こんなミスで税金がとられる?罰則的な税金「附帯税」とは?

[取材/文責]岡田桃子

税金というと法人税や所得税、消費税などがまず思い浮かぶと思いますが、税金の中には附帯税という罰則的な税金もあるということをご存知でしょうか。この税金は、悪意をもって税金をごまかそうとした場合はもちろん、確定申告の提出期限を過ぎてしまう、期ずれに気づかず間違った申告をしてしまう、といったミスによっても発生します。今回は、この附帯税の具体的内容とそのリスク・回避法について、詳しく解説します。

罰則的な税金とは?

「国税通則法」によれば附帯税とは、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及び重加算税の総称です。これらは納期限をすぎて本税を納付した場合や、税務調査などによって本税を追加徴税された場合に、ある種の行政制裁としてプラスアルファで課される税金です。基本的に、附帯税と刑事責任の有無は無関係ですが、あまりにも悪質な場合については刑事責任を追求される可能性があります。

以下では、附帯税の具体的な内訳とその概要、および税額の計算方法を紹介していきます。

延滞税

概要

原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。

具体的には以下のような場合が考えられます。
(1) 申告などで確定した税額を法定納期限までに完納しないとき。
(2) 期限後申告書又は修正申告書を提出した場合で、納付しなければならない税額があるとき。
(3) 更正又は決定の処分を受けた場合で、納付しなければならない税額があるとき。

いずれの場合も、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じた延滞税を納付しなければなりません。なお、延滞税は本税だけを対象として課されるものであり、加算税などに対しては課されません。

延滞税の計算方法

法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて次の割合により延滞税が課されます。
(1)納期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで
◆原則として年「7.3%」

ただし、平成12年1月1日から平成25年12月31日までの期間は、「前年の11月30日において日本銀行が定める基準割引率+4%」の割合となります。
また、平成26年1月1日以後の期間は、年「7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合となります。なお、具体的な割合は、次のとおりとなります。

期間 割合
平成29年1月1日~平成29年12月31日 2.7%
平成27年1月1日~平成28年12月31日 2.8%
平成26年1月1日~平成26年12月31日 2.9%
平成22年1月1日~平成25年12月31日 4.3%
平成21年1月1日~平成21年12月31日 4.5%
平成20年1月1日~平成20年12月31日 4.7%
平成19年1月1日~平成19年12月31日 4.4%
平成14年1月1日~平成18年12月31日 4.1%
平成12年1月1日~平成13年12月31日 4.5%

※特例基準割合とは、各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合です。

(2)納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以後
◆原則として年「14.6%」

ただし、平成26年1月1日以後の期間は、年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合となります。なお、具体的な割合は、次のとおりとなります。

期間 割合
平成29年1月1日~平成29年12月31日 2.7%
平成27年1月1日~平成28年12月31日 2.8%
平成26年1月1日~平成26年12月31日 2.9%
平成22年1月1日~平成25年12月31日 4.3%
平成21年1月1日~平成21年12月31日 4.5%
平成20年1月1日~平成20年12月31日 4.7%
平成19年1月1日~平成19年12月31日 4.4%
平成14年1月1日~平成18年12月31日 4.1%
平成12年1月1日~平成13年12月31日 4.5%

特例

偽りその他不正の行為により国税を免れた場合等を除き、次の場合には一定の期間を延滞税の計算期間に含めないという特例があります。

(1) 期限内申告書が提出されていて、法定申告期限後1年を経過してから修正申告又は更正があったとき。
(2) 期限後申告書が提出されていて、その申告書提出後1年を経過してから修正申告又は更正があったとき。

利子税

概要

元の納期限を延長し、延納または納税申告書の提出期限の延長をした場合に生じる税で、所得税、贈与税、相続税などがその対象となります。
なお、所得税(復興特別所得税も含む)については、平成29年現在、納期限である3月15日までに納付すべき税額の2分の1以上を納付している場合に限り、残りの税額の納付を5月31日まで延長することができます。

贈与税については、納付期限までに延長申請書および担保提供関係書類の提出を条件として5年を上限とした延納が可能に、相続税については担保を提供することで延納が可能になります。ただし、相続税の場合、延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下であれば、担保を提出せず延納できます。
また、これらの延納期間中においては、延滞税は発生しません。

利子税の計算方法

①所得税
期間中は年1.7%の割合で利子税がかかります。

②贈与税
贈与税については、納税の期限までに金銭により一時に納付することを困難とする事由がある場合で、その期限までに申請書及び担保提供関係書類を提出するなど、一定の要件を満たすときには、5年以内の年賦による延納をすることができます。延納期間中は年6.6%の割合で利子税がかかります。

③相続税
相続税の利子税は、贈与税と同様に、利子税割合で決まり、各年の特例基準割合が7.3%に満たない場合、次式が適用されます。

 延納利子税割合(年割合) × 延納特例基準割合÷ 7.3%

注:0.1%未満の端数は切り捨て

しかし、贈与税と異なり相続税の利子税割合は一律に定まっておらず、割合が区分ごとに異なります。詳しくは下記のURLでご確認ください。
国税庁ホームページNO4211相続税の延納

過少申告加算税

概要

売上計上の期ずれなどが原因で申告内容に誤りが生じ、納めた税額が本来納めるべきものよりも少ないと税務調査で発覚した場合にかかる税です。税務調査で発覚した場合、当該者は修正申告により申告の誤った内容を修正して提出します。そして、その修正申告書の提出日が過少申告加算税の納期限となり、当該者はその日のうちに納めなければなりません。もし、納付の日が提出日とずれた場合は延滞税がかかってしまうので、注意してください。

過少申告加算税の計算方法

過少申告加算税の税率は、新たに納めることになった税金の10%相当額です。ただし、新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%になります。本来納めるべきだった税額と実際に収めた税額の差額によって異なり、差額が50万円以下の場合は10%、50万円以上の場合は15%となります。正当な理由がある場合や税務調査を受ける前に自主的に修正申告をした場合は、過少申告加算税は発生しません。

無申告加算税

概要

申告をしなかった場合に課せられる税です。過少申告加算税と同様に、税務調査で発覚した後、期限後申告書を提出し、その提出日が無申告加算税の納付期限となります。期限後申告によって納める税金は、申告書を提出した日が納期限となりますので、その日に収める必要があります。また、この場合は、納付の日までの延滞税を併せて納付する必要があります。

無申告加算税の計算方法

無申告加算税の税率は全体として過少申告加算税よりも高く、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額となります。

税務調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合、無申告加算税は5%に軽減されます。正当な理由がある場合、法廷申告期限から一月以内に申告を行った場合は、無申告加算税は発生しません。

不納付加算税

概要

源泉徴収税額について、法廷納期限後に納付・納税の申告があった場合、延滞税と合わせて課せられる税です。

不納付加算税の計算方法

延滞税では完納日までの日数によって税額が異なりますが、不納付加算税の場合は、日数に関わらず、未納税額の10%が不納付加算税額となります。

税務調査を受ける前に自主申告をすると、税率は5%に軽減されます。また、正当な理由がある場合、法廷申告期限から一月以内に納付した場合は、不納付加算税は発生しません。

重加算税

概要

悪意をもって無申告や過少申告をしたと見なされた場合に課せられます。具体的には、確定申告に税の仮装や隠ぺいがあると発覚した場合は、過少申告加算税、無申告加算税の代わりに、重加算税を納付することとなります。附帯税の中で最も重いペナルティとされ、税額も他よりも格段に高くなっています。

重加算税の計算方法

①悪意をもって過少申告・不納付をしたと判断された場合
過少申告加算税・不納付加算税の代わりに、35%に設定された税率分の税額が課せられます。
②悪意をもって申告しなかったと判断された場合
無申告加算税の代わりに、40%に設定された税率分の税額が課せられます。

また、重加算税においては、他の加算税と異なり、税の軽減や免除といった措置はありません。

罰則的な税金に伴うリスク

罰則的な税金、つまり附帯税はどれも決して軽視できず、支払いの際は以下のように、かなりのリスクが納税者に課せられます。

経費から負担することができない

原則として、所得税及び復興特別所得税、相続税、住民税、国税の延滞税・加算税、地方税の延滞金・加算金、罰金、科料、過料などは、必要経費に参入できないとされています。ここでいう延滞金・加算金は附帯税の一部ですので、この文言は附帯税が会社の必要経費に含まれないことを表しています。つまり、附帯税の納付は自らの財産から行わなければなりません。附帯税はペナルティとしての税なので当然、負担を負うことになります。

刑事罰に発展することも

附帯税の中でも重加算税の納付といった重いペナルティを負う場合、該当者はそれに加え、無申告犯や故意の申告書不提出による逋脱犯、脱税犯としての刑罰が別に科せられる場合があります。例えば、相続税や贈与税を不正に免れたとみなされた場合、以下のような刑が科せられます。

①無申告犯
「正当な事由がなくて期限内申告書又は特別縁故者に対して相続財産が分与された場合の修正申告書をその提出期限までに提出しなかった者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる」
②故意の申告書不提出による逋脱犯
「期限内申告書又は特別縁故者に対して相続財産が分与された場合の修正申告書をその提出期限までに提出しないことにより相続税又は贈与税を免れた者は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処せられる。
免れた相続税額又は贈与税額が500万円を超えるときは、情状により、500万円を超えた金額で、その免れた相続税額又は贈与税額に相当する金額以下の罰金とすることができる」
③脱税犯
「偽りその他不正の行為によって相続税又は贈与税を免れた者は、10年以下の懲役若しくは1,000万円 以下の罰金に処せられ、又は併科される。
免れた相続税額又は贈与税額が1,000万円を超えるときは、情状により、1,000万円を超えた金額で、 その免れた相続税額又は贈与税額に相当する金額以下の罰金とすることができる」

これらの刑罰は当然罰金を経費から支払うこともできず、前科として記録されるため、今後の会社経営などにも深刻な影響を及ぼします。こうしたリスクは絶対に回避しましょう。

企業経営のリスク回避のために

附帯税の内容とリスクについて理解していただけたと思います。附帯税は必要経費として扱うことができないうえ、刑事罰にまでなりかねないことを考えると、絶対に回避しなければならないものです。しかし、税まわりの作業では、確定申告の際の費用計上や提出書類の準備など、うっかり誤ってしまいがちな箇所がいくつもあり、それを防ぐには手間と確かな知識が必要不可欠です。税まわりのリスクを取り除き安全な企業経営を行っていくためにも、まずは税務のプロである税理士に相談することを、強くお勧めします。
一方で、節税に強い税理士であれば、税務署から「脱税」と指摘を受けにくいような対策をアドバイスしてくれます。過度な節税を行ったり、申告ミスによって附帯税を課せられたりしてしまっては元も子もありませんので、リスクヘッジという意味でも、節税対策やきちんとした会計管理というのは重要になってきます。

まとめ

今回、附帯税について概要と計算方法について紹介しました。附帯税によって思わぬ出費が生じてしまう可能性もあるため、日頃から会計処理に気を配る必要があります。また、決算対策も同様で、税務署から目をつけられないようにするためには、節税対策についても慎重になる必要があると言えるでしょう。税理士と相談し、なるべくリスクを取らずに適切な節税対策を練ることをおすすめします。

東京大学卒。
経理業務で得た知見や、中央官庁時代に得た法律や制度に関するナレッジを分かりやすく解説します。

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