来たるべき海外旅行解禁に向け、免税について知っておこう

[取材/文責]橋本玲子

コロナ禍で自由な海外旅行ができなくなって2年以上、いまだ収束に至らないものの入国制限を撤廃した国は数多く、ようやく日本でも水際対策が多少緩んできました。
海外旅行では買い物も楽しみの一つ。高級品などを日本よりお得に買える免税の仕組みや手続きについて今のうちに知っておき、来たるべき時に備えましょう。

まずは免税の仕組みを知る

海外旅行といえば免税、というくらい一般的に使われている「免税」という用語ですが、そもそもなぜこのような制度があるのか、すべての国に免税制度はあるのかなど、まずは免税の基礎知識から始めましょう。

「免税」は旅行者が納めなくてよい税金を還付してもらうこと

どの国であっても品物を購入する時は、在住者渡航者問わず一定率の内税を含んだ提示額を支払います。しかし内税の中には、その国に在住しない者であれば支払わなくてもよい税金も含まれているため、非在住者である旅行者は出国時に税関へ「本来支払義務のない税金を払った」と申告することでその返還を受けることができます。これが免税(Tax free)制度です。
たとえばフランスは付加価値税(日本の消費税に相当)が20%(日用生活品などを除く)と日本よりかなり高く、免税手続きを取ることでそのうち12%分が返還されるので、かなりお得になります。

なお、非在住者ではあっても長期に渡り滞在する場合(たとえばヨーロッパでの滞在が6カ月以上になるなど)には免税は受けられません。

免税手続が可能な国は37カ国

旅行者に嬉しい免税ですが、すべての国に免税制度があるわけではありません。
現在制度が利用できるのは、ヨーロッパを中心に韓国やシンガポールなど世界37カ国のみと意外と少ないのです。
たとえば旅行先として人気のアメリカは街なかに「Tax free」店はなく、免税品を買うには空港などの「Duty Free」店を利用するしかありません。自分の渡航先に免税制度があるかは事前に調べておいた方がよいでしょう。

免税を受けるための手続きについて

街なかで購入した品物は、そのままでは免税を受けられません。然るべき手順を踏む必要があります。高級ブランド店などでは店側から手続きを受けるか尋ねてくれるところも多いですが、原則として購入者側から手続きを求めます。店側は購入者が非在住者かどうか分からないからです。

購入した店で免税書類を作ってもらう

まず注意するのは「TAX FREE」マークがある店でしか免税手続きはできないことです。TAX FREE加盟店は世界37カ国で約24万店あり、旅行者が立ち寄るような店はだいたい加盟していますが、小さな店に入る時は念のためチェックしておきましょう。

また、店により免税を受けるには一定額以上の購入が必要な場合があります。たとえばフランスでは1店舗での購入額が100ユーロを超えなければいけません。ただしデパート内では同じ日に購入した額が合算で100ユーロを超えていれば原則免税対象になります。

購入要件を満たしていれば、お店に免税用の書類(リファンドチェック)発行を頼みます。
発行時にはパスポートの原本提示が求められますので、旅行中は忘れずに携帯しましょう。
かつてロンドンやパリといった大都市のデパートには日本の百貨店が入っており、すべて日本語で免税手続きができましたが、現在はほぼ撤退しています。高級ブランド店舗の日本人店員率も下がっているので、手続きは英語でのやりとりとなります。とはいえ店側も慣れているので心配は要らないでしょう。

出国時に税関でスタンプをもらう

発行してもらった書類はそれだけでは還付を受けられません。出国時(数カ国周遊するのであれば、最終国での出国空港)空港税関において書類にスタンプを貰う必要があります。
税関では免税書類の他に搭乗券やパスポート、そして購入した商品の提示が求められます。対象の品物は機内持ち込みにするか、スタンプを貰ってから出国手続きをするようにしましょう。
スタンプをもらった書類を書類発行時に貰った封筒に入れ、空港のポストに投函すれば手続き終了です。

免税額を受取る方法を選択

手続き後の税金還付を受け取るには主に3つの方法があります。

①出国時、現地空港で現金で受取る

現地空港内のリファンドオフィスに行けば、その場で還付額を現金で受け取れます。ポスト投函も不要で楽ですが、手数料を取られますし、出国する国のお金で貰っても使い勝手に困ることが多いでしょう。

②帰国時 日本の空港で現金で受取る

成田、関西両国際空港にもリファンドオフィスがあり、こちらで手続きすれば日本円で還付されるので便利です。ただし手数料はかかります。

③クレジットカードへ入金

免税書類にクレジットカード番号を記入し、ポストへ投函すれば直接カードを通して銀行口座に入金されます。手数料はかかりません。入金までに多少時間がかかりますが、通常1~2週間、遅くとも2カ月後までには還付されます。

他に還付額相当の銀行小切手を郵送してもらう方法がありますが、日本において小切手を現金化するための手数料は高額なので、現在でもこの方法を選択する人がどれだけいるのかは疑問です。なお、万一現地のポストに書類を投函し忘れた場合は帰国後郵送もできます。詳細はグローバル・リファンド社が発行した書類であれば日本オフィスがあるので問い合わせましょう。

免税の範囲は?持ち込みに制限はある?

免税は無制限に受けられるものではなく、上限額や一部の品物は量による制限が定められています。

「免税範囲20万円」の内訳に注意

まず上限額は「海外市価の合計額が20万円まで」となっています。複数の店舗でそれぞれ免税書類を発行してもらった合計額が20万円を超えると、超えた部分は免税を受けられません。
ただし、1品目毎の海外市価の合計額が1万円以下のものは、どれだけ購入していても免税枠上限の計算に含める必要はありません。一方で1品目で20万円を超える品物は、その全額が課税対象になってしまいます。
たとえば、1個1万円以下のバッグを20個と20万円のバッグを1個買った場合、免税枠内に収まります。5万円のバッグを5個買った場合はバッグ1個(5万円分)は免税になりません。そして25万円のバッグを1個買った場合は免税は全く受けられないことになります。

物品によっては量で免税範囲が決まる

空港の免税店で買うことが多い煙草や酒類、香水ですが、これらは一定の量以上日本に持ち込むと課税対象になります。
煙草は200本(いわゆる1カートン)、酒類は3本、香水は2オンスまでしか免税価格で持ち込めません。(ただしオードトワレやオーデコロンは香水でなく「その他のもの」扱い)

引用:海外旅行者の携帯品の免税範囲 (参考)免税の範囲(カスタムスアンサー)【税関】

ちなみに酒類の関税率はその種類で変わってきます。
たとえばウイスキーはどんなに安いものでも一律リットル800円、ワインは高級ワインでもリットル200円です。
たとえば1本2,000円のウイスキーを5本買った場合の課税額は1,200円ですが、(5本中2本に課税、0.75リットルl×2×800円=1,200円)1本1万円のワイン5本なら課税額はわずか300円(同じく0.75リットル×2×200円=300円)となるのです(共に1本750mlとします)。

海外旅行時にかかる税金にも注意!

最後に税金つながりで、2019年に導入された「国際観光旅客税」についても頭に入れておきましょう。
国際観光旅客税額は、「日本から出国する旅客」は日本人外国人を問わず1回の出国に対し一律1,000円と定められています。原則旅客が個々に支払う必要はなく、原則飛行機もしくは船舶代金に含まれています。
そもそもインバウンドの強化に充てる財源として創設された制度でしたが、導入後間もなくコロナ禍でインバウンドどころではなくなってしまったのは少し皮肉です。

YouTubeで「免税」について解説中!

韓国旅行も!免税店で買い物 いくらまで日本に持ち込める?【3分かんたん確定申告・税金チャンネル】

【海外旅行】DUTY FREE と TAX FREEの違いとは?お得なのはどっち?

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まとめ

海外で購入した品物は自動的に免税となるわけではありません。「免税制度を導入している国」の「TAX FREE」店において、「店に免税書類発行を求め」、「空港税関でスタンプをもらう」必要があります。決して難しくはありませんが、どれか1つ抜けても免税還付は受けられないので注意しましょう。

【関連記事】:海外で入院したり治療を受けたりした場合の医療費の扱いについて解説

行政書士事務所経営。宅地建物取引士、知的財産管理技能士2級取得。遺言執行や成年後見などを行う一般社団法人の理事も務めている。

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