サラリーマンの副業が本格的に解禁へでも、税金はどうなっているの?

[取材/文責]マネーイズム編集部

政府が進める「働き方改革」の目玉の1つが、サラリーマンの「副業解禁」です。大企業でも徐々に就業規則を改める動きが出ており、近い将来、会社勤めをしながら趣味と実益を兼ねたサイドビジネスで稼ぐのが珍しくない世の中が、来るかもしれません。ところで、稼ぐのはいいのですが、気になるのは税金。「確定申告が必要だ」と聞くけれど、具体的にどうしたらいいのでしょう? そこで今回は、「副業の税金」についてまとめました。

そもそも副業の稼ぎにかかる税金とは?

サラリーマンが支払うべき税金(所得税など)は、毎月会社が源泉徴収(天引き)して、本人の代わりに税務署に納めています。払い過ぎがあった場合には、年末調整で戻ってくるわけですから、納税に関しては、ある意味至れり尽くせり。でも、副業の場合は、年間の所得が20万円を超えたら、自ら税務署に「確定申告をしなければなりません。

 

裏を返せば、所得が20万円以下ならば、申告の必要はありません。税金を支払う必要は生じない、ということ。ちなみに20万円というラインは、「所得」(利益)であって、「収入」(売上)ではありません。副業のためにかかった「経費」、例えばパソコンの購入費を売上から差し引いたのが所得。税額の計算も、この所得がベースになります。

 

確定申告で申告するのは、基本的に国に支払う「所得税」です。さらに、その所得税額に応じた「住民税」がかかってくるのも、本業の給与と同じ。この副業の住民税の徴収方法には、会社の天引きに上乗せされる「特別徴収」と、自宅に納付書が送られる「普通徴収」があります。まだ副業が認められていない会社で隠れて副業をしている場合、確定申告の際に後者を選択しておかないと、住民税の金額から会社にその事実がバレる危険性があります。

副業に消費税がかかることもある

副業にかかる可能性のある税金には、もう1つ、この10月から税率が10%にアップする「消費税」があります。この税金は、所得ではなく売上が課税のベースになります。課税対象になるのは、「2年前の売上高が1000万円を超えた人」。2017年に副業の売上が1000万円を超えていた場合は、2019年に消費税の申告を行わなくてはならない、という仕組みになっています。

 

しかし、売上が1000万円を超えたら必ず納税義務が生じるかといえば、そうではありません。消費税には、「土地の譲渡及び貸付」、「有価証券等の譲渡」、「学校教育」、「住宅の貸付」といった17の非課税取引(※1)が定められていて、例えば副業で賃貸マンション経営をした場合、その家賃収入に消費税は課税されないのです。ただし、それはあくまで「住宅」の場合。借り手が事務所や店舗などに使うときには、その賃料に消費税がかかってきます。

 

※1消費税の非課税取引については、国税庁ホームページを参照。

「雑所得」か「事業所得」か

ところで、サラリーマンの副業は、税法上、「雑所得」に分類される場合がほとんどです。しかし、もしそれが事業所得」として認められれば、税務上、大きなメリットを享受することができます。

 

まず、事業所得であれば、給与所得などとの「損益通算」が可能です。副業が赤字(経費が売上を上回る)になった場合には、その損失分を本業の所得から差し引くことができる、すなわち所得税などを減らすことができるのです。さきほど、「所得が20万円以下ならば、確定申告は不要」と言いましたが、こうしたケースでは、申告した方が得ということになります。例えば、どうしても実現したい夢を託して、副業を立ち上げた。初めは赤字を覚悟の上、などという場合には、本業で「節税」しつつ将来に向けて副業の腕を磨く、といった行動も可能になるでしょう。

 

また、「青色申告特別控除」(※2)が受けられ、「青色事業専従者給与」(※3)が認められるのも、事業を進めるうえでは大きな助けになります。ただ、繰り返しになりますが、これらの特典を受けるためには、副業で得るものが雑所得ではなく事業所得である、と認められる必要があります。

 

では、両者の違いはどこにあるのでしょうか? 国税庁は、事業を「独立、継続、反復して行われる仕事」と定義しているものの、確定申告の際に「事業所得」にすべきか「雑収入」なのかという明確な基準は、設けていません。だからといって、「これは事業所得です」と申告すれば通るかといえば、その可能性は極めて低いでしょう。「いいえ、これは雑所得ですね」と税務署に指摘されれば、修正申告を余儀なくされることになります。

 

現実には、サラリーマンが土日を利用して講演を行ったり、文章を書いてお金をもらったり、ネットオークションに出品して稼いだり、FXや仮想通貨で儲けたり、といったいかにも「副業的」な行いは、まず事業所得とは認められません。「むしろこちらが本業で、それに投資する資金を稼ぐためにサラリーマンをやっているのです」というくらいの実態があって、初めて税務署を納得させることができる、と言ったらいいでしょうか。

 

もちろん、副業が事業所得として認められる例がないわけではありません。副業の中身自体も多様化しています。迷う場合には、税金のプロである税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

 

※2青色申告特別控除
複式簿記による帳簿付けなどの条件を満たして青色申告で確定申告を行うと、65万円または10万円の特別控除(その金額を所得から差し引ける)が受けられる。(電子申告ないし電子帳簿保存の場合)
※3青色事業専従者給与
事前の申請などの要件を満たせば、配偶者などに対する給与を経費にできる。

確定申告はどうする?

最後に、確定申告について、簡単に述べておきましょう。「副業はいいけれど、申告は面倒くさそう」と感じている人もいるでしょう。面倒かどうかは、事業の規模や業種、当人の感じ方などによって違いがあると思いますが、電子申告や会計ソフト、クラウド会計サービスなどの普及により、以前に比べれば格段に楽になったのは確かでしょう。

 

ざっくり言って、売上が数十万円程度で、仕入先もそんなに多くはない、という規模だったら、十分自分で申告できるはず。ただし、間違って税金を少なく申告、納税してしまった場合には、やはり修正申告が必要になります。その場合、本来の税とは別に延滞税などが課せられることがありますから、注意しましょう。「自分には自信がない」、「あまりにも煩わしい」と感じたら、申告を税理士に頼むこともできます

まとめ

副業の所得が20万円を超えたら、確定申告が必要です。ミスのないように、やり方がわからなかったり、疑問を感じたりした場合には、税理士に相談してみてはいかがでしょう。

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