新型コロナで保留の税務調査が「再稼働」?注意すべきポイントをおさらいします

[取材/文責]マネーイズム編集部

新型コロナの感染拡大は、税務署が行う税務調査にも影響を与えています。「対面」が制限される中、実地調査が思うに任せない現実があるためです。ただし、税務当局は「税金を平等に納めてもらう」のが仕事。パンデミックだからといって、「税逃れ」を見逃してくれるわけではなく、年内には本格的な調査を再開させる、という見方もあります。いざというとき慌てないために、あらためてその手法と流れを確認しておきましょう。

調査件数は大幅ダウン

国税庁が公表した「令和元事務年度(2019年7月~20年6月)法人税等の調査事績の概要」によると、この1年間の税務調査(実地調査)件数は、約7万6,000件で、前年度比22.9%減りました。ちなみに、調査の結果認められた申告漏れ所得金額、追徴税額も、それぞれ前年度比43.5%、13.7%の減少となっています。

 

国税庁は、「悪質な納税者には厳正な調査を実施する一方で、その他の納税者には簡易な接触も実施」と、「ターゲットを絞った税務調査」を行ったと説明していますが、そうせざるを得なかった原因が新型コロナにあるのは、明らかでしょう。

 

しかし、そうした調査の「自粛」が今年秋頃には解除される、という見方も出てきました。今後のコロナの感染状況にもよりますが、本格的な再開となれば、税務署は「取り忘れた税も取りに来る」公算大。「厳しい時に税務調査はないだろう」と高をくくるのは、危険です。

税務調査はいつ来るのか?

不意を突かれて慌てないよう、税務調査とはどういうものなのか、おさらいしておきましょう。

◆そもそも税務調査とは?

税務調査とは、毎年行われる法人、個人の確定申告に対して、その内容が正しいかどうかを税務署が調査することを言います。調査官には「質問検査権」という法的な権限が与えられており、納税者側には、その質問に答え、帳簿や領収書など求められた資料を提出する義務があります。

◆通常は「任意調査」

税務調査には、「任意調査」と「強制調査」があります。

 

・任意調査
税務調査の多くは、税務署が行う「一般調査」で、帳簿を中心に申告内容の適正さが調査されます。任意ですから、調査はあくまでも納税者の同意のもとで実施され、理屈の上では拒否することも可能です。しかし、正当な理由なく資料の提出を拒んだりすると、罰則の対象になるので、注意が必要です。また、任意調査には、一般調査だけでは不十分と判断される場合に国税庁資料調査課が行う「特別調査」もあり、こちらは次の「強制調査」に近い、より厳しい調査が行われます。

 

・強制調査
申告内容に多額、かつ悪質な「脱税行為」などが認められた場合に、国税庁査察部(マルサ)が行うのが「強制調査」です。捜査令状を持って行われる一種の犯罪捜査になりますから、もちろん拒否はできません。

◆どんな法人、個人が対象に?

法人であれば、4~5年に1度の税務調査は、そう珍しいことではありません。ただ、3年以内のスパンで調査に入られたような場合には、税務署から「継続管理法人」(不正が見込まれる会社)と認識されている可能性があります。

 

一般的には、例年に比べ多額の利益を計上した、財務状況に大きな変動がみられる、景気のよい業界、あるいは不正の多い業種に身を置いている――といった場合に、税務署から目を付けられることが多いようです。コロナの状況下で、決算内容が平時とは違う事業者は多いはず。調査になっても、数字の変化について整合性のある説明ができるよう、注意を払っておくべきでしょう。

◆調査が行われる時期

1年の中でも、税務調査の集中するシーズンがあるのをご存知でしょうか。税務署の人事異動は7月に行われます。このため、例年引き継ぎなどの業務のある6~7月には、税務調査は行われません。また、3月には個人の確定申告があるため、年明けの1~3月も、調査は行いにくい時期です。

 

そのため、消去法で8~12月が「税務調査のシーズン」ということになります。言い方を変えると、調査に関しては、1年分をこの時期に集中して片付ける必要があるわけです。今年の秋に税務調査が本格的に再開されるのではないか、という推測の根拠は、ここにあります。

税務調査の流れ

税務調査の大まかな流れは、次のようになっています。

税務調査の対象になった場合には、基本的に税務署から調査の開始日時、場所、調査対象税目、調査期間などについて、電話で事前通知があります。税理士の代理権限証書付きで税務申告書が提出されていれば、その税理士に連絡が入ります。

 

調査のどのくらい前に連絡が来るのかについて、国税庁は「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」で次のように答えています。

 

実地の調査を行う場合の事前通知の時期については、法令に特段の規定はなく、また、個々のケースによって事情も異なりますので、何日程度前に通知するかを一律にお示しすることは困難ですが、調査開始日までに納税者の方が調査を受ける準備等をできるよう、調査までに相当の時間的余裕を置いて行うこととしています。

通常、10~20日前には通知されるようですが、日時については、調整が可能です。ここで、国税庁がわざわざ「調査開始日までに納税者の方が調査を受ける準備等をできるよう」と述べているのは、重要です。期日までに、顧問税理士などと相談しながら、きちんと準備を進めることが大事です。

 

また、調査には、税理士の同席、対応が認められています。調査に詳しい「税のプロ」のサポートを受けるべきでしょう。

税務調査に臨む姿勢はどうあるべき?

「税務署は怖いから、言うことを聞くしかない」「調査官には徹底抗戦して、追徴などには一切応じない」――。調査に臨む姿勢としては、どちらも正しいとは言えません。

 

税務署員は、「税の公平性を実現する」という使命感を持った公務員であり、人間です。人間である以上、感情があります。納税者が過度におどおどしていたり、非協力的な態度を取ったりすれば、「不正を隠しているのではないか」と感じるかもしれません。

 

ポイントになるのは、さきほども述べたように、「整合性のある説明ができるかどうか」です。反対に、調査官の言うことが理屈に合わないと思ったら、理路整然と反論すればいいわけです。調査には「臆することなく、誠意を持って対応する」ことを心掛けてください。

まとめ

新型コロナの影響で滞っていた税務調査が、本格的に再開されるかもしれません。特に、財務状況に大きな変化があった場合などには、いつ調査になっても慌てないように備えを進めておくのがいいでしょう。もし税務調査の対象になった場合には、実績のある税理士にサポートを依頼することをお勧めします。

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