子どもの国民年金を親が払う場合の注意点や学生納付特例を使った方が良いケースも解説

[取材/文責]マネーイズム編集部
吉田健司税理士事務所代表 吉田 健司(税理士・CFP)

20歳になると、国民年金保険料の支払い義務が生じます。ただ、親の仕送りに頼っている学生などの場合は、年間20万円近い保険料の負担は、難しいことも多いはず。このような場合、親が代わりに保険料を納めることができ、節税にもつながることをご存知でしょうか? なぜ節税が可能になるのか、親が代わりに支払う際の注意点と併せて解説します。

国民年金とは

国民年金は、日本の社会保障制度の一つであり、老後の年金支給を目的としています。

国民年金は、原則として20歳以上の国民が加入することが義務付けられており、毎月一定の保険料を支払うことで加入します。ただし収入の少ない人には、国民年金の免除制度もあります。

国民年金は、一定の保険料を納付することで、将来の高齢化に備えた年金を受け取ることができます。年金の支給額は、加入期間や納付額によって異なります。

また国民年金は、保険料を納めることで、老後の暮らしを支えるだけでなく、万が一事故や病気によって障害が残ってしまった場合には、「障害基礎年金」も受給できます。

国民年金保険料は?

令和6年度の国民年金保険料は、1カ月あたり16,980円です。1年前納したとしても200,140円かかります。それだけの保険料を学生が支払うのは難しいケースが多いでしょう。

ちなみに前納は1年だけでなく、6ヶ月や2年もできます。2年で前納するのが最も割引額が大きくなります。

国民年金保険料を納めるには、現金、クレジットカードのほか口座振替もあり、口座振替の方が割引額が大きいです。保険料は物価や賃金の変動に応じて、年度ごとに改定されます。24年度(23年4月~)から2年分の前納で、現金、クレジットカードの場合は15,290円の割引、口座振替の場合は16,590円の割引が適用されます。

吉田健司税理士事務所代表 吉田 健司(税理士・CFP)

収入のない学生が年金保険料を納めるには

自営業者のほか学生なども、自ら国民年金保険料を納める必要があります。収入のない(少ない)学生については、保険料を本人が支払う以外に、次のような納付が認められています。

「学生納付特例制度」を利用する

1つは、学生の間(就職するまでの間)は、国民年金保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」の利用です。猶予された分の保険料は、就職後に納める(追納)ことで、初めから納めていたのと同じ年金額を受け取ることができます。

ただし、追納が認められるのは猶予された年から10年以内です。また、3年目以降の追納には、加算額が発生します。

親が支払う

もう1つは、親など親族が代わって支払う方法です。日本年金機構から送られてくる「納付書(国民年金保険料納付案内書)」を使用して、親自身がコンビニや銀行窓口などで保険料を納付します。

口座振替やクレジットカード払いにすることもできますが、その場合は年金事務所などでの手続きが必要です。「国民年金保険料口座振替納付申出書」または「国民年金保険料クレジットカード納付申出書」に必要事項を記入して、年金事務所(口座振替の場合には金融機関でもOK)に提出します。

ただし、次に説明する社会保険料控除が受けられるのは、口座名義人またはクレジットカード名義人のみであることに、注意しましょう。例えば、親が保険料を払っていても、子ども名義の口座から引き落としされていたりすると、控除を受けることはできません。

「子どもと生計を一にしている」という条件がありますが、親が学費や生活費を支出していれば、離れて一人暮らししていても問題ありません。

贈与にはならないのか?

子どもにとってはありがたい援助ですが、贈与に当たらないかという心配があるかもしれません。もし保険料の支払いが贈与に当たれば、親が他に譲りたいものがあっても、年間110万円の基礎控除額を超えると贈与税が発生することになります。

この点に関しては、国民年金の保険料は、国税庁が「贈与税が課税されない財産」としている「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」に該当する、とされています。つまり、贈与にはなりません。逆に、親が代わって支払う保険料は、親の所得から控除されることで節税につながります。

親が保険料を負担すると節税になる理由

国民年金保険料は、社会保険料控除の対象

なぜ子どもの国民年金保険料の支払いが節税になるかというと、その全額が社会保険料控除として、親の所得から差し引けるからです。控除は、年末調整や確定申告の際に、日本年金機構から送られてくる「国民年金保険料控除証明書」を提出すれば、受けることができます。社会保険料控除が受けられるのは、国民年金保険料を支払った日が該当する年になります。

13ヶ月以上の前納により納付した保険料の社会保険料控除は、以下のいずれかの方法で申告できます。
1.全額を納付した年の所得から控除する方法
2.各年分の保険料に相当する額を、それぞれその年に所得から控除する方法
2の方法を選択した場合、納付した保険料額を各年に分割し、最終年度の控除額は、残りの金額となります。

吉田健司税理士事務所代表 吉田 健司(税理士・CFP)

節税額はどれくらい?

どのくらいの節税になるのか、一例を挙げてみましょう。

  • 保険料を支払った親の所得は400万円(所得税率:20%、住民税率:10%)
  • 2024年度の国民年金保険料は、月額16,980円×12ヵ月=年間20万3,760円

上の条件に当てはめて計算すると、節税額は
20万3,760円×30%(所得税+住民税)=61,128円
となります。

なお、国民年金の保険料は、所得などにかかわらず同一です。また、年度ごとに改定されます。

前納すれば割引になる

国民年金保険料には、まとめて支払うことで、割引が受けられる「前納」の制度があり、子どもの保険料を代わって支払う場合にも、使うことができます。期間は6カ月分、1年分、2年分から選ぶことが可能で、まとめる期間が長いほど割引が大きくなります。2年分の前納で、15,000円程度の割引が適用されます。

親が保険料を支払う場合に注意すべきこと

子どもが就職したら保険料が重複する

注意したいのは、今説明した「前納」で年金保険料を支払っていた子どもが就職した場合です。就職して厚生年金に加入すると、給与から国民年金の保険料も天引きされます。その際、前納した時期や期間によっては、親が納めていた分と重複して引かれる可能性があるのです。

保険料納付の重複があると、日本年金機構から還付請求書が届きます。届いた書類に必要事項を記入して返送するだけで、重複分は返ってきますが、この手続きを忘れないようにしましょう。時効があるため、還付請求できるのは2年です。

「収入がないから未納」は避けるべき

仮に20歳になったのに保険料を支払わず、最初に述べた「特例制度」の申請も行わないと、年金「未加入」(未納)の状態になります。

年金額は、支払った期間に応じて決まる仕組みになっています。基本的に、20歳から60歳までの40年間支払えば満額が支給されますが、期間が短いと、その分減額されてしまいます。また、未加入状態だと、学生時代に事故や病気などで障害を負った場合、障害基礎年金を受給することができない可能性があるのです。収入がないからといって、未納状態を放置するのは、避けましょう。

将来、障害になった場合に備え、国民年金への加入は大切です。学生の皆さんは、保険料の納付が難しい場合は、学生納付特例制度などを活用しましょう。保険料の未納が続くと、障害年金を受給できない可能性があることを覚えておいてください。

吉田健司税理士事務所代表 吉田 健司(税理士・CFP)

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知らない損する?子供の国民年金を親が支払うと節税になる?社会保険料控除について

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記事監修者 吉田税理士からのワンポイントアドバイス

子どもが、国民年金保険料の支払いが難しい場合には、親が代わって納めることができます。子どものために支払った保険料は、全額が所得税、住民税の控除の対象になるというメリットがあります。親に負担能力がある場合には、検討してみてはいかがでしょうか。

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吉田健司税理士事務所代表 吉田 健司(税理士・CFP)

東京国税局で主に法人税調査に27年間従事した後、独立。税理士としてクライアントに直接対応し、個々の状況に合わせて共に問題を考え、解決策を見出すことを大切にしています。また、金融機関に属さない独立系ファイナンシャル・プランナーとして、完全中立の立場でアドバイスを行っています。

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