やってみました!消費税の「振替納税」手続き簡単で自動引き落とし。ただし、注意点も

[取材/文責]マネーイズム編集部

会社が税金の納付を「代行」してくれるサラリーマンと違い、個人事業主は、所得税、地方税、消費税などの税金を自ら申告し、納税する必要があります。ただ、その納付の方法は、かつてに比べて多様化し、自分にとって都合のいいものを選択することができるようになりました。さて、ライター業を営む筆者は、今年初めて消費税を預金口座からの自動引き落とし=「振替納税」で行いました。手続きのやり方や感じたメリット、あらためて気づいた注意点などをレポートします。

銀行窓口に出かけていたが

筆者の場合、所得税については、原稿料などの支払元ですべて源泉徴収(※)されているため、毎年払い過ぎた分の還付を受けています。その他の、地方税(東京在住なので、都税と区税)や国民健康保険料などは、自治体からまとめて送られてくる隔月ないし毎月払いの納付書で「コンビニ納付」を行い、消費税については、申告をお願いしている会計事務所からもらう納付書を持って銀行に行き、「窓口納付」を行う、というのが例年のパターンでした。

 

なぜ今年消費税を「振替納税」にしようと思ったのかといえば、「面倒くさいから」に尽きます。地方税なども同じだろう、と言われるかもしれませんが、これらはバーコード付きの納付書をコンビニに持っていけば、そこで納付することができます。買い物のついでに済ませればよく、わざわざ納税のために足を運ぶ必要はありません。ちなみに、今では当たり前になったコンビニでの納税ですが、始まったのは10年ほど前(2008年)のことでした。

 

では、消費税は、どうしてコンビニ納税ができないのか? 税金は、金額が30万円を超えると、コンビニでは支払うことができないのです(だから、30万円超の納付書にはバーコードが付いていません)。納付書で支払おうと思ったら、金融機関か税務署の窓口に出かけるしかありません。消費税は「一括払い」が原則のため、どうしてもそのラインを超えてしまいます。

 

毎年、多額の現金を持って出かけていき、混んでいると長時間待たされる窓口納税には、大きなストレスを感じていました。今年は新型コロナの感染長期化という事情も加わり、自宅に居ながらにして支払いが完了する振替納税への切り替えを実行したわけです。

 

※源泉徴収
給与、報酬などの所得の支払者が、その所得の支払をする際に、所定の方法により所得税額を計算し、支払金額からその所得税額を差し引いて国に納付すること。

手続きは、すべてネットで完了できる

「振替納税」について概観しておくと、それが可能な「国税」は、

 

◆申告所得税及び復興特別所得税
・期限内に申告された確定申告(3期)分及び延納分
・予定納税(1期、2期)分
◆消費税及び地方消費税(個人事業者)
・期限内に申告された確定申告分及び中間申告分

 

です。

 

利用可能額に制限はなく、基本的にどの金融機関でも口座引き落としが可能ですが、「インターネット専用銀行などの一部の金融機関や、インターネット支店などの一部の店舗」では、利用できない場合もあるようです。なお、振替納税に手数料はかかりません。

 

では、振替納税への切り替えのために、具体的にどのような手続きを行ったのか、説明してみます。

 

納付手続きの方法には、

  • (1) 書面提出
    振替納税を利用する税の納期限までに、「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」(振替依頼書)を作成し、納税地を所轄する税務署または振替依頼書に記載した金融機関へ提出する。
  • (2) オンライン提出
    パソコン及びスマートフォンから「e-TAX」にログインし、入力画面に沿って必要事項を入力し、振替依頼書を送信する。

の2つの方法がありますが、筆者は(2)のオンライン提出をパソコン上で行いました。

 

「e-TAX(国税電子申告・納税システム)」は、国税に関する申告、納税および申請・届け出を、インターネットを利用して行う国税庁のシステムです。筆者はこのシステムを利用するのも初めてでした。ですから、まずはその利用のための「利用者識別番号」の取得と「暗証番号」の登録が必要でした。

 

最初に、e-TAXホームページの「個人の方」→「e-TAXを始めるための準備をする」→「利用者識別番号の取得」と進みます。

 

識別番号の取得には、

  • ①WEBからマイナンバーカードを使ってアカウントを登録する
  • ②WEBから利用者識別番号を取得する
  • ③マイナポータルの「もっとつながる」機能からe-TAXを利用する
  • ④WEBからID・パスワード方式の届出を作成・送信する
  • ⑤税務署に行って、ID・パスワード方式の届出を作成・送信する
  • ⑥書面で利用者識別番号を取得する
  • ⑦税理士に依頼し、利用者識別番号を取得する

という方法があります。なお、①、③、④で取得するためには、マイナンバーカードが必要です。

 

筆者は②の方法を選択しましたので、それに沿って説明を続けます。

 

「利用者識別番号の取得」の「取得方法②」→「e-TAXの開始(変更等)届け出書作成・提出コーナー」→「開始届出書(個人の方)新規」と進み、必要事項を記入し、送信すれば、半角数字16桁の「利用者識別番号」が発行されます。

 

これを取得したら、あとは国税庁の「振替依頼書オンライン提出の流れ」に従い、e-TAXの画面上で振替依頼書を作成、送信すればOK。受付受領のメールが、税務署から届きます。

 

どちらかというとPCの扱いは苦手で、途中で入力ミスなども犯した筆者でしたが、今の作業に要した時間は、20~30分といったところでしょうか。すでにe-TAXを利用している人や、マイナンバーカードを使う場合などには、さらに簡単に手続きを完了できるはずです。

1度依頼書を出せば「自動延長」

今年(2021年)の消費税の振替日は5月24日でした。税務署は意外に「親切」で、10日以上前の5月12日には、振替日や金額などが記載された「振替納税のお知らせ」メールが来たほか、28日には振込確認のメールも届きました。

 

ところで、この振替納税は、依頼書を提出すれば次回以降も自動的に継続されることになっています。ただ、消費税は、年間の課税売上高が1,000万円を超えた場合にかかる税金です。仮に課税事業者だった(売上が1,000万円を超えていた)けれど、コロナの影響で非課税になった。しかし、その後また売上が伸びて課税事業者に戻った――というような場合、振替納税を行うために、あらためて手続きをする必要はないのでしょうか?

 

税務署に聞いたところ、「その必要はありません」とのことでした。1度手続を行えば、消費税の納税が生じた場合には、その都度自動的に振替が行われることになります。

預金残高には要注意

便利で時間のロスも減らせる振替納税ですが、注意点もあります。一番気をつけなくてはならないのは、振替口座の残高不足です。さきほどの「お知らせ」メールには、「振替期日に引き落としができなかった場合、納期限の翌日から納付の日までの日数に応じて、延滞税が加算されることになりますので、ご注意ください」とありました。そうした事態は、避けなくてはなりません。

 

振替納税では、領収書は発行されません。それが必要な場合は、金融機関か税務署の窓口で納付する必要があります。また、納税証明書の発行が可能になるまで、口座引き落としから1週間程度かかる場合もあることも、頭に入れておきましょう。

まとめ

口座の残高不足に気をつければ、振替納税のメリットは大きいと感じます。「利用者識別番号の取得」の⑦にもあるように、税理士の力を借りることも可能ですから、相談してみるのもいいでしょう。

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