株式市場の仕組み・種類とは?日本とアメリカの証券取引所の違いも

[取材/文責]田中あさみ

株式市場は「発行市場」と「流通市場」に分類され、日本の流通市場は主に東京・名古屋・札幌・福岡に証券取引所が存在します。アメリカでは国外の株式も取引が可能で、日本の株式も売買されています。
株式市場の仕組み・種類はどうなっているのでしょうか?日本・アメリカの株式市場の種類・仕組みを解説していきます。

日本の株式市場の種類・仕組みとは?

株式市場の種類と仕組み、国内の証券取引所

株式市場とは株式が発行・売買される市場です。
株式市場には企業・国・地方公共団体などが資金調達のために新たに株・債券を発行する「発行市場(プライマリーマーケット)」と既に発行された株式を売買する「流通市場(セカンダリーマーケット)」があります。

一般的にニュースなどで「株式市場」と言う場合は、「流通市場」を指します。

株式会社には、株式を証券取引所で売買できるように上場する企業と上場をしない企業があります。上場をするか否かは、企業が選択します。
上場企業は証券取引所で株式を売買することが可能です。
証券取引所は企業が発行する株式を証券取引所で売買できるように、審査し通過すると上場の資格が付与されます。
流通市場にはメインの市場である「本則市場(一般市場)」と、ベンチャー・新興企業などが上場する「新興市場」があります。
例えば東京証券取引所の場合、プライム市場は本則市場、グロース市場は新興市場です。
日本国内には、東京・名古屋・札幌・福岡に証券取引所が存在します。

中でも東京証券取引所は最も企業数が多く、2023年7月12日時点で3894社が上場しています。

東京証券取引所は2022年再編へ

東京証券取引所は2022年4月に市場区分を東証「第一部」「第二部」「マザーズ」とJASDAQ「スタンダード」「グロース」から「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つに再編しました。

 

 

旧市場区分は2013年に東京証券取引所と大阪証券取引所が株式市場を統合した際に、それぞれの市場構造を維持したものです。
しかし、投資者にとっての利便性が低く上場会社にとって持続的に企業価値を向上する動機付けができていない事から新市場区分に再編されました。

東京・名古屋・札幌・福岡、証券取引所の違いとは?

東京証券取引所

東京証券取引所は日本最大の証券取引所で「東証(とうしょう)」と呼ばれています。
2022年4月以降、「プライム」「スタンダード」「グロース」とプロ投資家向けの「TOKYO PROMarket」に再編されました。

プライム スタンダード グロース TOKYO PROMarket 合計
上場会社数 1,834 1,442 541 77 3,894
※2023年7月12日時点

 

プライム・スタンダード・グロースは上場にあたって審査の基準があります。
審査項目には株主数・流通株式・時価総額などがありますが、一部を抜粋して表にすると以下のとおりです。

項目
(上場時見込み)
プライム スタンダード グロース
株主数 800人以上 400人以上 150人以上
流通株式 1.流通株式数 2万単位以上
2.流通株式時価総額 100 億円以上
(原則として上場に係る公募等の価格等に、上場時において見込まれる流通株式数を乗じて得た額)
3.流通株式比率 35%以上
1.流通株式数 2,000単位以上
2.流通株式時価総額 10億円以上
(原則として上場に係る公募等の価格等に、上場時において見込まれる流通株式数を乗じて得た額)
3.流通株式比率 25%以上
1.流通株式数 1,000単位以上
2.流通株式時価総額 5億円以上
(原則として上場に係る公募等の価格等に、上場時において見込まれる流通株式数を乗じて得た額)
3.流通株式比率 25%以上
時価総額 250 億円以上
純資産の額 連結純資産の額が 50 億円以上
かつ、単体純資産の額が負でない
連結純資産の額が正である
利益の額又は売上高 次のAまたはBに適合する
A) 最近2年間の利益の額の総額が 25 億円以上であること
B) 最近1年間における売上高が 100 億円以上である場合で、かつ、 時価総額が 1,000 億円以上となる見込みのあること
最近1年間における利益の額が1億円以上である
事業継続年数 3年前から株式会社として継続的に事業活動をしている 3年前から株式会社として継続的に事業活動をしている 1年前から株式会社として継続的に事業活動をしている

 

他には企業の継続性及び収益性・企業内容やリスク情報の開示の適切性・企業経営の健全性などが審査の対象になります。

名古屋証券取引所

名古屋証券取引所は、名証(めいしょう)と呼ばれる名古屋市にある証券取引所です。
東京証券取引所と同様に2022年4月に再編され「プレミア市場」「メイン市場」「ネクスト市場」の3つがあります。

プレミア市場は優れた収益基盤・財務状態に基づく高い市場評価を有する企業が対象で東証の「プライム」と同様の立ち位置(本則市場)と言えるでしょう。
メイン市場は安定した経営基盤が確立され一定の市場評価がある企業、ネクスト市場は将来のステップアップを見据えた事業計画などの開示が行われている企業の株式です。
上場会社数は以下のとおりです。

プレミア市場 メイン市場 ネクスト市場 合計
上場会社数 177 83 17 277
※2023年7月14日時点

福岡証券取引所

福岡証券取引所(福証)は札証と同様に地域経済の発展を担う証券取引所です。

一定の実績がある企業を対象とする「本則市場」と、成長の可能性が見込まれる企業が上場できる「Q-Board」があります。
Q-Boardは、「Q-Board Guide Book」によると「九州周辺の地域経済の発展を目的として今後成長を見込む企業に対し資金調達の機会を提供し投資家にとっても魅力ある投資機会を提供する市場」と記されています。Q-Boardに上場した企業が本則市場の審査基準に適合すると、本則市場への上場が可能となります。

本則市場 Q-Board 合計
上場会社数 90 18 108
※2023年3月時点

アメリカの株式市場の種類・仕組みとは?

主な証券取引所はニューヨーク証券取引所とNASDAQ

アメリカの主な証券取引所にはニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダック(NASDAQ)があります。アメリカの株式時価総額は2023 年2月時点で42.8 兆ドルに上り、世界の株式時価総額100.8 兆ドルのうち42.4%を占めています。
世界の株式を取引できるように、アメリカ以外の国の企業が発行した株式を預託証券(ADR:American Depositary Receipts)として発行しています。

ニューヨーク証券取引所とは?

ニューヨーク証券取引所(NYSE)は世界最大の取引所で「コカコーラ」や「マクドナルド」「ウォルト・ディズニー」などの企業が上場しています。
NYSEに上場されている企業の銘柄の売買は、立会場だけではなく「サード・マーケット」と呼ばれる業者間市場も存在します。

アメリカの証券取引所は、日本と比べ上場にあたって企業のディスクロージャー(情報開示)制度と会計基準が厳格と言われています。
トヨタ自動車やソニーグループ、武田薬品工業など日本企業もADRとして10社上場しています。

NASDAQとは

NASDAQは新興企業向けの市場で、立会場が存在しない電子取引所です。
上場企業にはGAFAM (Google、Amazon、Facebook:現Meta、Apple、Microsoft)など成長性の高いIT企業が多いです。
Nasdaqに上場している日本企業は「メディロム」と「吉通貿易」の2社で、東証には上場していません。

まとめ

日本・アメリカの株式市場の種類や仕組みを解説しました。株式市場には発行市場と流通市場があり、流通市場はさらに本則市場(メインの市場)と新興市場に分類されます。
アメリカにはADRと呼ばれる預託証券の制度により、国外の株式を売買できる点が日本と異なります。この記事で株式市場の仕組み・種類について知り今後に活かしていきましょう。

大学在学中に2級FP技能士を取得、会社員を経て金融ライターとして独立。金融・投資・税金・各種制度・法律・不動産など難しいことを分かりやすく解説いたします。米国株・ETFなどを中心に資産運用中。CFP(R)の相続・事業承継に科目合格、現在も資格取得に向けて勉強中。

新着記事

人気記事ランキング

  • banner
  • banner