「ビッグマック指数」とは何か?インフレや物価との関係について解説

[取材/文責]奥谷佳子

マクドナルドのメニューのなかに「ビッグマック」という商品があるのをご存じの方も多いでしょう。しかし、何気なく食べているビッグマックが実は経済指標として利用されていることをご存じの方は少ないかもしれません。今回は身近な経済指標である「ビッグマック指数」について解説します。

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最新の景気動向を示す「経済指標」

「経済指標」とは何か?

国内外を問わず、私たちの身の回りには様々な「経済指標」があります。

 

例えば、国内の物価上昇の割合を表す指標として「消費者物価指数」、日本国全体の生産規模を表す指標として「GDP(国内総生産)」などがあります。

 

対海外の指標に目を向ければ、国家間の通貨交換レートを示す指標として「外国為替レート」がありますし、株式であれば「日経平均株価」「TOPIX(東証株価指数)」などが指標として利用されています。

 

会社の経営者の方であれば「完全失業率」や「政策金利」などが気になるところです。

 

これらの「経済指標」に共通しているのは、ある1つのものを基準として比較している点です。比較対象があるからこそ、現在の状況を知ることができるわけです。

 

「消費者物価指数」や「GDP(国内総生産)」、「完全失業率」などは基準となる年度の物価や総生産などを基準としています。

ユニークな経済指標「ビッグマック指数」

経済学を専攻していれば別ですが、これら「経済指標」を理解するためにはまず、指標を計算するために必要なデータに対する経済的知識が必要になります。しかし、データ自体が漠然としたものであることも関係して、「経済指標」が示す内容を身近に感じることができないというのが正直なところです。

 

この経済指標が下がったことで自分の生活にどのような影響があるのか、経済指標の上昇・下落がホントに自分に関係あるのか、といった感じでしょう。

 

生活感をもって捉えることが難しい「経済指標」ですが、面白い経済指標に「ビッグマック指数」というものがあります。

 

ビッグマックと聞けば、ハンバーガーを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

その名の通り「ビッグマック指数」とは、ハンバーガーのビッグマックを指標としたユニークな経済指標です。

 

今からさかのぼること30年以上前の1986年、イギリスの経済雑誌が発案した経済指標で、毎年1回、誌上で各国のビッグマックの販売価額を 発表されています。各国におけるビッグマックの販売単価をもとに各国間の購買力を比較し、指数と為替レートの乖離から為替レートの適正値やインフレ・デフレといった物価動向を推察するという面白い試みです。

 

ハンバーガーの販売価格であれば誰もが親しみをもって理解できますし、計算式も単純なので抵抗もなく興味を持てるでしょう。

「外国為替レート」と「ビッグマック指数」

「外国為替レート」とは何か?

「ビッグマック指数」を解説する前に、「外国為替レート」の仕組みについて簡単に解説しましょう。

 

「外国為替レート」とは二国間の通貨の交換レートを表す経済指標です。

 

例えば日本円とアメリカドルを例に挙げてみましょう。

 

「1ドル=120円」であれば、1ドル札一枚で120円と交換できます。逆に手元に120円あれば1ドル札を手にできるわけです。

 

これが「1ドル=130円」になったとしましょう。今までは1ドルで120円しか交換できなかったものが130円手にすることができ、10円多くもらえることになります。逆に今まで120円で1ドル手に入ってたものが、もう10円追加した130円を出さないと1ドルが手に入らなくなります。

 

これがどのような状態を表しているかというと、120円から130円に推移することでドルに対して円が弱くなった、ということを意味しています。これが「円安」です。

 

反対に「1ドル=110円」に推移すればドルに対して円が強くなりますので「円高」と呼びます。

外国為替レートを分かりやすく表現したのが「ビッグマック指数」

外国為替レートについて把握できたところで、これを全世界に広げてみます。二国間で考えれば理解できることも、対象国が増えれば増えるほど比較がより複雑になります。

 

日本円がアメリカに対しては強いが、ユーロに対しては弱い、ではアメリカとユーロではどちらが強いのか?というようにその都度為替レートを通して読み解かなければなりません。

 

そこで、比較するための基準を各国共通で販売されている「ビッグマック」とし、比較しやすくしたわけです。

 

ビッグマックは、同じ製造工程でそれぞれの国の原材料や人件費、水道光熱費などを使用して作られます。すなわち国家の様々な経済的要素を含んで製造されていると考えられますので、国家全体の経済状態を表す基準として適しているいえます。国家の経済要素を含んだ同一製品の販売価額を国家間で比較すれば、経済状態の差は一目瞭然です。

また、馴染みのある商品ですから誰もが親しみをもって理解することもできます。

 

ちなみに「ビッグマック指数」の最新データは、2021年度でアメリカが621円、日本が390円、イギリスが522円となっており、同じビッグマックでも国家間で販売価額に差があることがわかります。

「ビッグマック指数」が示す経済指標

「ビッグマック指数」は2国間の「購買力平価」を示す指標

では、このビッグマックの販売価額の差額が表している「経済指標」とは何かについて解説します。

 

結論から言えば、「ビッグマック指数」は比較する2国間の「購買力平価(Purchasing Power Parity)」を表しています。

 

「購買力平価」には「絶対的購買力平価」と「相対的購買力平価」の2種類がありますが、ビッグマック指数が表すのは「絶対的購買力平価」です。

 

「絶対的購買力平価」を簡単にいうと、日本とアメリカといった2国間の購買力をベースに外国為替レートが決まるとする説です。
 

例えば、ビッグマックの販売価額が日本で250円、アメリカで4ドルだったとします。

 

外国為替レートが「1ドル=125円」だとしたら、アメリカでのビッグマックの販売価額は日本円で500円となり、日本に比べ2倍の販売価額です。

 

もし、アメリカのビッグマックが日本と同じ250円になるための適正レートは「1ドル=62.5円」であると考えるわけです。

 

「ビッグマック指数」を使えば今後、日米の為替レートは125円から62.5円の円高に向かって推移していくだろう、と予測できます。

「ビッグマック指数」とインフレ(物価上昇)の関係

2021年度のビッグマック指数を見る限り、日本のビッグマック指数はその他先進国に比べかなりの低価格だとわかります。

購入する側からすれば安いに越したことはないのですが、経済としてはあまり良い状態とはいえません。販売価額が安いということは物価が下落しているということであり、商品に付加している人件費=賃金が低下していることを意味します。これがデフレ状態です。

 

商品を購入する消費者は賃金が低下した従業員です。賃金が低下した結果、消費を抑える動きになりますので、商品が売れません。商品が売れなければ業績が悪化した企業は従業員の賃金をさらに削減します。賃金を削減された従業員はまた消費を抑える…といったように「デフレスパイラル」という悪循環に陥ります。

 

現在は「物価が下がった」と歓迎しても、将来的にはデフレ状態が継続し日本経済全体が縮小傾向に向かうのではないかという懸念があります。

まとめ

経済用語の羅列では理解が難しい経済指標も、ビッグマックという身近な存在を通して比較してみれば抵抗なく楽しみながら理解できます。日本の経済状態を理解するためにも一度ビッグマックの販売価額を調べてみてはいかがでしょうか。

Webライター/ライター
フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。

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