役員退職金を2度出す場合の注意点

[取材/文責]税理士:浦田泉

企業において同一の役員に複数回の役員退職金が支給される場合があります。たとえば、先代社長が引退して非常勤取締役や監査役、相談役などに就任した際に1回目の役員退職金を支給し、さらに役員そのものを辞める際に2回目の役員退職金を支払う場合などです。
今年、「役員の分掌変更等の場合の退職給与」に関する法人税基本通達(9-2-23)が改正され、複数回の役員退職金を支給するために注意が必要になりました。今日はそんなお話です。
法人税の基本通達(9-2-23)において、役員の分掌変更又は改選による再任等に際し、(1)常勤役員が非常勤役員になった、(2)取締役が監査役などになった、(3)報酬がおおむね50%以上減少した-ような場合に支払われた退職金については役員退職金とみなすと規定されています。
(1)と(2)の要件の場合、つまり非常勤取締役や監査役に降格等したとしても、実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる場合は、役員退職金としては認められない規定が同通達には記載されています。形式だけの肩書き変更では、認められないしくみになっています。
中小企業などの場合、先代社長が引退しても実質的に経営の主導権を握っているなどということは良くある話です。したがって、(3)の「報酬がおおむね50%以上減少した場合」の規定を利用して、役員退職金を支払うことが多かったようです。
ところが、このたび通達が改正され、(3)の場合においても「実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる場合」を除く規定が追加されています。つまり、改正された法人税基本通達(9-2-23)においては、実質的に経営の主導権を握っている役員の場合、役員の分掌変更又は改選による再任等に際して支払われた退職金については、一切、損金算入が認められないということになりますのでご注意ください。
なお、改正された同通達(9-2-23)においては、(注)として「退職給与として支給した給与には、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない」ことも追加されています。

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