マイニングにも税金がかかる?マイニングと税金の関係とは

[取材/文責]長谷川よう

ビットコインなどの仮想通貨を得る手段のひとつに、マイニングがあります。マイニングをすると仮想通貨を入手することになりますが、その場合の税金はどうなるのでしょうか。
ここでは、マイニングに税金がかかるのか、税金がかかるのなら税金の発生するタイミングはいつかなど、マイニングと税金の関係を解説します。

そもそもマイニングとは何?

はじめに、仮想通貨(暗号資産)のマイニングとはどのようなものかを見ていきましょう。

日本円や米国ドルなど、通常の通貨はその国の中央銀行が発行や管理をしています。一方、ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)には、中央銀行のように発行や管理をする公的な機関がありません。そのため、第三者同士でネットワークを通じて、仮想通貨(暗号資産)を管理しあう仕組みになっています。

仮想通貨(暗号資産)の発行についても、第三者同士で行います。仮想通貨は複雑な計算作業を行い、第三者による取引の承認および確認作業を受けることで、初めて新規で発行を受けることができます。この第三者による取引の承認および確認作業のことを「マイニング」といいます。一般的には、マイニングはコンピュータを使って行われます。

実は、マイニングには「ソロマイニング」「プールマイニング」「クラウドマイニング」の3種類があります。ソロマイニングが個人でマイニングをする方法であるのに対して、プールマイニングは、複数人で共同してマイニングをする方法です。また、クラウドマイニングは、自分ではマイニングをせず、マイニングをしている企業などに出資し、分配金を受け取る方法です。

マイニングで得た利益は事業所得または雑所得になる

所得税では、収入をいくつかの所得区分に分類して、所得金額や税金の計算を行います。

そのため、マイニングの税金を見ていく前に、まずはマイニングで得た利益がどの所得になるのかを把握する必要があります。また、どのタイミングで税金が発生するのかも重要です。
そこで、ここではマイニングの所得区分と税金の発生するタイミングを見ていきましょう。

事業所得と雑所得の違い

マイニングで得た利益は、事業所得または雑所得になり、課税されることが多いです。事業所得とは、事業から得た所得のことです。事業とは、その収入を得る行為を独立して、しかも毎年、継続・反復して行っているものをいいます。一方、雑所得とは、他の所得に属さない雑多な収入のことをいいます。

つまり、マイニングをある程度の規模で、毎年継続して行っているなら「事業所得」に、一度だけなど継続性がなく行っているなら「雑所得」になります。事業所得と雑所得の所得金額の求め方は同じです。次の計算式で求めます。

所得金額=収入金額-必要経費

事業所得も雑所得も、マイニングで得た収入から必要経費を差し引いた金額が所得金額になります。ただし、事業所得で青色申告をしている場合は、最大65万円の青色申告特別控除をさらに差し引くことができます。事業所得で青色申告をしている場合の所得金額は、次の計算式で求めます。

所得金額=収入金額-必要経費-青色申告特別控除額(最大65万円)

また、マイニングで損失が出た場合、事業所得の場合は給与所得などと相殺(損益通算)することができますが、雑所得の場合は損益通算できないので注意しましょう。

マイニングで税金が発生するタイミング

マイニングには仮想通貨を受け取る、出金するなど、さまざまなプロセスがあります。では、どのタイミングで税金が発生するのでしょうか。マイニングで税金が発生するタイミングは、主に次の2つです。
●マイニングで報酬を受け取ったとき
●その仮想通貨を売却したとき

仮想通貨を出金したときではなく、マイニングで報酬を受け取ったときに税金が発生するので注意が必要です。
例えば、マイニングで日本で100万円相当の仮想通貨を受け取り、その仮想通貨を得るためにかかった経費が40万円だった場合の所得金額は、次のようになります。

所得金額=収入金額100万円-必要経費40万円=60万円
※マイニングではありませんが、仮想通貨で買い物をしたときにも税金が発生します。

マイニングで税金が発生する際の注意点

ここからは、マイニングで税金が発生する際の注意点について見ていきましょう。

経費は忘れずに計上する

所得税は、所得金額に税率をかけて計算します。そのため、所得金額が低いほど納める税額も低くなります。所得金額を抑えるためには、計上できる経費は忘れずに計上しなければなりません。マイニングで計上できる経費には、次のようなものがあります。

マイニングで計上できる主な経費 内容
マイニング機材代(パソコン代) マイニングをするパソコンなどの機材
インターネット代・通信費 ネットワークを使ってマイニングする際のインターネットプロバイダー料金や通信費
取引手数料 仮想通貨取引を行う際の手数料
セミナー費用 マイニングに関するセミナーの費用
教材・雑誌代 マイニングに関する教材や雑誌の購入代
水道光熱費 水道代やガス代、電気代など
自宅でマイニングをしている場合は家事按分が必要
地代家賃 事務所などの家賃

自宅でマイニングをしている場合は家事按分が必要

そのほかにも、マイニングに関する支出は経費にすることができます。

確定申告は忘れずに行う

マイニングで収入がある場合は、確定申告も忘れずに行う必要があります。しかし、次のケースでは、確定申告をしなくても良いことになっています。

●納める税額がない場合
マイニングで損失が出ている場合や、黒字でも所得控除を使うと納める税金が出ない場合などは、確定申告は不要です。

※青色申告特別控除を使う場合は、確定申告が必要のため、青色申告特別控除により納める税金がない場合は、確定申告をする必要があります。

●副業でマイニングをしている場合で、マイニングの所得が20万円以下の場合
会社員が副業でマイニングをしている場合で、他に副業をしていない場合は、マイニングで得た所得金額が20万円以下であれば、確定申告が不要です。

ここで示されている「20万円以下」という基準は収入金額ではなく、収入金額-必要経費で求める所得金額なので、間違えないように注意しましょう。確定申告が必要な場合は、毎年翌2月16日から3月15日までの間に、確定申告と納税が必要です。

確定申告で提出が必要な書類は、事業所得と雑所得で異なります。それぞれの所得で、確定申告で必要な書類は、次のとおりです。

【事業所得の場合】

・確定申告書B(第一表、第二表)
・青色申告決算書(青色申告の場合)または収支内訳書(白色申告の場合) 

【雑所得の場合】

・確定申告書A(第一表、第二表)

そのほか、生命保険の控除証明書など個人の状況によって、必要書類が異なります。

確定申告の期限に遅れて確定申告書の提出や納税をした場合は、延滞税などのペナルティが課される可能性があります。忘れずに、期限内に確定申告書の提出と納税を行うようにしましょう。

まとめ

マイニングとは、仮想通貨(暗号通貨)で第三者による取引の承認および確認作業を受けることをいいます。マイニングにより、初めて仮想通貨の報酬を受けることができます。

マイニングで得た利益は、事業所得または雑所得になります。原則、マイニングで利益を得た場合は確定申告が必要ですが、所得区分により、必要書類や確定申告の要・不要の基準も異なります。

また、確定申告の期限に遅れて、確定申告書の提出や納税をした場合は、延滞税などのペナルティが課される可能性があるので、注意が必要です。まずは、自分が行っているマイニングがどの所得に該当するのかを把握することから始めましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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