかかりますので、余裕を持って取り組むべきでしょう。なかなか決算に時間を割くことができない経営者の方もいらっしゃると思うので、その場合は税理士と相談をして決算代行を依頼すると良いでしょう。

      慶應大学卒。現、同大学院所属。
      大学4年時に公認会計士試験に突破。
      自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。

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