新卒社員が知っておきたい「住民税」給与天引きはいつから始まる

[取材/文責]長谷川よう

会社員が受け取る給料には、所得税と住民税が課されます。どちらも、毎月の給料から天引きされますが、新卒社員の場合は、所得税と住民税では、給与天引きが始まる時期が異なります。

ここでは「そもそも住民税とは何か」や給与天引きが始まる時期など、新卒社員が知っておきたい「住民税」について詳しく解説します。

住民税の内容と決まり方

住民税の給与天引きが始まる時期を知るには、住民税の内容や住民税の金額がどのように決まるのかを理解する必要があります。
そこで、ここでは住民税の内容と決まり方について見ていきましょう。

そもそも住民税とはどんなもの

そもそも、住民税とはどのような税金なのでしょうか。所得税が国に納める税金であるならば、住民税は都道府県や市区町村の各自治体に納める税金のことです。

住民税には都道府県に支払う都道府県民税と、市区町村に支払う市町村民税(いわゆる市民税)の2つがあります。基本的な仕組みや納付方法などが同じことから、2つ合わせて住民税とし、所得税と区別しています。

納税者は市町村に都道府県民税と市町村民税を合わせて納付します。その後、市町村は、納税者から預かった都道府県民税を都道府県に支払います。
一般的に住民税は、納税者が住んでいる都道府県や市区町村が行う行政サービスを維持するために支払う税金です。納税者の収入金額や自治体によって、住民税の金額や税率は異なります。

また、住民税は1月1日時点の住所がある自治体に支払うことになっているため、年の途中で引っ越しをしても、1年間は引っ越し前の住所地の自治体に税金を納めることになります。

住民税の決まり方とは

次に、住民税の金額の決まり方について見ていきましょう。住民税には都道府県民税と市町村民税の2つがありますが、それぞれの税は所得割と均等割に分かれます。所得割と均等割は、次のような内容のものになります。

・所得割:「(課税)所得金額」に応じて課税される税金です。原則、都道府県民税と市町村民税の税率は両方合わせて10%です。(課税)所得金額とは、給料総額から給与所得控除や基礎控除、生命保険控除などの各所得控除を差し引いた金額のことです。

・均等割:その地域のいわば会費的な意味で、一律で納める税金です。原則、都道府県民税と市町村民税合わせて5,000円ですが、自治体によって金額が異なる場合があります。

例えば(課税)所得金額が400万円の場合、住民税の金額は次のようになります。

①所得割

(課税)所得金額が400万円×10%=40万円

②均等割

5,000円

③住民税合計

所得割40万円+均等割5,000円=40万5千円

住民税の徴収方法と納付方法

会社員が受け取る給料は給与所得になります。つまり、所得金額が発生するため、住民税の所得割の対象となります。もちろん、均等割の対象にもなります。

では、会社員は住民税をどのように納めるのでしょうか。実は、住民税の徴収方法には、普通徴収と特別徴収の2つがあります。それぞれについて見ていきましょう。

・普通徴収
普通徴収とは納税者が直接、納付書などで自治体に住民税を納付する方法です。例えば、個人事業主の場合の住民税は、普通徴収になります。個人事業主は、自治体から送付された納付書を使い、自分で住民税を納付します。

確定申告から住民税納付までの流れは、次のとおりです。

①確定申告

個人事業主は所得金額や所得税の金額を自分で計算し、国に確定申告します。

②住民税の金額の決定

確定申告で提出された所得金額は、国から各自治体に知らされます。各自治体は、国からの情報を基に住民税の金額を計算・決定し、個人事業主に税額の記載された通知書と納付書を送付します。

③住民税の納付

個人事業主は自治体から送付された納付書により、税金を納付します。住民税は原則、年4回に分けて納付します。納付時期は自治体によって異なりますが、おおむね6月、8月、10月、翌年の1月となっています。

・特別徴収
特別徴収とは、会社が従業員の給料から天引きした住民税を、従業員に代わって自治体に納付する方法のことです。会社員が自分で税金を納付することはありません。

特別徴収の流れは、次のとおりです。

①1年間の給料金額の報告

従業員に支払った1年間の給料の金額を、従業員の住所地の自治体に報告します。

②住民税の金額の決定

各自治体は、会社から報告を受けた1年間の給料の金額を基に、住民税の金額を計算・決定し、会社に税額の記載された通知書と納付書を送付します。

③通知書の金額に従って源泉徴収

自治体から送られてくる通知書は、個人別に分かれています。一方、納付書にはその自治体に住所地がある従業員の住民税合算額が記載されています。

個人ごとの通知書には、住民税の総額や毎月いくらの住民税を給料から源泉徴収(天引き)したらよいかが記載されているので、その金額のとおりに住民税を給料から源泉徴収します。

④住民税の納付

納付書に従い、会社は従業員から源泉徴収した住民税を納付します。

普通徴収であっても、特別徴収であっても、住民税は1年間の所得金額が決定してから、自治体で税額を計算することになります。そのため、住民税の金額が決まるのは、収入のあった翌年です。

納付ベースで考えると、今年支払っている(源泉徴収されている)住民税は、前年分の所得に対するものになります。

新卒社員はいつから支払う?ケース別住民税の納付時期

今年支払う住民税は、前年分の所得に対するものです。同じ会社でずっと働いている場合は毎年、前年分を次の年に支払うことを繰り返しているため、住民税の納付時期を気にする必要はありません。

しかし、新卒社員の場合などでは、いつから住民税を支払うのか分かりにくいかもしれません。そこで、ここからは同じ会社で働き続けていないケースの、住民税の納付時期を見ていきましょう。

・新卒社員の場合
前年が学生などで収入がなかった新卒社員の場合、入社した年には住民税を納めることはありません。翌年の給料から、住民税の源泉徴収が始まります。

ただし、1年間の給料が確定してから、各自治体で住民税の計算・決定が行われるため、翌年1月から源泉徴収が行われることはなく、翌年6月 の給料から源泉徴収が始まります。通常、翌年6月から翌年5月 の12回に分けて、住民税が源泉徴収されます。

・退職して別の会社で就職した場合
退職して別の会社で就職した場合は、退職時に次の就職先が決まっているかどうかで異なります。退職時に次の就職先が決まっている場合は、再就職先の会社で、特別徴収を継続できます。

1月1日~5月31日に退職し、次の就職先が決まっていない場合は原則、退職月の給与や退職金から、5月までに支払う住民税が源泉徴収されます。 ただし、6月以降に退職した場合は、原則、普通徴収に切り替わります。
※会社に希望することで、退職月の給与や退職金から残りを源泉徴収することも可能です。

・退職して個人事業主になった場合
退職して個人事業主になった場合も原則、5月までに退職した場合は、退職月の給与や退職金から残りの住民税が源泉徴収され、6月以降に退職した場合は、普通徴収に切り替わります。

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まとめ

住民税とは、都道府県や市区町村の各自治体に納める税金のことです。住民税には、都道府県民税と市町村民税(いわゆる市民税)の2つがありますが、2つを合わせて市区町村に納付するため、特に区別して考える必要はありません。

住民税の徴収方法には、普通徴収と特別徴収の2つがありますが、会社員は毎月の給料から源泉徴収される特別徴収になります。

住民税は、前年の所得に対するものを今年に支払います。そのため、新卒社員は原則、入社初年度に住民税を支払うことはないことを覚えておきましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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