【2024年版】医療費控除はいつまで申請できる?確定申告のやり方もあわせて解説

[取材/文責]長谷川よう

1年間で一定金額以上の医療費を支払った場合、医療費控除を受けられます。医療費控除はいつまでに申請する必要があるのでしょうか。2024年の場合いつまで申告可能なのか、またどのように申告したらいいか、詳しく説明します。

実は、医療費控除は過去にさかのぼって申請できます。ここでは、医療費控除の内容や申請期間について解説します。

そもそも医療費控除とは

はじめに、医療費控除の内容について見ていきましょう。医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日の1年の間に一定金額以上の医療費を支払った場合に受けられる所得控除のことです。
控除には、税金の額から直接控除する「税額控除」と、税金を計算する前の所得から控除する「所得控除」の2種類があります。このうち、医療費控除は所得控除に当たります。
医療費控除の対象となるのはあくまで医療行為です。病院での診察やかぜ薬の購入などの医療行為、及び通院のために使った交通機関の交通費などが対象となり、美容整形や疲れをとるためのマッサージなどは医療費控除の対象外になります。
また、医療費はあくまで年内に支払いが済んでいるものに限られます。未払いのものは対象にならないので注意しましょう。納税者本人が支払ったものだけでなく、家族の医療費も医療費控除の対象になります。

医療費控除の金額と手続き

医療費控除は、支払った医療費の全額が控除されるわけではありません。一定の計算を行って算出した金額が控除されます。
ここでは、医療費控除の金額と手続きを見ていきましょう。

医療費控除はいくら受けられる?

医療費控除額は、次の計算式で計算した金額になります。

医療費控除の額=(1年間に支払った医療費の額-保険金などで補てんされる金額)-10万円

※総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等×5%

 

例えば1年間に支払った医療費の額が50万円、保険金などで補てんされる金額が20万円、総所得金額等が400万円の場合、医療費控除の額は次のようになります。

医療費控除の額=(1年間に支払った医療費の額50万円-保険金などで補てんされる金額20万円)-10万円=20万円

医療費控除を受けるため確定申告はいつが締切?

医療費控除を受けるための確定申告は、いつまでに行えばいいのでしょうか。通常、1月1日〜12月31日までの医療費を、その翌年の確定申告期間中に申請します。確定申告期間は、毎年2月16日〜3月15日まで。日付が休日になる場合は、翌平日に繰り越されることもあわせて知っておいてください。つまり、2023年分の所得について医療費控除を受けるには、2024年の2月16日〜3月15日までの間に確定申告をする必要があります。ただし、行う確定申告が還付(すでに支払った税金が納めるべき税金を上回りお金が返ってくる)の場合、その年の翌年1月1日から5年間申告できます。2023年分の医療費控除の場合、2024年1月〜2028年12月末日までということになります。

医療費控除を受けるための手続き

医療費控除を受けるための手順は、次のようになります。

1.必要書類の準備

医療費控除を受けるためには、次の書類を用意する必要があります。

  • 確定申告書 第一表・第二表
  • 医療費控除の明細書
  • 源泉徴収票(提出は不要)
  • 医療費の領収書(提出は不要)
  • 医療費通知(あれば)
  • 還付銀行名や口座のわかるもの(通帳など)
  • その他(必要に応じて、生命保険などの控除証明書や住宅ローン控除の書類など)

 

確定申告書や医療費控除の明細書は、税務署の窓口や国税庁のサイトから入手できます。

2.医療費控除の明細書の作成

医療費控除の明細書とは、医療を受けた人や病院名、医療費の額などを記載し、1年間の医療費の額や医療費控除の金額を計算する書類です。医療費の領収書や医療費通知を見ながら、医療費控除の明細書を作成します。

医療費の領収書は、税務署に提出する必要はありませんが、5年間自宅などで保存しておく必要があります。

3.確定申告書の作成

医療費控除の明細書が作成できたら、次は確定申告書を作成します。源泉徴収票や作成した医療費控除の明細書を見ながら、必要事項を確定申告書に記載します。

確定申告書は紙の書類での作成だけでなく、スマホやパソコンの確定申告書作成コーナーなどでも作成できます。

4.確定申告書の提出

作成した確定申告書は、税務署の窓口に持参、郵送、e-Taxのいずれかの方法で提出します。

確定申告の期間は原則、毎年2月16日から3月15日までですが、税金が還付される場合は、1月1日から確定申告書を提出できます。

いつまでさかのぼれる?医療費控除を忘れたときの手続きとは

医療費控除の申請を忘れた場合は、一定の手続きをすることで、さかのぼって控除を受けられます。ただし、会社員のように医療費控除がなければ、そもそも確定申告が不要な人と、すでに確定申告をしている人では手続きが異なります。

それぞれの場合について、手続きの方法を見ていきましょう。

確定申告が不要な人は医療費控除を5年間さかのぼれる

まずは、会社員のように、医療費控除がなければそもそも確定申告は不要な人が、医療費控除を忘れた場合です。

そもそも確定申告が不要な人が医療費控除を忘れた場合は、5年間さかのぼって医療費控除を受けられます。本年度の医療費控除や、さかのぼって医療費控除を受ける場合など、税金の還付を受ける場合の申告を「還付申告」といいます。

・還付申告の期限

還付申告は、翌年の1月1日から5年間、税務署に提出できます。例えば、2022年に医療費を多く支払い、還付申告になる場合は、2023年1月1日から2027年12月31日まで申請が可能です。

・還付申告の手続き

還付申告は、通常の確定申告と同じです。還付申告用の用紙はありません。上述した通常の医療費控除を受ける手順で確定申告書を申告し、医療費控除を受けます。

ただし、各用紙に年度を記載する箇所があるので、その年度の箇所には医療費を支払った年度を記載しましょう。

すでに確定申告している場合も5年間さかのぼれる

すでに行った確定申告で医療費控除の申請を忘れていた場合も、5年間さかのぼって医療費控除を受けることができます。

ただし、すでに確定申告をしているため、再度、確定申告を行って還付を受けられません。この場合は、すでに確定申告をした内容を更正する手続きが必要です。これを「更正の請求」といいます。

・更正の請求の期限

更正の請求は、法定申告期限から5年以内に行います。例えば、2021年分の確定申告(2022年3月15日が法定申告期限)で医療費控除の申請を忘れた場合は、2027年3月15日までに、更正の請求を行う必要があります。

※そもそも確定申告が不要な人が、住宅ローン控除など別の控除を受けるために確定申告を行い、その確定申告で医療費控除の申請を忘れた場合は、法定申告期限ではなく、もとの確定申告書の「提出日」から5年以内に更正の請求を行わなければなりません。

・更正の請求の手続き

更正の請求では「所得税及び復興特別所得税の更正の請求書」を作成し、税務署に提出します。所得税及び復興特別所得税の更正の請求書には、過去に申告した確定申告の内容と今回請求する金額、更正の理由などを記載します。

所得税及び復興特別所得税の更正の請求書は、税務署の窓口や国税庁のサイトからダウンロードできます。

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まとめ

医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日の1年の間に一定金額以上の医療費を支払った場合に受けられる所得控除のことです。医療費控除は、年末調整で控除を受けることができません。そのため、控除を受けるためには、毎年、確定申告をする必要があります。

しかし、医療費控除の申請を忘れることがあります。その場合は、5年間さかのぼって医療費控除を受けることが可能です。

ただし、そもそも確定申告が不要な人は還付申告、すでに行った確定申告で医療費控除の申請を忘れていた場合は更正の請求を行う必要があります。それぞれで手続きが異なるため、過去の医療費控除の申請を行う場合は、自分がどちらに該当するのかを判断し、正しく申請しましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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