今さら聞けない法人の固定資産!処理方法から節税対策まで簡単解説

[取材/文責]奥谷佳子

「固定資産」とは、土地、建物、車、機械、ソフトウェアなどの資産のうち、取得価額が10万円以上の資産の総称です。法人がこれら資産を取得した場合、「どのような税金が発生するのか?」「いつ、いくら支払うのか?」「節税方法はあるのか?」このような疑問を持つ経営者や経理担当者の方のために、固定資産について解説していきます。

固定資産とは何か?

土地、建物、車、機械、ソフトウェアなどの資産のうち、取得価額が10万円以上の資産を総称して「固定資産」と呼びます。

 

法人税法上では全額損金として計上可能な30万円未満の「少額減価償却資産」も、固定資産に分類されます。

固定資産の種類

固定資産の種類は以下の通りです。

・【有形固定資産】具体的な形がある資産

土地、建物、車、機械など、いわゆる「不動産」や「動産」といった資産がこの分類に含まれ、さらに課税体系の違いから3つに細分できます。

 

  • ①土地・家屋…土地、建物
  • ②償却資産…構築物、機械装置、工具器具備品、造作費など
  • ③車両

・【無形固定資産】具体的な形がない資産

ソフトウェアや商標権、特許権など、無形の固定資産がこの分類に含まれます。

  • ④ソフトウェアなど

・【投資、その他の資産】

  • ⑤投資有価証券、長期貸付金、出資金など

課税対象の固定資産は?

これら固定資産のうち、課税対象となるのは①~③の有形固定資産です。

④、⑤については取得時や権利更新時に発生する印紙税(売買契約書に貼る印紙や特許庁に支払う印紙など)以外、所有する間に発生する税目はありません。

固定資産税について

固定資産税とは1月1日時点で所有する「土地・家屋」「償却資産」を所有している場合に課せられる税金(地方税)です。

固定資産にかかる税金の種類

上記の固定資産税以外に、どのような税目があるのか列挙してみましょう。

 

  • 都市計画税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 自動車取得税
  • 自動車重量税
  • 自動車税・軽自動車税
  • 印紙税

 

その他、自動車であれば軽油に課せられる軽油税、政令指定都市に延べ床面積1,000㎡以上の建物を所有又は賃借している場合には事業所税…など、代表的な税だけでもこれだけあります。

 

所有する資産に応じて課税される税目が変わり、課税される時期も異なります。

分類 資産名 取得時にかかる税目 取得後にかかる税目
税目 課税時期
納税時期
税目 判定時期 課税時期
納税時期
土地・家屋 不動産取得税
登録免許税

印紙税
不動産調書提出後
不動産登記をした時
売買契約書作成時
固定資産税
都市計画税
毎年1月1日現在に所有する
資産について課税
毎年4月中旬に賦課決定
(年4回分割払)
事業所税 決算期現在の延べ床面積に応じて課税
(要件あり)
決算日後
2か月以内
償却資産 印紙税 売買契約書作成時 固定資産税 毎年1月1日現在に所有する
資産について課税
毎年4月中旬に賦課決定
(年4回分割払)
車両 自動車取得税
自動車重量税
印紙税
自動車税
軽自動車税
車両
取得時
自動車取得税
自動車重量税
印紙税
車検時 車検の
有効期限
自動車税
軽自動車税
毎年4月1日現在に所有する資産について課税 毎年5月31日

 

1つ例に挙げると、「土地・家屋」と「償却資産」の固定資産税の税率は共に「1.4%」、「土地・家屋」が都市計画区域にある場合には、さらに都市計画税としてさらに「0.3%(上限)」が上乗せされます。

 

都市計画税の税率は市町村により異なりますので確認が必要です。

固定資産税の計算方法

固定資産税・都市計画税(以下、固定資産税等)の計算式は

 

固定資産税課税標準額 × 税率

 

固定資産税課税標準額とは、固定資産評価基準に基づいて各市町村長が固定資産の評価額を定めています。

 

「土地・家屋」については、不動産登記をかけた時点で都・市町村が誰の所有になったかを把握しており、職員が現地に赴き、現況を確認した上で評価額・課税標準額を決定していきます。ちなみにこの評価額は3年毎に見直しされています。

 

つまり、納税義務者である法人は何もする必要がなく、都・市町村役場が評価から税額の計算を行います。これを「賦課決定方式」といいます。

 

それに対して「償却資産」については、資産の増減を都・市町村役場が逐一確認していませんので、納税義務者が自分で評価額を計算し申告しなければなりません。

 

具体的には、評価額などを記載した「償却資産申告書」という書類を毎年1月31日までに提出し、税額を賦課決定してもらいます(ただし、評価額が150万円未満の場合は免税点以下ですので申告は不要です)

経理処理と支払い方法

固定資産税は「賦課決定方式」の税金であり、賦課決定通知日の属する事業年度で全額損金経理するのが原則です。

 

年税額が計算され、毎年4月上旬~5月に固定資産税等納税通知書として届きますが、ここに記載されている日付が「賦課決定通知日」です。

 

納期は年4回の分割で、各市町村によって納期限が違いますのでご注意ください。

固定資産に関する節税対策

これら固定資産のうち、償却資産、不動産や自動車を取得した時に発生する固定資産税に関する節税対策について解説していきましょう。

償却資産

償却資産」とは「10万円以上の有形固定資産」であり、法人税法上では全額損金となる30万円未満の少額減価償却資産も償却資産として申告しなければなりません。

国税と地方税では取扱いが違います。

 

ただ、10万円以上20万円未満の固定資産に限り「一括償却資産」という処理方法が認められています。「一括償却資産」とは、購入した固定資産をいったん資産計上し毎年1/3ずつ損金経理するという法人税法上の制度で、固定資産税においては「償却資産」とはなりません。つまり、固定資産税はかからないのです。

 

毎期経常的に黒字決算となる法人などは20万円未満の固定資産を「少額減価償却資産」で当期に全額損金とはせず、あえて「一括償却資産」で処理すれば長期的にみた場合、固定資産税の節税につながります。

 

また、赤字決算の場合にも「一括償却資産」で処理すれば損金を1/3に圧縮でき、なおかつ

固定資産税も節税できるというメリットがあります。

不動産取得税、登録免許税

不動産取得税」と「登録免許税」は土地・家屋を取得した際に発生する税金です。「登録免許税」は不動産登記をかける際に支払う税金であるのに対し、「不動産取得税」は登記完了後、都道府県に不動産取得申告書を提出した後に課税されます(賦課決定方式)。

 

ここで多いのが「土地・家屋の取得価額に、不動産取得税や登録免許税を含めなければならないのか?」という疑問です。税法では原則取得価額に含めなければなりませんが、特例として、税額が賦課決定された日に全額損金とすることも認められています。不動産に関してはこれらの税金が多額になるケースがほとんどですので、会社の決算状況に応じて処理を使い分けるのが良いでしょう。

 

赤字決算のときは取得価額に含めればマイナスを圧縮できますし、黒字決算のときは全額損金として利益を抑えることも可能です。また、税金全般に言えるのですが、不動産取得税や登録免許税も税額が確定した時点で損金経理できますので、黒字決算の場合、これらの未納分があれば未払金計上するべきです。

自動車取得時の諸経費

自動車取得税自動車重量税自動車税」は自動車を取得した際に発生する税金です。

 

これもまた会社の決算状況に応じて処理を使い分けるという選択肢があります。

 

赤字決算のときはすべて自動車の取得価額に含めてしまえば赤字幅を圧縮できますし、黒字決算のときは車両本体と自賠責保険料、リサイクル料を資産計上した残りを損金経理してしまえば節税にもつながります。

まとめ

以上のように、固定資産には国や地方から多くの税金が課せられますが、経理処理は税目や支出の内容によって「固定資産の取得価額に含めなければならない資産」「資産計上と損金経理いずれも認められる資産」「損金経理する資産」とさまざまです。

 

まずは税法上の取扱いを正しく理解した上で、会社の財務内容(赤字、黒字)に応じた経理処理を選択する必要があります。

Webライター/ライター
フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。

新着記事

人気記事ランキング

  • banner
  • banner