マイナンバーカードが保険証の代わりに!医療費控除も計算いらずの時代が来る

[取材/文責]マネーイズム編集部

あなたは、マイナンバーカードをお持ちですか? これがあれば、例えば住民票の写しや印鑑証明がコンビニでも受け取れるのですが、2021年からは、健康保険証の代わりとしても使えるようになるそう。医療費控除を受けるために必要だった、医療機関の領収書の保管や医療費などの計算、記入も不要になります。今回は、誰でも持つことができるその1枚の「これから」に焦点を当ててみました。

「マイナンバー」と「マイナンバーカード」は違う

そもそも「マイナンバー」とはどういうものか、復習しておきましょう。日本国内に住民票を持つ人全員にこれが交付されたのは、2015年10月でした。ひとことで言うと、それは、税金、公的保険、公的年金の管理のために、国民1人ひとり個別に12桁の番号を付与し、行政の効率化、生活の利便性の向上を目指そうという制度です。

 

本題にも関連することですので説明しておくと、1つ注意すべきなのは、全員に送られてきた「マイナンバー」(「通知カード」)と、「マイナンバーカード」(「個人番号カード」)は別物だということ。マイナンバーカードを持つためには、あらためて市区町村に申請しなくてはなりません。このカードは、住所、氏名、生年月日、マイナンバーが記載された「身分証明証」で、個人番号に付随する様々な情報が収められたICチップが搭載されているため、コンビニで住民票の自動交付を受けたりすることができるわけです。ちなみに、申請にお金はかかりません。

 

そのように、行政に対する申請手続きが簡素化されると同時に、マイナンバーの記載が必要となる(義務になる)シーンも増えました。一例を挙げれば、確定申告。申告書にはその記載欄があり、空白のまま提出すると、「後日、税務署から連絡をさせていただく」(国税庁ホームページ)ということになります。

 

余談ながら、この制度が導入されるにあたり、「副業が会社にバレる」という話が広がりました。しかし、そういう例は、実際には耳にしません。それもそのはずで、マイナンバーは、「行政機関が手続きのために利用する」というふうに用途が厳格に定められていて、民間企業が個人の所得状況を把握することなどは、認められていません。システム上も、それは不可能なのです。

 

これも誤解があるのですが、マイナンバーでは、情報が一元管理されるわけではありません。情報そのものは、今まで通り関連する省庁、機関ごとに収集・保管され、必要に応じて他のところにあるものを検索するのです。ですから、仮にどこかで情報漏洩が起こっても、マイナンバーに蓄えられたある人の個人情報が丸ごと盗まれる、といったことにはなりません。そうした仕組みも、理解しておくべきでしょう。

「カード」の利用で、確定申告もますます楽に?

さて、2021年分(申告期限22年3月15日)の確定申告から、このマイナンバーカードを使った医療費控除の申請手続きの完全自動化がスタートすることになりました。1年間の家族の医療費から、保険で補填された額を差し引いた分が10万円を超える納税者に適用されるのが、医療費控除。しかし、申告するためには、1年間に医療機関にかかった際の領収書を保管して、医療費を計算する必要があります。

 

現在でも、ネット上の電子申告で、マイナンバーカードを使った医療費控除の申請は可能なのですが、やはり受診した医療機関名や医療費などを、領収書を基に自ら記入しなくてはなりません。それが面倒で、制度を利用しないケースも多いようです。

 

マイナンバーカードを活用する新しいシステムでは、1年間の医療費を自動計算して税務署に通知するため、領収書の保管も煩わしい計算も不要になります。保険診療のデータを持つ社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険中央会、マイナンバー制度の個人用サイトである「マイナポータル」、それに国税庁のシステムを連携させることで、簡素化を実現するのだそうです。

 

具体的な利用の仕方を説明すると、確定申告の際に、まず国税庁の申告書作成のサイトに入って、マイナンバーカードで個人認証します。「医療費通知」のボタンを押すと、1年間の医療費の合計額が表示されるので、さきほどの控除の適用基準を超えていたら申請を行い、超えていなければ行わない。驚くほど簡単で、繰り返しになりますが、領収書の保管などは必要ありません。

 

併せて、マイナンバーカードは、21年3月から健康保険証として使えるようにもなります。これにより、利用者には、転職などで加入する公的医療保険が変わっても、保険証の交付を待たずに保険診療が受けられる、というメリットが生まれます。

 

政府がこうした施策を打ち出す背景には、今回の方針を明らかにした19年4月の時点で、マイナンバーカードの交付実績が1666万枚と、人口の13%程度にとどまっている、という実態があります。要するに、「通知カード」を受け取ったうちの10人に1人くらいしか、「個人番号カード」を作っていないのです。総務省の行った調査によれば、その最大の理由は、「カードを持つ利点がない」こと。だから、それを目に見える形にしよう、というわけです。

 

とすれば、今回の改正に続いて、マイナンバーカードのメリットを前面に打ち出す政策が実行される可能性は高いといえるでしょう。むしろカードを持たなければ損、という時代がくるのかもしれません。

まとめ

国民の多数が持たないマイナンバーカード。ただ、その利便性は拡充される流れにあります。今後の具体的な施策には、要注目と言えるでしょう。

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