費用と損金と経費、その違いとは

[取材/文責]税理士:浦田泉

私たちはよく、広告宣伝費や給与、交際費など、会社が事業用に支出した金銭のことを「費用」や「経費」と呼びます。また、税理士さんなどは、これに加えて「損金になる・ならない」なんていう言い方もします。経費と費用、損金。これらは同じ支出を指すものなのですが、実は微妙に意味合いが異なるのです。この微妙な違い、わかりますか?
一番、意味が広いのが「費用」です。一般的に会社が支出した金銭すべてを費用と呼びますが、会計上では「経済的価値の減少」を指し、減価償却費のように金銭の支出を伴わないものも含まれます。簡単に言えば、収入・収益の反対語にあたるのが費用といえます。
一方、もっとも限定的に使われる言葉が「損金」です。法人税の計算上、収益から差し引くことができる費用の額のことを損金といいます。
会社が支出した「費用」のすべてを損金にできるわけではありません。交通違反の罰金や、いわゆる費途不明金などは損金にできません。交際費や役員に対する賞与、保険料などにも制限があります。また、不動産賃貸における保証金や開発費などの繰延資産など、損金化のルールが決められているものや、前払い費用のように損金にできる時期が決められているものもあります。
定義しづらいものが「経費」です。経費というのは「経営費用」の略称です。
一般的に「経費」というときには「損金」を指していることが多く、たとえば「会社の必要経費になる」とか「経費として計上する」という場合は損金と同じ意味で使われています。 また、所得税には「損金」という言葉がないため、所得税の計算で収入から差し引くことができる費用の額のことを「経費」「必要経費」といいます。
さらに、「経費」を「費用」と同じように広範囲に使う例もあります。「飲み代を経費で落とす」などの場合は、その飲み代が交際費に該当すると必ずしも損金にできるわけではありませんので、この場合の「経費」は「費用」と同じ意味で使われていることになります。経費を「販売費・一般管理費」の総称として、「原価」と区別して呼ぶこともあります。 文脈によってフレキシブルに使える分、定義しづらい言葉が「経費」、といえるでしょう。

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