「いい円安」と「悪い円安」同じ円安でも何が違う?円安についてわかりやすく解説
日本の経済構造の変化やロシアのウクライナ侵攻の影響などで、現在、急速に円安が進んでいます。実は、円安には「いい円安」と「悪い円安」があるといわれていますが、今の円安は、どちらの円安なのでしょうか。
ここでは、円安と円高の違いや、いい円安と悪い円安の違い、現在の円安の状況など、円安について徹底解説します。
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そもそも円安と円高はどう違う?
はじめに、円安と円高の違いについて見ていきましょう。
円安と円高の違いとは
そもそも円安や円高は、他の通貨に比べて円の価値がどうなっているのかを示す言葉です。「円安」は円の価値が下がっている、「円高」は円の価値が上がっている状態のことです。
例えば、1ドル=100円であった状態が1ドル=110円に変化すると、今まで100円出せば1ドルと交換できたものが、110円出さなければ1ドルと交換できなくなっています。これは、円の価値が下がっているため「円安」です。
逆に、1ドル=100円であった状態が1ドル=95円に変化すれば、今まで100円出さなければ1ドルと交換できなかったものが、95円出せば1ドルと交換できます。これは円の価値が上がっているため「円高」です。
円安の状況に変化すると、変化前に比べて1ドルで得られる円が多くなるため、海外にモノを売りやすくなりますが、逆に海外のものが買いにくくなります。一方、円高の状況に変化すると、海外のものを安く買いやすくなりますが、逆に海外にモノを売りにくくなります。
このように、円安や円高は、私たちの生活だけでなく、輸入業者や輸出業者にも大きな影響を与えます。
現在は円安が続いている
では、現在の円の価値は、どのようになっているのでしょうか。現在は、円安がずっと続いている状況です。今年に入ってからのドル円の値動きを終値で見てみると、次のように推移しています。
- 1月1日:1ドル=115.10円
- 2月1日:1ドル=114.99円
- 3月1日:1ドル=121.66円
- 4月1日:1ドル=129.83円
- 5月1日:1ドル=127.14129.16円
5月6日では、1ドル=130.56円まで、円安が進んでいます。前年度の5月1日は1ドル=109.54円だったことを考えると、1年間で大幅な円安となっています。
ちなみに、過去5年間の5月1日時点のドル円の推移を見ると、次のようになります。
- 2017年5月1日:1ドル=110.75円
- 2018年5月1日:1ドル=108.81円
- 2019年5月1日:1ドル=108.26円
- 2020年5月1日:1ドル=107.77円
- 2021年5月1日:1ドル=109.54円
過去5年間のドル円の推移を見ても、おおむね5年間、1ドル=110円前後で推移していることが分かります。過去5年間で、1ドル=120円を超えたこともないため、現在の1ドル=130円前後の値が、いかに円安が進んでいるのかが分かります。
2022年に入ってから、特に3月になってから円安が進んでいるため、これは、ロシアによるウクライナ侵攻の影響が大きいといえるでしょう。日本は、原油などを海外の輸入に頼っていますが、海外からの輸入をするためには、円を外国通貨に両替しなければいけません。原油の価格などが高くなると、それだけ円を売る必要があるため、円安が進むのです。
いい円安と悪い円安の違い
今は円安が進んでいる状況です。この円安がどのような状態なのかを見るために、ここではまず「いい円安」と「悪い円安」の違いについて見ていきましょう。
いい円安と悪い円安は、同じく円安の状況です。円安には良い面と悪い面がありますが、良い面が強く出ているのがいい円安、悪い面が強く出ているのが悪い円安です。それぞれの特徴は、次のようになります。
いい円安とはどんなもの?
いい円安とは、良い面が強く出ている円安のことですが、円安の良い面はさまざまです。
その中でも得に良い面は、一般的に「円安になると景気がよくなる傾向にある」といわれることです。なぜなら、日本の大企業には、海外を相手に商売をしている企業が多いからです。輸出産業の業績が良くなり、賃金なども上がります。
また、業績が良くなれば株価が上がり、配当金なども増えるので、投資家にも恩恵があります。さらに輸出が増え、輸出から輸入を差し引いた純輸出も増えれば、GDPの押し上げの要因となります。
悪い円安とはどんなもの?
悪い円安とは、悪い面が強く出ている円安のことです。円安の悪い面もさまざまありますが、その中でも特に悪い面が物価高です。円安になると、輸入産業の業績が悪くなります。同じドルの支払であっても、円安のほうが多くの円が必要となるため、輸入コストが上がります。
また、原料費なども高騰するので、製造業などにも、経営を圧迫するなど大きな影響を与えます。さらに、日本はエネルギーや食料を輸入に頼っているため、これらの価格も上がります。
輸入コストや原材料の価格の高騰は、商品の価格に転嫁されるため、物価高になります。
そのため、私たち個人の家計に、大きな影響を与えることとなります。
現在はいい円安なのか悪い円安なのか
いい円安は円安の良い面が、悪い円安は円安の悪い面が強く出ている状況のことです。
では、現在の円安は、いい円安なのでしょうか。それとも悪い円安なのでしょうか。
上述したとおり、1ドル=130円を超えることが増えた現在(2022年5月時点)は、ここ数年以来の円安となっています。ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油高などの影響で、物価高となっています。食品や日用品などで次々と値上げが発表されているため、家計にも影響を与え始めています。このままいけば、景気が悪くなる可能性もあり、今の円安は悪い円安であるという声も多くあります。
しかし一方で、ここ近年は、そもそも輸入が大幅に増加しており、景気が悪いのは円安の影響よりも、貿易黒字が減少していることが背景にあるという声もあります。
また、今の円安は、ロシアのウクライナ侵攻の影響を受けたことだけが原因でないという考え方もあります。それは、日本の経済構造の変化が円安原因になっているというものです。製造業は生産拠点を海外に移すケースが多くなり、製造部品などの輸出が減少しています。
また、観光業や一部の物販などでは、インバウンドに頼りすぎていた面もあり、新型コロナウイルスの影響拡大で海外からの入国が制限され、インバウンドの需要が減ると、外国人が円を購入することも減りました。
輸出やインバウンドの需要が減ることは、円の需要が少なくなるということです。そのため、円安が進みます。
このように、今の円安は悪い円安の可能性もあるが、一概にそうともいえないというのが現状です。しかし、いい円安でないことは確かです。
また、日銀総裁の白川氏は、円高も円安も「良い」「悪い」で評価する議論には違和感を覚えると発言しています。このことからも、今が悪い円安と決めつけるのは、早いかもしれません。
まとめ
そもそも円安や円高は、他の通貨と比較して円の価値がどのような状態にあるかを示す言葉です。円安は円の価値が下がっている、円高は円の価値が上がっている状態のことです。
2022年に入ってからは円安が続いています。過去5年間がおおむね1ドル=110円前後で推移しているのに対し、2022年に入ってから、特に4月や5月以降は1ドル=130円を超える日も多くあります。
「いい円安」は円安の良い面、「悪い円安」は円安の悪い面が強く出ている状況のことです。現在の状態がいい円安か悪い円安のどちらかと問われると、円安により物価高がおこり、家計にも影響を与え始めているため、悪い円安とする意見も多いです。
しかし、今の景気の悪さは円安以外の原因から生じている可能性もあります。そのため、今が悪い円安かどうかの判断をするためには、もう少し状況を注視していく必要があるでしょう。
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会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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