既存建物の改修工事「リノベーション」の固定資産税などについて解説
「リノベーション」とは物に新しい価値を付加することを指します。近年、古民家などの既存建物をリノベーションして住む方が増えていますが、毀損した箇所を現況まで回復する「リフォーム」とは価値をプラスするという点で異なります。リノベーションを選択することのメリットについて、税制面から解説していきます。
「リノベーション」とは何か?
「リノベーション」とは既存建物の改修工事のこと
「リノベーション」とは、新たな機能をプラスしたり価値を高めることです。住宅改修でいうところのリノベーション工事は、古い家屋を現況まで回復するための工事である「リフォーム」とは異なり、付加価値を付け家屋そのものの利用価値を高めることを目的としています。
リノベーションの対象となる物件は、新築してからまだ年数が経過していないものから、古民家と呼ばれるような築数十年といった古いものまで様々です。家屋それぞれの個性を生かしつつ、住む人の嗜好に合った自分だけの家を作っていくことが目的ですから、敢えて古い家屋を求める方もいます。新築工事と違って、主要な柱や梁などが必要ありませんので建築費用は新築よりも安く抑えられるのが一般的です。しかし、物件の状態や追加する付加価値の程度によってはリノベーションのほうが建築費用が高くなるケースもあります。
敢えて古い建物を選んで改修する理由には、建築コストや土地の取得費用といった金銭面以外にも理由は考えられます。古民家が持つ独特な雰囲気を生かした家に住みたいとか、建物がある地域の雰囲気が自分に合っていて永住したいからといった理由が挙げられます。
どのような理由にせよ、既存のものを捨てるのでなく再利用しようという試みは、エコの観点からも望ましいことです。
近年「リノベーション」が増加している背景
「リノベーション」が増加している背景には、日本人の物を大切にする意識が影響しているように思われます。作って捨ててを繰り返し成長する資本主義社会のなかで、物を捨てずに再利用することを考える発想は大切なことです。
家屋についても同様に、手直しが可能であれば「リノベーション」によって新たな価値を付加して再利用するという選択肢があってもよいでしょう。
「リノベーション」が増加しているもう一つの原因として挙げられるのが、少子高齢化に伴う高齢者世帯の増加です。
同居する若い世代のいない高齢者が亡くなったり、老人ホームなどの施設に移る際、持ち家を手放したりするケースがあります。今後持っていても居住の用に使うことはない不動産でも、放っておくと固定資産税は毎年課税されますから、買い手がいれば安く売却することも考えなければなりません。
「リノベーション」することのメリットとは?
「リノベーション」で固定資産税は安くなる?税制面でのメリット
では新築とリノベーションでは費用的にどれくらいの差が出るのでしょうか?
特に新築とリノベーションを比較したときの税制上のメリットについて、固定資産税を例に挙げ、どれだけの違いがあるか比較してみましょう。
固定資産税は「その年の1月1日現在の現況」により、固定資産の所有者に対して課税されます。
固定資産税は以下の算式により計算されます。
新築の場合、新品ですから「課税標準額」は当然高く評価され、結果として固定資産税も必然的に高くなります。これに対して「リノベーション」する家屋は、そのほとんどが建築後、相当時間を経過した物件です。固定資産評価額は3年に一度見直されますが、一般的に建物については経年劣化することもあり年々評価額が低くなる傾向にあります。
リノベーションする前の段階で、すでに課税されている固定資産税が低い状態ですから、それだけでも新築と比べ固定資産税が安くなっていることが理解できます。
僅かな差であっても長期間にわたって居住する家ですから、長い目でみれば固定資産税は少しでも安いに越したことはありません。
ただし、リノベーションする箇所や、付加する価値の内容によっては古い建物の評価額が跳ね上がってしまうケースもありますので注意が必要です。例えば、床面積を広げるリノベーションをした場合、固定資産税は床面積を基準に算定されますので、固定資産税は増えた床面積の分だけ上がります。
また、建物の柱や梁といった主要部分を木製から金属製にリノベーションしたとすれば、単純に家屋の強度が増しますので価値があがります。価値の上昇に応じて固定資産税も上がるという仕組みです。
他にもある「リノベーション」のメリット
「リノベーション」をするメリットとして、新築物件よりも固定資産税が安くなる可能性があることがわかりました。しかし、「リノベーション」のメリットはそれだけではありません。
現在、バリアフリー、省エネ、断熱、エコ、耐震など、政策的な目的から既存家屋の利用価値を高める取組に対して、国や地方公共団体が積極的に補助金・助成金を交付しています。
具体的には、国土交通省が進める「こどもみらい住宅支援事業」や「長期優良住宅化リフォーム推進事業」などがそれにあたります。また、市区町村によっては過疎地域へ移住をしてくれた世帯に対して、市区町村が独自に祝い金やリノベーション費用の一部負担などの補助を実施しているところもあります。
リノベーションをする前に、ご自身の地域で補助金や助成金、給付金制度があるかを今一度確認してみてはいかがでしょうか。
「リノベーション」をするにあたっての注意点
「リノベーション」によるデメリットとは?
コストをかけずに自分好みの家に造り変える「リノベーション」ですが、メリットばかりではありません。
1.建物の耐久性、耐震性が保証されていない
リノベーションの元となる古民家が建てられた当時は、耐震構造という考え方はまだない時代である可能性が高いでしょう。また、それでなくとも経年劣化で建物の主要な部分がボロボロになっている可能性があります。表向きは一見大丈夫そうでも、見えない主要部分の耐久性・耐震性を知ることはできません。
せっかくリノベーションで費用をかけても、建物本体の耐久性が十分でなく、結果取り壊すことになったのでは本末転倒です。
2.間取りに制約がかかることも
リノベーションはある程度自由な間取り設計が可能である反面、構造上どうしても間取りを変更できない箇所というのが出てきます。新築であれば主要構造を決める際にあらかじめ間取りを決定することができます。せっかくリノベーションするのに間取りに制約がかかるのが嫌という方にはお勧めできません。
実行予算が膨らんでしまうことも
前段でも触れましたが、既存建物のリノベーションをするにあたって、建物の主要部分が見えないことがデメリットの一つとしてあると解説しました。
壁のベニヤを剥いでみたら主要な柱が白蟻にやられていたので交換が必要になった、壁材にアスベストが使用されていたため除去作業を追加しなければならなくなった、といった感じです。
また、新築工事でもよくあることですが、リノベーションが予想以上に良くできたため、あれこれと追加工事を行った結果、予算をオーバーしてしまうことも考えられるでしょう。
予定では想定していなかったような事態が起こりうるのが「リノベーション」のデメリットです。
工事予算を決定する際には、このようなイレギュラーな事態を想定して少し余裕を持った資金計画を立てておくのがよいでしょう。
まとめ
古き良きものを「リノベーション」して再利用することは、物を大切にするという観点から良い美徳であるといえます。慣れ親しめば古いものにも風情や温かみが出てくるものです。新しい物件も魅力的ですが、税制面のメリットも考慮した「リノベーション」という選択もありなのかも知れません。
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