交際費から除外される飲食費
1. はじめに 平成18年度の税制改正により法人の交際費に関する規定が一部見直されました。
具体的には、これまで交際費として損金不算入制度の規制を受けていた飲食費のうち、一定の要件を満たしたものであれば、交際費から除外され損金算入できるというものです。この規定は平成18年4月1日開始事業年度分から適用されますので、既にこの規定の適用を受けている法人、これから開始する事業年度から適用を受ける法人がありますが、交際費に関する事項は、一定の業種にのみ特別に係るものではなく、全ての法人において共通に関係する事項です。 また、資本金等による制限がないため、資本金1億円超の法人においては、所得に大きな影響を与えることも予想されるため、取扱いについては留意が必要です。
2. 改正概要
交際費のうち、1人当たり5,000円以下の飲食費(社内飲食費を除きます)で飲食その他これに類する行為のために要する費用については、一定の要件の下、交際費から除外します。用語の意味は次のとおりです。
(1) 社内飲食費 社内飲食費とは、専ら当該法人の役員もしくは従業員またはこれらの親族に対する接待等のために支出する飲食費をいいます。
(2) 『飲食その他これに類する行為のために要する費用』であること 平成18年5月、国税庁が公開した「交際費等(飲食費)に関するQ&A」において、「飲食その他これに類する行為」、 「飲食等のために要する費用」について具体例を掲げて説明しています。
①「飲食その他これに類する行為」 例えば、得意先等への弁当の差入れで、得意先等において差入れ後相応の時間内に飲食されることが想定されるものは、
「飲食その他これに類する行為」に該当しますが、単なる飲食物の詰め合わせの差入れは、中元・歳暮と変らないことから贈答のために要する費用として、交際費に該当します。(『Q&A(Q3)』)
②「飲食等のために要する費用」 例えば、飲食とともに発生するテーブルチャージ料やサービス料等は ・通常、飲食に伴い付随的に発生する ・飲食店に対して直接料金を支払う こと等から、飲食等のために要する費用に含まれますが、飲食店への送迎費等は、 ・飲食に伴い付随的に発生したとしても、送迎という行為と飲食という行為は直接的な関係ではない ・飲食店に対して直接料金を支払うものではない こと等から、交際費等に該当します。(『Q&A(Q4)』)
(3) 類する行為のために要する費用
「類する行為のために要する費用」とは、例えば、飲食等のため発生するテーブルチャージ料やサービス料等で飲食費とともに直接飲食店等に支払うものが該当します。得意先を飲食店等へ送迎するための費用は飲食等に伴い発生する費用ですが、直接飲食店等へ支払う費用ではないことから送迎費は交際費等から除外される飲食費には該当せず、交際費等に該当します。
(4) 『1人当たり5,000円以下の飲食費』であること
得意先を接待する場合、一次会、二次会と連続して飲食等を行う場面も多くなってきます。この場合、同日、同メンバーでの飲食の場合は、一次会、二次会での飲食費の合計により5,000円以下となるか否かを判定するのでしょうか?
一次会、二次会がそれぞれ単独で行われているのが認められるときは、一次会、二次会ごとに1人当たり5,000円以下であるのかを判定します。例えば、一次会はレストラン等の食事がメインの店、二次会はスナックやバー等の酒がメインの店等、全く別の業態の飲食店の利用であれば、単独の行為と認められて別々に判定が可能です。
(5) 一定の要件 この規定の適用を受けるためには、次に掲げる事項を記載した書類を保存していることが必要です。 ①その飲食等のあった年月日 ②その飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係する者の氏名または名称及びその関係 ③その飲食等に参加した者の数 ④その費用の金額及びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地 ⑤その他参考となるべき事項
3. 会議費と交際費
この改正により会議に際して生じた飲食費についても5,000円超の場合は交際費となり、5,000円以下の場合は交際費から除外されるのでしょうか?会議に関連して発生する飲食費等の取扱いにもこの規定が適用されるのか、疑問が生じることがあるかもしれません。この改正は従来からある会議費等の考え方はそのままで、交際費に該当する飲食費のうち一定の要件に該当する場合には、1人当たり5,000円以下であれば交際費等の範囲から除外されるというものです。
したがって、交際費に該当しない会議費等で通常必要と思われる範囲の費用であれば、1人当たり5,000円超であってもその支出は会議費等となり交際費には該当しません。
4. 社内ルールの構築
経理担当者が会計処理をする際、支出の内容が交際費から除外する飲食費に該当するのか否かは、領収書のみでは判断困難です。そのため、飲食費の精算、書類の保存等に当たっては、たとえば次のような社内ルールの構築も必要です。
飲食費が会議費等であるのか交際費であるのかの判断基準を経理担当者以外の者にも教示し、飲食をした者に支出の内容を判断させた上で、上記「2.改正の概要(5)の一定の要件」のみを記述する飲食費精算書等を作成させる
経理担当者が判断可能な一定の必要事項および上記「2.改正の概要(5)の一定の要件」を記載した飲食費精算書等を飲食した者に作成させる
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