【会社設立・青色申告】節税のカギを握る青色申告承認申請書について解説

[取材/文責]阿部正仁

青色申告ならではの節税をテーマにした書籍やサイトはよくありますが、青色申告承認申請書を深く掘り下げた内容はあまり多くありません。しかし、青色申告承認申請書について知らないと、提出期限までに提出できないこともあり得ます。そこで、今回は青色申告承認申請書に絞って解説します。

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青色申告承認申請書とは

青色申告における青色申告承認申請書の位置づけなどについて詳しく解説します。

青色申告を受けるための必要書類

そもそも青色申告を選択するかどうかは会社の任意であり、選択する場合に限り青色申告承認申請書の提出が必須になります。未提出でも特に税務署から提出を促されることはありませんが、ただ青色申告の特典を受けることが出来なくなります。

青色申告承認申請書の提出期限

会社を設立した場合、青色申告承認申請書の提出期限は次のうち早い日の前日になります。
 
(1)設立の日以後3ヵ月を経過した日
(2)設立年度の事業年度終了の日(決算日)の前日

 

たとえば、3月末決算の会社を2019年8月1日に設立したとします。
 

(1)設立の日以後3ヵ月を経過した日:2019年10月31日(=2019年11月1日の前日)
(2)設立年度の事業年度終了の日の前日:2020年3月30日(=2020年3月31日の前日)
 

上記(1)の2019年10月31日が青色申告承認申請書の提出期限になります。

 

一方、別の例として7月末決算の会社を2019年5月1日に設立した場合、提出期限は次の通りになります。
 

(1)設立の日以後3ヵ月を経過した日:2019年7月31日(=2019年8月1日の前日)
(2)設立年度の事業年度終了の日の前日:2019年7月30日(=2019年7月31日の前日)
 

上記(2)の2019年9月29日が青色申告承認申請書の提出期限になります。

 

特に「設立の日以後3ヵ月を経過した日」よりも「設立年度の事業年度終了の日」のほうが早い場合、提出期限を決算日と勘違いしないようにしましょう。

 

なお、税法上の期限が休日などに当たる場合、休日明けが提出期限になります。たとえば、12月31日が税法上の期限の場合、税務署が開設する1月4日が提出期限です。

青色申告が承認されるとは

青色申告承認申請書を提出期限までに提出した後、税務署から承認を受けてはじめて青色申告が認められます。承認されるパターンは次の通りです。
 

  • 税務署から承認の通知があった場合
  • みなし承認:事業年度終了の日までに承認または却下の処分がなかった場合

 

要するに却下の処分がなければ、青色申告は承認されるため、実務上ではみなし承認が多い傾向にあります。

青色申告承認申請書の記載事項

青色申告承認申請書の記載事項は次の項目になります。

(1)法人の情報

商号、住所、代表者氏名、資本金などを記載します。

(2)青色申告を受ける事業年度の期間

設立年度の場合、設立日から決算日までの期間を記載します。

(3)作成する帳簿の情報

帳簿の種類はもちろん、税理士の関与度合い(外部委託する帳簿作成業務の範囲)も記載します。

青色申告承認申請書を提出期限までに確実に提出するためには

青色申告承認申請書は提出期限よりも1日でも遅れて提出した場合、設立年度は青色申告の承認が受けられません。そのため、提出期限までに確実に提出するための知識を身に付けることが、青色申告の特典を利用した節税対策には欠かせません。

青色申告承認申請書を提出期限までに提出するためのポイント

実は、青色申告承認申請書という書類の性質を知ることが提出期限までに提出するために必要な知識になります。

青色申告承認申請書は信書である

「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」が信書に該当します。そのため、税務署(特定の受取人)に青色申告の承認を受ける(差出人の意思表示)ための青色申告承認申請書は信書になります。信書という位置づけを知ることが後述する提出方法の理解に役立ちます。

そもそも青色申告承認申請書の提出時期は発信主義を採用しています。発信主義とは、税務署という離れた場所に対して通知(提出)した時点で契約が成立する考え方です。一方、発信主義と対比する到着主義とは、税務署に到着した時点で契約が成立する考え方です。

 

「信書」と「発信主義」という2つキーワードを踏まえた上での青色申告承認申請書の提出方法と提出時期は次の通りです。
 

  • 窓口への提出:税務署内の受領日
  • 「第一種郵便物の郵便物」または「信書便物」である信書便:消印日
  • オンライン(e-tax):送信日

 
小包郵便物や宅急便など信書便以外での送付は認められず、たとえ送付したとしても到着主義が採用され、税務署への到着日が提出時期になってしまいます。

提出した証拠を必ず残す

青色申告承認申請書の提出を忘れたのにもかかわらず、青色申告の特典を利用した節税対策をすれば、後日税務調査で指摘されてしまいます。税務署とのトラブルを避けるだけなく、「青色申告の承認を受けた」という自己確認にもなるため、提出した証拠は必ず残しましょう。具体的には、青色申告承認申請書の控えを保存したり、配達証明で郵送して送付履歴を残したりするのが証拠を残す方法になります。

 

また、万が一、青色申告承認申請書の控えに日付印が押されていなっかた場合、税務署に連絡後、きちんと押してもらいましょう。

青色申告承認申請書が提出できないケース

実務上、青色申告承認申請書が提出できず、設立年度は白色申告になってしまうケースがあります。その原因を知ることでも、提出漏れの防止に役立ちます。

会社設立の手続きで手一杯なのが提出できない原因

青色申告の特典を利用したいのにもかかわらず、青色申告承認申請書が提出できない原因は会社設立の手続きで手一杯のためです。たとえば、すでに実績のある個人事業主が得意先から要請されて法人成りした場合、本業が忙しいために青色申告承認申請書などの新設法人の届出書類にまで手が回らないことは十分に考えられます。

ケース1:自分で会社設立の手続きをする場合

外部に依頼せず、自分で会社設立の手続きをする場合、定款作成や設立登記に労力を割きます。たとえば、設立に必要な会社法などについて書籍やインターネットで調べたり、書類を作成するために何度も役所に足を運び、担当官に聞いたりすれば、多くの時間を費やしてしまいます。しかも、作成書類に不備があれば、公証人役場から定款の一部修正や法務局で補正(設立の登記書類の訂正)を求められ、役所までの移動時間などがかかってしまいます。

ケース2:設立登記のみを依頼する場合

設立後にも手続きが必要だという理解が不十分な場合、設立登記のみを専門家に依頼しても新設法人の届出書類まで手が回らないケースが多い傾向にあります。特に青色申告承認申請書の提出は任意のため、未提出でも税務署から催促されず、設立年度は白色申告になってしまうケースが見受けられます。

税理士事務所の創業サービスを有効活用する

多くの税理士は税金だけではなく、会社設立の実務にも精通しています。また、必要に応じて提携先の司法書士などとタイアップするケースがあります。

 

特に税理士事務所の創業サービスは利用価値があります。法人の設立間もないことを考慮し、税理士報酬が低く設定されているためです。もちろん、青色申告承認申請書は提出期限までに提出してもらえます。

まとめ

青色申告の特典を利用して節税をするためには、青色申告承認申請書を提出期限までに提出するだけは不十分です。帳簿書類の不備などで条件を満たしていなかった場合、青色申告がさかのぼって取り消されてしまいます。その結果、設立年度からの節税対策が否認され、増税される可能性が高くなります。青色申告承認申請書を提出期限まで提出し、条件を満たす帳簿書類を作成する専門家が税理士です。まずは当サイトで、創業サービスを実施している税理士を探すことをおすすめします。

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TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。

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