中小企業の倒産の原因ランキング!会社を倒産させないための対処法

[取材/文責]細井山豊

中小企業にとって厳しい情勢が続く中、中小企業数は徐々に減少を見せています。
では実際に倒産してしまう企業は、どのような理由で倒産しているのでしょうか。またそれを回避するためにはどうすればよいのかについて、解説します。

データから見る、中小企業の倒産状況

最初に、中小企業白書で紹介される以下の図1は、ここ15年の中小企業数の推移を表したグラフです。1999年から2014年にいたるまで、徐々に小規模事業者・中規模企業ともに減少していることが読み取れます。特に中規模企業に関しては、この15年間で25%ほど数が減少しています。

図1 中小企業数の推移 (出典:中小企業白書)

続いて、中小企業白書から抜粋した倒産件数の推移グラフです。ここでは、近年最も倒産の多かった2008年より、年々倒産件数が減少していることがわかります。

図2 倒産件数の推移 (出典:中小企業白書)

2008年に起こったリーマンショックによる不況から景気はある程度持ち直しており、全体の倒産件数は減少傾向にあります。しかし、2013年以降大幅に倒産件数を減らしている大企業に対して、中小企業の倒産件数はほとんど減っていません。このように、大企業と比較すると中小企業の置かれる立場は、依然として厳しいことが分かります。

中小企業の倒産の原因ランキング!

では実際に、中小企業はどのような理由で倒産しているのでしょうか。中小企業庁から発表されている原因別の倒産数を見てみると、2016年の1月〜10月は以下の順になっています。

倒産の状況(平成28年10月分)(データ元:中小企業庁)

1位 販売不振

やはり原因として圧倒的に多いのが、販売不振による倒産です。販売不振とはシンプルに、売上高が減少して収益が伸びないことを指します。
売上高の減少は、徐々に減少していくケースと、急激に減少するケースが考えられます。徐々に減少していく場合には、適切な経営指標を用いて、早期に認識して対策を打つ必要があります。急激に減少する場合には、迅速な経営判断と抜本的な事業の見直しが必要になるでしょう。

2位 既往のしわよせ

既往のしわよせとは、長期的に業績が悪化しているのにも関わらず、それを把握していないために倒産してしまうことを言います。適切な経営指標を利用して業績を追うことができておらず、キャッシュ・フローの動態を把握できていない会社は、結果的に倒産する恐れがあります。
先代や過去から資産が残されていて、それを食いつぶして経営している場合、会社が安全であると思い込んでしまうことが多々あります。そういった会社は、資産が限界値を下回った途端に倒産してしまうでしょう。

3位 過少資本

以前は、株式会社は資本金1000万円以上、有限会社は資本金300万円以上という最低資本金制度がありましたが、この制度が撤廃されて以降、資本金の少なさから倒産する事例は増加していました。近年は減少傾向にありますが、自己資本が少ない会社は未だ多いことから注意が必要です。
過少資本による倒産を避けるには、利益が出た際に新たな投資を行うばかりでなく、内部留保して会社の体力の充足に努めることが重要です。

4位 放漫経営

放漫経営とは、経営者の経営能力の欠如や会社の私物化、あるいはずさんな管理体制などが原因となって会社が倒産に追い込まれることを言います。中小企業においては比較的陥りやすい問題で、利益が出ているときは表面化しづらいことも特徴に挙げられます。
ワンマン経営の結果すべてが放漫経営となるわけではありませんが、経営者の周囲の人間が高い経営意識を持ち、経営の意思決定を監視していく必要があります。

5位 連鎖倒産

不況の際に話題となる連鎖倒産ですが、建設業や製造業に多く見られます。これらの業種では特定の取引先に依存する傾向が強く見られ、その場合得意先の倒産に巻き込まれてしまう恐れがあります。
対策としては、自社の販売先・仕入先を多様化させることで、経営リスクを分散させることが重要になります。

6位 設備投資過大

会社の規模を拡大する上で必要になる設備投資ですが、過大に投資すると資金繰りに苦しみ、倒産の原因となってしまいます。一般的に、設備に投じた資金は、その設備などで生み出される利益によって回収されると考えるのが妥当です。つまり設備投資を行った場合、利益が生み出されるようになるまでは設備投資費の返済で資金繰りは圧迫されるということです。
対策としては、設備投資費が適切な範囲内にあることを確認するとよいでしょう。例えば「固定資産」を「純資産+固定負債」で割った、「固定長期適合率」が便利です。
短期借入金を設備投資の元手にすることは、設備投資費返済と借入金の利息に二重に苦しむことになるので、もっとも避けなければなりません。

7位 信用性の低下

会社は取引先や銀行、顧客といった多くのステークホルダーと関わって経営していかなければなりません。その上で会社の信用性が低下すると、銀行からの追加融資が行われなくなったり、売上が低下したりといった影響を受け、倒産の原因となりえます。
自社の利益を追求するばかりではなく、周囲との関わり方まで気にした上で、信用性を高く維持できるような経営を目指しましょう。

8位 売掛金回収難

売掛金の回収は直接資金繰りに影響してきますが、特に中小企業では売掛金を確実に回収しようという意識が低い場合が多く、その結果、倒産にまで追い込まれることがあります。
売上目標や売掛金回収のルールを定め、回収率を高める意識を常に持つことが求められます。

9位 在庫状態悪化

在庫を過剰に抱え込むことで倒産につながってしまうこともあります。先程の設備投資と同様に、在庫はキャッシュ・フローと密接につながっています。在庫を過剰に抱えすぎると、会計上は黒字に見えても、キャッシュが底をつきて黒字倒産、という結末になりかねません。
これを防ぐには、在庫数を適切に管理することが必要です。在庫は必要なときに必要なだけあり、必要のないときはゼロになるのが理想的であると知っておきましょう。

まとめ

以上に挙げたような倒産理由は、普段より適切に経営状態を把握し、何らかの問題が起こった際迅速に行動できるようにしておけば、回避することが可能です。
倒産につながりうるような要因にしっかり目を向け、健全な経営を心がけましょう。

東京大学卒。現、同大学院所属。
ベンチャー企業の経営やビジネスを学んでおり、経営に役立つ様々な知識やノウハウを習得中。

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