知っておいて損はない「税務署の1年」はいつから始まるのか?
会社には、例えば3月決算ならば、4月1日からスタートするという「事業年度」があります。個人事業主は、1月1日から12月31日までが「1年」で、その期間の所得、税額を確定申告することになるわけです。ところで、「税務署の1年」は、何月から始まるのか、ご存知でしょうか? この1年のサイクルは、税務署の忙しさ、ひいては「税務調査に入られやすい時期」にも関係します。そこで今回は、税務署の「事務年度」について解説しましょう。
国税庁の文書には、「年」、「年度」、「事務年度」が登場する
日本の租税制度を専門的に担うのが、「国税庁」。その管轄下にあるのが、全国に11ある「国税局」と「沖縄国税事務所」で、「税務署」は、国税庁と国税局の指導監督を受ける下部組織として、全国各地に設置されています。税金には、大別すると国税(中央税)と地方税がありますが、この国税庁-国税局-税務署のラインが担当するのは、国税です。具体的には、所得税、法人税、消費税、贈与税、相続税、酒税、印紙税といった税になります。
ところで、官庁の年度は、通常毎年4月1日スタートで、人事異動もそれに合わせて行われています。しかし、今説明した国税に関連する組織の異動は、4月には行われません。これには税務当局ならではの事情があって、3月の半ばに確定申告が締め切られ、4月はちょうどその事務処理に追われる時期に当たるためです。
では、いつ行われるのかというと、原則として3ヵ月遅れの7月10日になっているのです。ですから、税務当局にとっての1年は、7月から翌年6月まで。これを国税の「事務年度」と言います。国税庁の発表資料などには、例えば「平成30事務年度 法人税等の調査実績の概要」といったタイトルのものがあります。リリースのどこにも説明はないのですが、この場合は、「平成30(2018)年7月~31(2019)年6月までの年度」の調査実績を意味することになるわけです。
国税庁ホームページには、このほか「年」(=歴年、1月1日~12月31日)や「年度」(4月1日~翌年3月1日)をベースにした統計なども掲載されています。結果的に3種類の「時間」が混在していますから、参考にする場合には、注意する必要があるでしょう。
税務署にも「繁忙期」がある
税務署にも、一般の企業や他の官庁同様、「毎年、決まって忙しい時期」があります。それに今の事務年度のサイクルが絡んで、「税務調査(※)の行われやすい時期」、「ほとんど実施されない期間」のあることを知っておくのも、無駄にはならないはずです。
7月~12月が税務調査の「本番」
税務署員の重要な任務は、「税の公平性を保つために、取り忘れた税金があればきちんと取る」こと。企業の営業などと同様、年度の初めには、各人の税務調査の「件数」や「金額」などの目標、言い換えると「ノルマ」が提示されます。年間のノルマを達成するためにスタートダッシュが肝心なのは、いずこの組織でも同じ。最も活発に調査が行われるのは、年度の始まりから年末までの時期なのです。以前は、7月中は異動による引き継ぎや、新事務年度の調査計画立案などに時間を取られるため、実際の調査開始は8月からというのが普通でした。しかし、近年は、スタート時期が早まっているようです。
事務年度では、この7月~12月までが上期(第1期)、翌年1月~6月が下期(第2期)とされています。法人については、基本的に2~5月決算の会社が上期、6~1月決算の会社が下期の調査の対象になるようです。
3月には、まずやらない
下期に入って、1月、2月にも、税務調査は行われます。ただし、ここでちらつき始めるのが、確定申告の影です。その期間まで長引きそうな調査をこの時期に開始するのはリスキーですから、先送りになる(あるいは、是が非でも上期に済ませておく)可能性が高いのです。また、この時期は、申告の準備で税理士も多忙です。任意調査の場合は、税理士の立ち合いが認められていますが、それが困難で調査の日程調整もひと苦労という状態になりかねませんから、その意味でも調査が行われる件数は、上期に比べると少なくなります。
確定申告期間(通常2月16日~3月15日)は、税理士会が調査に入らないよう、申し入れを行っています。会社や個人の申告を税理士に依頼している場合、すなわち申告書に税理士の署名、捺印のある場合には、この期間には、まず調査は行われないと考えていいでしょう。
年度末には着手しない
確定申告が終わった4月は、ノルマの達成度合いなども考え合わせて、件数の「調整」などが行われると言われています。5月になると、今度は数の多い3月決算の会社の法人税申告を迎えるので、やはり税理士が多忙になります。ですから、この時期にも、長引きそうな調査は敬遠される傾向です。
6月になると、1年の仕事の整理や、新年度に向けた引き継ぎの準備をしなくてはなりません。この時期に調査を開始して、万が一年度をまたいでしまうと、引き継ぎはさらにややこしくなりますから、ここで税務調査に入る可能性は、極めて低いといえます。
国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。
まとめ
国税局や税務署は、毎年7月から翌年6月までが、「事務年度」となっています。税務調査に来やすいのは、その上期(7月~12月)と認識しておきましょう。
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