日本の制度と世界各国の制度を比較年金制度が無い国はある?
老後の生活を保障する制度として、年金制度があります。年金保険料の納付は日本人の義務となっていますが、世界には日本と同じような年金制度はあるのでしょうか。また、年金制度があるなら、どのような制度なのでしょうか。
ここでは、日本の年金制度を確認しながら、世界各国の年金制度についても解説します。
日本の年金制度の仕組み
世界各国の年金制度を見る前に、まずは日本の年金制度の仕組みを見ていきましょう。
日本の公的年金には、大きく分けて国民年金と厚生年金の2つがあります。国民年金と厚生年金それぞれの制度は、次のようになります。
国民年金とはどんな制度?
日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金の2階建てになっています。国民年金は、その1階部分の年金です。日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人なら、職業にかかわらず誰もが加入します。
国民年金保険料は収入金額に関係なく、毎月定額です。保険料の金額は定期的に変わりますが、令和4年度(令和4年4月~令和5年3月まで)の金額は、月額1万6,590円です。 国民健康保険料の納付方法は一般的に口座振替ですが、現金払いもできます。
会社員は毎月支払っている厚生年金保険が国民年金を負担しているので、会社員も国民年金の加入者になります。国民年金では、加入者を状況によって次の3つに分けています。
・第1号被保険者
自営業者や学生、専業主婦(主夫)など、自分で国民年金保険料を納める人
・第2号被保険者
厚生年金保険加入者である会社員や、共済組合加入者である公務員
・第3号被保険者
第2号被保険者の扶養に入っている配偶者
会社員に扶養されている配偶者は、第2号被保険者全体で国民年金保険料を負担しています。そのため、国民年金に加入していることになります(国民年金保険料の支払はありません)。
つまり、国民年金を直接納付する人は、自営業者や学生や無職の人を含む第1号被保険者です。
厚生年金とはどんな制度?
日本の公的年金制度の2階部分が厚生年金です。国民年金の上に厚生年金が乗っているイメージです。厚生年金に加入しているのは、第2号被保険者である会社員や公務員などです。
納める厚生年金保険料は、毎月の給料に一定の保険料率を乗じて計算されます。そのため、従業員によって厚生年金保険料の金額は異なります。また、厚生年金保険料は原則、雇い主と従業員で折半して納めます。会社員や公務員は、厚生年金保険料を毎月の給料から天引きという形で納めます。
まとめると、国民年金は自営業や無職の人、学生などの人が加入しています。一方、厚生年金は、会社員や公務員が加入しています。ただし、厚生年金に加入することは、国民年金にも加入していることになるので、結果的に国民年金と厚生年金の両方に加入していることになります。
日本の年金制度のメリット
日本の年金制度には、遺族年金があるなど多くのメリットがあります。ここでは、日本の年金制度のメリットと遺族年金について見ていきましょう。
日本の年金制度のメリット
日本の年金制度には、多くのメリットがあります。その中でも、ぜひ知っておきたいメリットとして次のものがあります。
・老後の生活の助けになる
定年退職すると、別の仕事をしなければ収入を得られません。しかし、日本には年金制度があるので、原則65歳になると年金を受け取れます。
国民年金のみ加入の場合は、年額で約78万円(令和4年度の場合) の年金を受給できます。厚生年金に加入している場合は、国民年金にさらに厚生年金が上乗せされます。そのため、老後の生活の助けになります。
・インフレに強い
日本の年金制度は物価スライド制をとっています。物価スライド制とは、物価があがれば、年金の受給額も増えるというものです。そのため、年金はインフレに強いことになります。
・保険制度が安定している
国民年金は国民から支払われた保険料だけではなく、税金も財源としています。万が一、国民年金の財源が不足した場合は、税金で補填されるので安心です。
・老齢年金以外の受給ができる
日本の年金制度では、年金加入者に障害があったり死亡した場合に、老齢年金(原則、65歳になったら受け取れる年金)以外の受給ができます。そのため、生活保障の意味合いも持ちます。
遺族年金や障害年金とは
日本の年金制度では、老齢年金以外の受給ができます。それが、遺族年金と障害年金です。
・遺族年金
遺族年金とは、国民年金や厚生年金の被保険者(本人)が亡くなった場合に、家族が受け取れる年金のことです。遺族年金は、国民年金の遺族基礎年金と厚生年金の遺族厚生年金の2つがあります。
遺族基礎年金は、受給対象者が18歳未満の子のある配偶者、または18歳未満の子であるのに対し、遺族厚生年金は18歳未満の子がいない配偶者にも受給され、対象者は広くなっています。
・障害年金
国民年金や厚生年金の被保険者(本人)が病気やけがによって、生活などに制限がある場合に受給できる年金のことです。障害年金には、国民年金の障害基礎年金と厚生年金の障害厚生年金の2つがあります。
障害基礎年金は障害等級の1級と2級が対象となっているのに対し、障害厚生年金は3級までと対象が広くなっています。
世界の年金制度の仕組みとは
ここからは、世界の年金制度について見ていきましょう。
・アメリカ
アメリカでは、日本のようにすべての人が年金制度に加入する必要がありません。年金制度の加入対象は、会社などで雇われている人や一定の所得のある人のみです。所得の低い人や無職の人は、年金制度に加入する必要はありません。年金の最低加入期間は約10年、受給開始年齢は66歳(今後、引き上げ予定)です。
・イギリス
イギリスでも、すべての人が年金制度に加入する必要はありません。雇用者、自営業者とも、所得により加入義務があります。所得の低い人や無職の人は、年金制度に加入する必要はありません。
年金の最低加入期間は10年、受給開始年齢は男性で65歳、女性で64歳(今後、両者ともに引き上げ予定)です。
・ドイツ
ドイツでは、雇用者は年金制度に加入する必要がありますが、自営業者は職種により、無職の人は一部の人に加入義務があります。
年金の最低加入期間は、他の国よりも短く5年です。受給開始年齢は65歳7か月(今後、引き上げ予定)です。
・オーストラリア
オーストラリアの年金には、老齢年金(AP)と退職年金保障制度(SG)があります。老齢年金(AP)は原則、すべての人が加入しますが、退職年金保障制度(SG)は一部の雇用者のみが加入します。
年金の最低加入期間は、老齢年金(AP)の場合10年居住(うち5年は連続)とされており、居住期間が判断基準です。退職年金保障制度(SG)は、最低加入期間がありません。
受給開始年齢は、老齢年金(AP)で65歳6か月、退職年金保障制度(SG)で57歳(今後、引き上げ予定)です。
このほかにも、中国やインド、ブラジルなど多くの国で年金制度があります。一方、シンガポールなどには年金制度がありません(ただし、国による強制預金制度があります)。
まとめ
年金制度は、国民の老後の生活を保障するものです。日本の年金には、国民年金と厚生年金の2つがあります。国民年金は、自営業者や学生、無職の人などが納める年金で、厚生年金は会社員や公務員が納める年金です。
日本では、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人なら、職業にかかわらず誰もが年金制度に加入しなければいけませんが、世界の年金制度は必ずしもそうではありません。
雇用者は加入義務がありますが、自営業者や無職は加入義務がなかったり、所得により加入義務があったりするという国がたくさんあります。
多くの国での年金制度では、受給開始年齢が引き上げられる傾向にあります。今後の日本の年金制度も、注視しておく必要があるでしょう。
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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