確定申告の流れを徹底解説確定申告が必要な人・不要な人とは?

[取材/文責]長谷川よう

毎年2月から3月になると、確定申告のニュースを目にする人も多いのではないでしょうか。個人で仕事をしている人やサラリーマンで副業をしている人などは、確定申告が必要ですが、確定申告のことをきちんと知らないという人も意外と多いようです。そこで、ここでは確定申告の基礎からその流れまで解説します。

 

確定申告のながれ
  • 日々の帳簿付け(個人事業主の場合)
  • 必要書類の準備
    確定申告書Aまたは確定申告書B、青色申告決算書 または 収支内訳書、各所控除関係の書類 など
  • 確定申告書の作成
  • 確定申告書の提出
    管轄の税務署に行って提出 または 税務署へ郵送で提出 または e-Taxを利用
  • 税金の納付または還付

「確定申告の流れ」

確定申告とは 確定申告の流れ

まず、確定申告とはどのようなものかを見ていきましょう。わが国では、その1年間にもうけがある人は原則、国に税金を納める必要があります。しかし、国が一人ひとりのもうけを把握することは困難です。そのため、法律では、もうけがある人が自分で1年間の収入やもうけ、納める税金の金額を計算・確定し、国に申告することが定められています。この申告のことを「確定申告」といいます。

 

1年分のもうけを計算するので、その年内に収入やもうけ、納める税金の金額を計算・確定させることはできません。そこで、確定申告の申告期間は翌年の2月16日から3月15日までと決められています。税金の納付もこの期間に行います。確定申告のおおまかな流れは、次のようになります。

 

  • 日々の帳簿付け(個人事業主の場合)
    「帳簿付け(記帳)」とは、日々の売上や経費などの取引を、一つひとつ現金出納帳や売上帳などの帳簿に記載することです。
    2014年から、白色申告でも帳簿付けが義務付けられたため、青色申告・白色申告にかかわらず、個人事業主は確定申告書を作成する基となる帳簿付けが必要です。
    市販の帳簿へ手書きで記入したり、会計ソフトを利用したりして、帳簿付けをするのが一般的です。
  • 必要書類の準備
    確定申告書を作成する前に、必要書類を準備する必要があります。必要書類は大きく分けて次の3つです。

    • 税務署に提出する申告書
      確定申告書や青色申告決算書など(税務署の窓口や国税庁のホームページで入手)
    • 控除を受けるための証明書類
      生命保険料や地震保険料の控除証明書など(保険料や寄附金などの支払先が発行)
    • 所得などを計算するための書類
      源泉徴収票や支払調書など(勤務先や得意先が発行)
  • 確定申告書の作成
    確定申告では、個人の収入の形態などで作成する書類が異なります。

    • 確定申告書
      確定申告書には「A」と「B」の2つがあります。
      サラリーマンが医療費控除や住宅ローン控除などを使い、税金の還付を受ける場合は、確定申告書Aを使います。
      お店の経営やアパートの賃貸など、個人事業を営んでいる人(個人事業主)は、確定申告書Bを使います。
    • 青色申告決算書、収支内訳書
      個人事業主は、確定申告書とは別に、収支の内容を記載した書類を作成し、税務署に提出します。青色申告の場合は青色申告決算書を、白色申告の場合は収支内訳書を作成します。
  • 確定申告書の提出(~3月15日)
    作成した確定申告書や青色申告決算書などは、原則、2月16日~3月15日の間に、税務署に提出します。紙の確定申告書を作成している場合は、税務署の窓口もしくは郵送で提出します。郵送の場合は、郵便局の消印日が提出日となるため、期日が過ぎないように注意しましょう。
    e-Taxを使用する場合は、自宅のパソコンや税務署などの申告会場にあるパソコンを使って、電子申告を行います。e-Taxを使用する場合は、開始届出書の提出などの事前準備が必要です。
  • 税金の納付または還付
    確定申告を行い、納める税金や還付される税金がある場合は、税金の納付や還付を受ける必要があります。

    • 税金の納付
      所得税の納付期限は、申告と同じく原則、3月15日です。納付書に納付する金額を記載して、税務署や金融機関などで納付します。また、事前に届け出ることで、指定した銀行から引き落としで納付する「振替納税」やインターネットを使った納付方法なども選択できます。
    • 税金の還付
      税金の還付がある場合は、還付を受ける銀行名や口座番号などを確定申告書に記載します。
      還付されるまでの期間は、申告人数などにも左右されますが、概ね申告から1か月程度です。
  • (2019年11月7日追記)

所得税の基礎を理解しよう

確定申告では、納める税金の金額を計算し納付しますが、個人が1年間のもうけに対して支払う税金のことを「所得税」といいます。ここでは、所得税の基礎について見ていきましょう。

所得税とは 所得税の3大原則

所得税とは、サラリーマンの給与や個人事業主の売上などの1年間の収入から計算された所得(もうけ)に対して課される国税です。所得税の金額は、所得(もうけ)に税率を乗じて計算します。実は、この所得税は次の3つの基本的な原則のもと計算します。

 

所得税の3大原則

  • ①個人単位で計算する
    夫婦や家族で生活している場合であっても、所得税では、一人ひとりを1単位として計算します。例えば、夫が事業を行い、妻が会社員の場合、2人の収入で生計を立てていても、それぞれで所得税を支払う必要があります。
  • ②暦年を単位として計算する
    所得税は、1月1日から12月31日を単位とし、1年間に発生した所得をもとに所得税を計算します。
  • ③税金の負担できる能力に応じた計算をする
    所得税では収入の内容で所得税の計算方法を変えたり、もうけの金額によって税率を変えたりする(高い所得ほど高い税率)ことで、税金を負担できる能力に応じた税額となるようにしています。

 

確定申告をすすめていくと、所得税の計算で迷うことも多いでしょう。所得税の計算で迷ったら、3大原則に立ち戻って考える必要があります。

所得税を納めなければならない人

1年間でもうけがある人は、所得税を納める必要があります。では、外国に住んでいる日本人や日本に住んでいるが日本国籍がない人などは、所得税を納める必要があるのでしょうか。法律では、所得税を納めなければいけない人(納税義務者)を次のように定めています。

 

  • ①居住者
    居住者とは、次のいずれかの人をいいます。

    • 日本国内に住所がある人
    • 日本国内に現在まで引き続いて1年以上居所を有する人
    • ※居所とは、短期間の仮住まい(住所までは至らない程度)などのことです。非永住者の人も、居住者に含まれます。非永住者とは、日本国籍を有しておらず、かつ過去10年のうち5年以下の期間、国内に住所または居所があった人のことです。

  • ②非居住者
    居住者以外の人

 

つまり、日本国籍の有無や居住者であるかどうかにかかわらず、日本でもうけがあれば、原則として所得税を納める必要があります。

確定申告をしなければならない人と不要な人

ここまで、確定申告や所得税の基礎について見てきましたが、実は収入があるからといって、すべての人が確定申告をしなければいけないわけではありません。例えば、サラリーマンの人で確定申告をしたことがないという人も多いでしょう。法律では、確定申告をしなければならない人も定めています。ここでは、確定申告する人について見ていきましょう。

確定申告をしなければならない人と不要な人がいる

確定申告をしなければいけない人は、個人事業主とサラリーマンでそれぞれ次のようになっています。

①個人事業主の場合

個人事業主とは、会社などに雇われず、フリーで仕事をしている人のことです。例えば、個人でお店を経営している人やフリーランスの人などが個人事業主です。個人事業主で確定申告をしなければならない人は、「納める税金」がある人です。つまり、納める税金がない人は確定申告をする必要がありません。

 

「納める税金がない」とは、事業が赤字の場合や、黒字でも各種控除の金額の方が大きく、税金が0円になる場合のことです。ただし、納める税金がないかどうかは、1年間の収入や経費、もうけの金額を知っていないと判断できません。税務署へ確定申告書の提出が不要なだけで、1年間の収入や経費、もうけの金額の計算は行っておく必要があります。

②サラリーマンの場合

サラリーマンは、毎月の給料から所得税が天引きされているため、基本的に確定申告は不要です。ただし、次の場合は確定申告をしなければなりません。

 

  • 1年間の給料が2,000万円を超える人
  • 副業をしている人

 

会社からの給料以外に副業をしている人は、原則、確定申告が必要です。例えば、本業以外でアルバイトをしている場合やフリマアプリなどで商品を販売している場合は、確定申告をする必要があります。ただし、1年間の副業の所得金額(もうけ)が20万円以下の場合は確定申告をする必要はありません。例えば、フリマアプリの1年間のもうけが15万円の場合は、確定申告が不要です。

 

※生活で使っていたもの(家具や衣服)が不要になったので売却をした場合は、売却で得たお金には所得税がかかりません。よって、もうけの金額にかかわらず、確定申告の必要はありません。

 

上記①②に該当しない人は、確定申告は不要です。

確定申告をしたほうが良い人

確定申告が不要な場合でも、確定申告をしたほうが良い人がいます。それは、次のような場合です。

①確定申告をすると税金が戻ってくる人

例えば、医療費控除がある人や初めて住宅借入金控除を受ける人、寄付をした人などは、確定申告をすることで税金が戻ってきます。逆にいうと、確定申告をしないと税金が戻ってこないので、注意が必要です。

②個人事業主で赤字を繰り越す人

個人事業主で青色申告をしている場合は、赤字を翌年以降に繰り越すことが可能です。ただし、赤字を翌年以降に繰り越す場合には、確定申告をすることが条件となっています。

③銀行からの融資を考えている場合

事業用の融資や住宅ローンの融資を考えている場合、確定申告をしていないと融資を受けることができません。この場合は納める税金がなくても、収入を証明するために確定申告をした方が良いでしょう。

まとめ

確定申告を行わないといけない人や、所得税を納めないといけない人には、さまざまなケースがあり複雑です。自分が確定申告をしないといけないのか、所得税を納めないといけないのかどうか不安だという人も少なくないでしょう。確定申告や所得税の納付の対象となるかどうか迷ったら、ぜひこの記事を参考にしてください。

 

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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