教育資金贈与の非課税制度って何?手続き方法や注意点も解説
受験や進学に伴う学費の支払いや塾通いなど、子どもが社会人になるまでにかかる養育費は膨大です。そのような中、少しでも我が子を助けたくて資金援助をしたいと考えている祖父母も多いのではないでしょうか。もし、実際に祖父母から資金援助があれば家計の負担が減らせるため、これほど嬉しいことはないでしょう。
しかし、資金援助の金額によっては税金問題が発生するため注意が必要です。本記事では教育資金を贈与した際、非課税にできる制度「教育資金の一括贈与制度」の仕組みや注意点について解説します。
教育資金の一括贈与制度とは?
教育資金の一括贈与制度とは、直系の子どもや孫のためであれば、1,500万円まで教育資金を一括で贈与しても税金がかからない制度です。一般的な贈与は、非課税対象額が受贈者1人あたり年間110万円までであるのに対し、教育資金の一括贈与制度は1,500万円と高額であるため、まとまった額での非課税贈与もできます。
ただし、子どもや孫は30歳未満であることが条件です。本記事では、祖父母や両親など、教育資金をあげる側に当たる立場を「贈与者」と呼び、子どもや孫など、教育資金を受け取る側を「受贈者」と呼びます。1,500万円は安い金額ではありません。では、一体なぜ非課税にできるのでしょうか。次に、非課税になる仕組みや、贈与者となるための条件を解説します。
1500万円までが非課税になる仕組み
なぜ、教育資金の一括贈与は1,500万円まで非課税になるのでしょうか。これは、教育費が「必要経費」に当たるからです。娯楽費や旅費などとは異なり、教育費は子どもの成長や教育のために必要な経費として認められています。そのため、1,500万円まで非課税を可能としているのです。
教育費として認められている主な使い道は以下の通りです。
- 学校の入学金および授業料
- 入園料や保育料(一時保育や預かり保育の費用も含む)
- 施設設備費または入学(園)試験の検定料など
- 学用品の購入費
- 給食費
- スクールバス代
- 大学入学共通テストの検定料など
これらは、学校に対して払うものですが、学校以外に払うものも、教育費として認められています。
具体的な項目は以下の通りです。
- 塾、予備校、家庭教師などの月謝
- 水泳、サッカー、野球など、スポーツ教室の月謝
- ピアノ、バレエ、バイオリン、習字など、習い事の月謝
- TOEIC・TOEFLなどの検定料
- 通信教育にかかる費用
- 学校指定の教材費や学用品代(制服、体操着、ジャージなど)
- 教科書や書道セットなどの副教材費
- 学校から指定され購入するよう求められた学用品(ランドセルなど)
- PTA会費・学級会費
- 通学定期券代
- 留学渡航費
ただし、受贈者になるにはいくつか条件があります。次に、受贈者となる条件について解説します。
受贈者になるための条件
贈与者になる条件は、直系の子どもや孫であることだけではありません。それ以外に「30歳未満であること」、「前年度の所得が1,000万円以下であること」も受贈者となる条件に含まれています。
受贈者の前年度の所得が1,000万円以上ですと教育資金の一括贈与制度を受けられないため注意してください。直系の子どもや孫の中には、再婚などで養子縁組になっている方もいるでしょう。
たとえ養子であっても、法的に血縁関係が結ばれていれば、教育資金の一括贈与制度が適用されるため安心してください。
このように、受贈者となるには、血縁関係と年齢、所得条件の3つすべてを満たしていなければなりません。子どもや孫が社会人になると、収入が1,000万円を超えるケースが出てくるため、検討している方は早めの申請をおすすめします。
手続きの方法と注意点
教育資金の一括贈与制度を利用するためには、正しい手続きが必要です。手順を間違えたり、注意点を十分に理解していないと、課税されてしまうかもしれません。これから紹介する内容をよく理解して、手続きを完了させましょう。
銀行や証券会社で行う具体的な手続き
教育資金の一括贈与制度の手続きは、税務署ではなく銀行や信用金庫、信託銀行、証券会社など、金融機関の窓口で進めます。
具体的な手順は以下の通りです。
- 贈与者と受贈者とで契約を結びます。
- 親(または祖父母)は、金融機関で教育資金専用の口座を開設します。
- 作った口座に資金を一括で入金して手続き完了です。
教育資金を受け取った子ども(あるいは孫)は、教育資金の領収書もしくは請求書を提出すると、贈与税がかからず非課税でお金を引き出せます。ただし、教育費以外での目的で引き出した場合、贈与税がかかるため注意してください。もし、子どもや孫が未成年だった場合、親などの保護者が代理人として引き出せます。
金融機関によっては、教育資金贈与信託自体を扱っていなかったり、手数料がかかったりする可能性があります。
実際に手続きをする前に、あらかじめ各金融機関に確認しておきましょう。
必要な書類と注意点
贈与者と受贈者の間で契約を交わす際「贈与契約書」が必要です。「贈与契約書」とは、「人へ財産を無償で相手に差し上げることを約束し、もらう相手もそれを受け取ることを約束する契約」を記した書類を指します。教育資金を一括贈与する時だけではなく、両親が子どもに結婚祝いとして家や土地を贈る時にも必要な書類です。
その他、口座開設のために以下の持ち物が必要です。
- 戸籍謄本など、直系尊属であることが分かる書類の原本(発効日から6ヵ月以内のもの)
- 健康保険証、運転免許証など、本人確認が取れる書類の原本
- 銀行の届け印
滞りなく手続きを終えるために、これらを必ず用意しておきましょう。
制度を活用する際の注意点
教育資金の一括贈与制度を活用する際、注意点を理解しておかないと、贈与してもらったお金が課税対象となる可能性があります。注意点をしっかり理解し、活用に役立ててください。
非課税対象になる費用の範囲
非課税対象となる費用には「受贈者1人」につき1,500万円までの限度額があります。贈与者1人あたりではないため、注意してください。
例えば、母親から500万円、父親から1,000万円贈与した場合、全額非課税対象です。しかし、両親から1,000万円ずつ贈与した場合、500万円分は課税対象となるのです。この「贈与者と受贈者」の関係性を誤認してしまうと、思わぬ課税を負担することになるため、しっかり覚えておきましょう。
期限や用途の制限に注意
さらに、教育資金の一括贈与制度には「期限」や「用途の制限」があります。実は、教育資金の一括贈与制度は期間限定です。2013年4月1日〜2026年3月31日までの間に贈与された教育資金に限り、非課税が適用されます。しかも、口座を開設する金融機関によっては、国が定める期限よりも早く締め切る可能性があります。そのため、教育資金の一括贈与を考えている方は早めの手続きがおすすめです。
また、受贈者の年齢が23歳以上になると、習い事などの月謝は教育費としてカウントされません。非課税となるのは、学校などの教育機関や教育訓練を受講する際の費用のみに限られます。そして、30歳になると、使いきれなかった分は、贈与税の対象となるのです。
このように、制度そのものの期限だけではなく、年齢による期限があるため注意してください。さらに、用途も教育費に限られるため、それ以外での資金の引き出しは課税対象です。
年齢を重ねると、使用用途も限られてくるため、計画的に使いましょう。
まとめ
教育資金の一括贈与制度は、節税対策としてだけではなく、受贈者の将来を支援する大切な制度です。制度を利用すれば税金で資金が減ることもありません。教育資金の一括贈与制度は利用期限が過ぎてしまうと、受けられない制度でもあります。そのため、制度の利用や手続きにお困りの方は税理士に相談するなどし、利用を検討している方は早めに手続きを完了させましょう。
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